トピック

安全性・毒性

19件

ミルクシスル併用でMASHラットのレスメチロム曝露が上昇

  • MCD食誘発MASHラットで、肝選択的THR-β作動薬レスメチロムにミルクシスル(シリビン)を併用すると、レスメチロムの血漿中曝露が増加し、見かけの経口クリアランスが低下した。
  • ラット肝ミクロソームでは、抽出物によりレスメチロムの消失が大きく遅くなり、肝代謝の阻害が示唆された。
  • 併用により肝酵素、脂質、組織像は単独投与より大きく改善したが、曝露増加は相互作用の可能性を示す。
💡 ポイント

MCD食ラットはヒトのMASHの粗い代用にすぎず、ラット肝ミクロソームでの代謝低下も、ヒトのCYPやトランスポーターの状況をほとんど語らない。それでも肝選択的薬で曝露が上がるのは、まさに追いかけたい点だ。効果の上乗せは単に薬物量が増えただけなのか、安全域もその分狭まっていないか。ヒトでのPKを見るまで、利点と読むべきではない。

Metabolism-mediated herb-drug interaction between milk thistle and resmetirom in MCD diet-induced metabolic dysfunction-associated steatohepatitis rat model ↗

ジャコウネズミのモデルでイリノテカン誘発嘔吐の機序と有効な制吐薬併用を解明

  • スンクス(Suncus murinus)では、イリノテカンが24時間以内に用量依存的な嘔吐を誘発した一方、活性代謝物SN-38は誘発せず、呼吸にも影響はなかった。
  • 迷走神経切断は早期の嘔吐を抑え、イリノテカンは脳幹、視床下部、辺縁系でc-Fosを増加させ、パロノセトロンは脳幹の活性化のみを低下させた。
  • 単剤ではパロノセトロンが最も有効で、オランザピンにパロノセトロンとアプレピタントまたはデキサメタゾンを併用すると単剤より優れた効果を示した。
💡 ポイント

イリノテカンでは吐くのにSN-38では吐かないスンクスを見ると、本当に何が引き金なのかが気になる。腸管局所の曝露なのか、全身の代謝物ではなく迷走神経経由のシグナルなのか。併用データを信頼する前に、嘔吐と並行して曝露量を測りたい。しかもスンクスでのオランザピン上乗せ効果は、患者での鎮静や忍容性の余裕についてはまだほとんど何も語らない。

Investigation of the mechanisms and modulation of irinotecan‐induced emesis in Suncus murinus ↗

動きベクトルの深層学習で、幹細胞由来心筋の薬剤性収縮障害を検出

  • 収縮方向が一軸にそろうマイクロパターン上のhiPSC由来心筋細胞を、ラベルフリー動画で撮影し、拡張性のある収縮能アッセイとして用いる。
  • 拍動ごとに切り出したオプティカルフローの動きベクトルを、水平・垂直の速度成分を別々に処理する2分岐の畳み込みネットワークに入力する。
  • ドキソルビシン、トラスツズマブ、スニチニブの独立アッセイで、従来の運動学的分類器を上回り、特に低用量で優位だった。アブレーションにより両方向の成分が寄与することも示された。
💡 ポイント

hiPSC由来心筋はまだ未成熟で、分類器は教師ラベルの誤りをそのまま引き継ぐ。そのため、この判定がヒトの臨床心毒性とどこまで対応するかが核心の問いになる。作用機序の異なる3つの参照薬は出発点にすぎず、検証セットとは呼べない。低用量での感度は魅力的だが、遊離型血漿中濃度に合わせた曝露がなければ、安全域についてはほとんど語れない。

BeatVecNet classifies drug‐induced contractile phenotypes from beat‐gated motion vectors in micropatterned human induced pluripotent stem cell‐derived cardiomyocytes ↗

機械学習でPFASの肝ハザードを階層化、肝スフェロイドの遺伝子発現が裏付け

  • 高スループットの生理活性データで学習したXGBoost系QSARモデルが、PFASを肝臓関連ハザードの4段階に分類する。
  • 19種のPFASに曝露したヒト肝スフェロイドの公開トランスクリプトームでは、この階層ごとに応答パターンが異なっていた。
  • 脂質代謝の撹乱と細胞ストレスが特徴的で、FABP1、PLIN2、GDF15が曝露群を通じて応答した。
💡 ポイント

QSARモデルの階層は学習ラベルの弱点をそのまま引き継ぎ、高スループットのバイオアッセイは緩徐な肝障害をほとんど拾えない。加えてPFASは体内残留が長く、スフェロイドの曝露濃度が実際の蓄積とかけ離れている可能性があるため、実測の組織内曝露や血中半減期での検証が欠かせない。FABP1、PLIN2、GDF15は読み出しとして有望だが、ストレスマーカーは特異性が低いことで知られる。

Hazard Prioritization and Transcriptomic Characterization of PFASs Based on Machine Learning and Human Liver Spheroids ↗

第XI因子/XIa阻害、出血リスクの低い抗凝固療法として前進

  • 第XI因子とその活性型XIaはトロンビン産生を増幅し、病的血栓形成に寄与する一方、生理的止血への関与は小さいため、出血リスクの低い抗凝固薬の標的として注目されている。
  • 本レビューはFXI/XIaの構造、構造に基づく創薬、主な治療モダリティを整理し、さまざまな血栓症適応における臨床エビデンスを批判的に評価している。
  • 選択性の最適化、疾患による有効性の差、凝固以外のFXIの機能が課題であり、長期安全性や臨床での位置づけに影響する。
💡 ポイント

FXIの魅力は動物モデルよりヒト遺伝学(先天性欠損でも自然出血が少ない)に支えられており、そこは信頼できる。私が詰めたいのは曝露の上限だ。有効域が狭くトラフでの阻害が揺らぐなら、出血面の優位性は消える。FXa、トロンビン、カリクレインなどセリンプロテアーゼへの選択性が、安全域が本物かどうかを左右する。

Targeting coagulation factor XI/XIa for anticoagulation therapy: from mechanism to drug development ↗

PFOSがヒト膵臓で検出、インスリン分泌を撹乱

  • 臓器提供者の膵臓ではほぼ全例でPFOSが検出され、PFHxSやPFOAよりはるかに高頻度だった。マウスでもPFOSの膵臓への分布が確認された。
  • 培養細胞と膵島では、高用量PFOSの長期曝露でインスリン分泌が抑制され、急性曝露ではマウス膵島と一部のヒト膵島で分泌が増えた。
  • 急性の過分泌はGLP-1受容体拮抗薬で部分的に抑えられ、マウスではグルコース併用時のみインスリンが上昇した。モデル選択が結果を左右する。
💡 ポイント

二相性のデータは積み上げにくい。急性のPFOSはインスリンを増やし、長期の高用量では抑制し、マウスではグルコースの併用も必要だった。これらの用量に対応する膵臓内濃度の実測がなく、in vitroの曝露がヒトに関連する水準かは未解決だ。GLP-1R拮抗薬による部分的な抑制は追う価値のある手がかりだが、機序の一部にとどまるだろう。

PFOS Is Detected in Human Pancreas and Dysregulates Glucose-Stimulated Insulin Secretion across Model Systems ↗

BPA・DBP・PFOA混合物、ERαを介して相加的に作用

  • バイオモニタリングに基づく比率のBPA・DBP・PFOA混合物を、環境エストロゲンの複合曝露モデルとして検討した。
  • 各物質と混合物はMCF-7細胞の増殖を促進し、混合物の用量反応は濃度相加とレスポンス相加の両モデルの許容範囲内で、やや濃度相加寄りだった。
  • ER転写活性およびセルフリーのバイオセンサー測定でもERαアゴニスト活性が確認され、濃度相加によりよく適合したことから、ERα活性化が相加効果の中心と示唆される。
💡 ポイント

MCF-7増殖で相加性が出たのは、ERαアゴニスト3種なら想定どおりで、驚きというより確認に近い。ただPFOAとDBPはER作用が弱いか間接的で、MCF-7はエストロゲン様応答を過大に拾いやすい。遊離の体内濃度の実測や子宮肥大試験などのin vivoデータがない現状では、バイオモニタリング水準の曝露が受容体に効く範囲に届くかは未解決のままだ。

Bisphenol A/Dibutyl Phthalate/Perfluorooctanoic Acid Ternary Mixture Exerted Additive Estrogenic Effects through ERα Activation ↗

GVHD予防薬の選択が移植後のT細胞再構築を左右する

  • 第3相移植試験の患者を対象に、移植後シクロホスファミドとタクロリムス/メトトレキサートの予防レジメンがT細胞の回復に与える影響を、経時的なT細胞受容体シーケンスで比較した。
  • シクロホスファミドはT細胞を広く除去するため、回復は少数の創始細胞から再開し、レパートリーが長期にわたり狭いままだった。
  • 多様性の低さは慢性GVHDの少なさと関連したが、早期に病原体特異的クローンも失われ、重症感染のリスク上昇と結びついていた。
💡 ポイント

慢性GVHDを減らしているように見える除去が、初期の病原体カバーまで削っている。レパートリーの縮小は、成果というより取引に近い。これはヒトコホートの読み出しで、示せるのは関連であって機序ではない。予防レジメンの併用を設計するなら、狙いは同種反応性クローンだけを刈り込み防御クローンを残すことだが、その切り分けが可能かどうかは、この結果からは分からない。

Graft-versus-host disease prophylaxis shapes T cell biology and immune reconstitution after hematopoietic cell transplant ↗

Δ8-THCの活性代謝物11-OH体の生成はCYP2C9が主導

  • ヒト肝ミクロソームでΔ8-THCは複数のモノ水酸化体に代謝され、精神活性をもつ11-水酸化体が主だった。酵素・阻害剤・ドナー相関の解析から、その生成は主にCYP2C9が担うと示された。
  • 環水酸化体は主にCYP3Aで生成し、側鎖の酸化はCYP2D6、CYP1A2、CYP3A4の活性と関連した。
  • C11水酸化はΔ9-THCよりΔ8-THCで重要だが、CYP2C9の触媒効率はΔ8-THCのほうが低かった。機能低下型の遺伝子型では11-水酸化体の生成が大きく減り、代謝はCYP3A4とCYP2C19に移ると予測された。
💡 ポイント

どの酵素が精神活性代謝物を作るかはミクロソームで答えが出るが、ヒト個人で曝露がどう配分されるかまでは分からない。11-水酸化体の生体内曝露は見えず、遺伝子型の影響も観察ではなく予測にとどまる。リスク因子と呼ぶには、CYP2C9低代謝者での臨床PKと、2C9阻害薬との相互作用データが先に必要だ。

Characterization of Cytochrome P450-Mediated Metabolism of Δ8-tetrahydrocannabinol in vitro ↗

PFOSはドナー膵臓のほぼすべてで検出され、モデルに応じてインスリン分泌を変化させる

  • ヒト臓器ドナーの血漿と膵臓で3種の旧来型ペルフルオロアルキル酸を定量した結果、PFOSはほぼすべての膵臓で検出され、PFOAが検出されることはまれだった。
  • マウスモデルでも、PFOSはPFOAより高い濃度で膵臓に分布した。
  • ラットINS-1細胞、マウス膵島、ヒト膵島では、高用量PFOSの長期曝露は概ねインスリン分泌を抑制し、急性曝露は分泌を高めた。この亢進はGLP-1受容体拮抗薬により部分的に緩和された。
  • マウスでは、急性PFOS曝露は糖負荷と同時の場合にのみ血漿インスリンを上昇させた。
💡 ポイント

ドナー膵臓で実測された濃度は、INS-1細胞や膵島で分泌を抑制した高用量と同程度なのか。このずれが、in vitroの結果をどこまでヒトに外挿できるかを左右する。急性の亢進が長期では抑制に転じる点は、時間依存的で二相性の応答を示唆する。また、マウスで糖負荷時にのみ効果が現れたことは、明白なβ細胞毒性ではなく、状況依存的な表現型であることを思わせる。

PFOS Is Detected in Human Pancreas and Dysregulates Glucose-Stimulated Insulin Secretion across Model Systems ↗

マクロファージ由来オキシステロール25-HCがスタチン関連腎障害を増強することを示すプレプリント

  • 活性化マクロファージが産生するオキシステロールである25-ヒドロキシコレステロールが、腎細胞のスタチン毒性への感受性を高めるかを検討している。
  • アトルバスタチンとフルバスタチンは25-HCとの併用で近位尿細管細胞を死に至らせ、スタチン投与マウスでは少量の炎症刺激後に腎障害が生じた。
  • タンパク質プレニル化の低下がオートファゴソーム・リソソーム機能を乱していた。メバロン酸補充やマクロファージ除去で障害は軽減し、腎オルガノイドではKIM-1が上昇した。
💡 ポイント

スタチンと炎症性オキシステロールの併用は毒性の組み合わせとして筋が通る。メバロン酸経路の阻害でプレニル化が抑えられ、メバロン酸で救済できる点も標的作用に基づく機序と合致する。ただし、in vitroやマウスでのスタチン曝露は遊離型の血漿中濃度を上回ることが多く、臨床的な用量妥当性は未検証であり、本件は査読前のプレプリントでもある。25-HC、炎症、腎アウトカムを結ぶヒトの関連データが、ヒトへの橋渡しにおける隔たりを埋めるために必要だ。

Macrophage-Derived 25-Hydroxycholesterol Drives Statin-Associated Acute Kidney Injury ↗

ピリダジノインドールがNLRP3阻害剤のフェノール部位を代替

  • 従来のフェノール-ピリダジン系NLRP3阻害剤のフェノール基を置き換えるため、インドール縮環ピリダジンが開発された。
  • クライオ電子顕微鏡とモデリングにより、インドールが結合部位のAla228との重要な相互作用を保つことが示唆された。
  • 2つのリード化合物は低ナノモルの活性を示し、溶解性と膜透過性も良好で、マウスで薬物動態が評価された。
  • hERG阻害のため開発は中止されたが、in vivoツール化合物としては有用であり、反応性代謝物の解析も報告されている。
💡 ポイント

フェノールをインドール縮環ピリダジンに替えると、Ala228との接触を保ったままフェノール由来のリスクを除ける。活性も溶解性も良好に見える。注意すべきは、これほど強いシリーズがhERGで止まった点で、平面的で脂溶性の高い縮環が原因ではないかと疑う。そのまま真似るテンプレートではなく、in vivoツールとして使うのが妥当だろう。

Pyridazino-Indoles as Phenol Bioisosteres for Potent Inhibition of NLRP3 ↗

改変ポリエンM16はエルゴステロールとコレステロールを識別し、マウスで宿主細胞や腎臓への毒性なく抗真菌活性を示した

  • 5 + 1ポリエン骨格を持つマンディマイシンM16は、アムホテリシンBが真菌と哺乳類のステロールを十分に識別できない問題を克服するよう設計された。
  • エルゴステロールに特有の共役ジエンを認識し、コレステロールとの結合は検出されず、WHO優先病原真菌の多くに対して速やかな殺真菌作用を示す。
  • 試験した用量では、in vitroでもマウスでも溶血、細胞毒性、腎毒性は検出されなかった。
  • 播種性感染モデルでは、同用量のリポソーム型アムホテリシンBを上回り、真菌量を大きく減らして全例が生存した。
💡 ポイント

ポリエンで腎毒性が検出されないというのは出来すぎに聞こえる。まず知りたいのは投与期間だ。短期のマウス投与では、患者で数週間かけて蓄積し、アムホテリシンBの用量を制限する尿細管障害は、まず再現されない。M16を次に進めるなら、曝露量データを伴う反復投与毒性試験と実用的な製剤が要る。コレステロールを避ける機序は説得力があるが、安全域は未証明である。

A 5 + 1 polyene scaffold that selectively recognizes ergosterol’s conjugated diene uncouples antifungal potency from host toxicity ↗

誘導適合ドッキングとFEPで、CYP・hERG・PXRへの結合を設計で避ける

  • CYP3A4、CYP2D6、hERG、PXRなどのアンチターゲットは大きく柔軟な結合部位をもち、構造ベース設計が難しい。
  • 誘導適合ドッキングと自由エネルギー摂動(FEP)を組み合わせ、同族列で共通の結合モードを課すことで受容体のコンフォメーションを効率よく探索する。
  • 公開の後ろ向きデータセットで検証し、進行中の創薬プログラムにも前向きに適用した。
💡 ポイント

多くのチームはhERGやCYPを事後のアッセイ課題として扱うが、こうした promiscuous なポケットでFEPが使えれば、リスク回避を設計サイクルに組み込める。共通結合モードの制約は巧みだが、同族列にしか使えないという限界でもある。調整に使った系列を超えて通用するかは、新規骨格での前向きな的中率が示すだろう。

Accelerating Lead Optimization Away from Anti-Targets: Navigating the Structural Complexity of Promiscuous ADMET Proteins ↗

効力を保ったままhERGを下げたDCN1–UBE2M相互作用阻害剤

  • 先行ツール化合物NAcM-OPTはDCN1–UBE2M相互作用を阻害し、経口投与でき、異種移植腫瘍の増殖も抑えたが、hERGへの有意な親和性が開発のネックだった。
  • 著者らは骨格を系統的に修飾し、DCN1への結合を保ちつつhERG結合を低減させた。
  • 得られた化合物110は、生化学的・細胞での効力は親化合物と同等で、物性が改善し、hERGに対する選択性も向上した。
💡 ポイント

心毒性で行き詰まった検証済みPPIケモタイプを、SARだけで立て直した地味だが重要な続編だ。塩基性で脂溶性の高いPPI阻害剤を抱えているなら、ファーマコフォアを手放す前に、hERGは構造修飾で外せるかどうかを自分のシリーズで確かめる価値がある。

Reducing off-Target hERG Activity of First-Generation DCN1-UBE2M Interaction Inhibitors: Design, Synthesis, and Structure−Activity Relationships ↗

セラミド模倣スルホンアミドKPB82、選択的ACER2阻害剤としてbioRxivプレプリントで報告

  • ACER2はセラミドをスフィンゴシンと脂肪酸に加水分解する酵素で、これまで薬理学的ツールは存在しなかった。
  • ドデカンスルホンアミドにセラミド様のヒドロキシフェニルプロピル基を持つKPB82は、ACER2を強力に阻害し、酸性・中性セラミダーゼへの作用は小さく、ACER1・ACER3は阻害しなかった。
  • 速度論は競合阻害を示し、AlphaFold3モデルへのドッキングでZn2+配位ヒスチジン近傍の基質ポケットに結合すると予測された。
  • タイトルによれば、腫瘍細胞と初代細胞をドキソルビシンの細胞毒性から保護する。
💡 ポイント

ACER2にはこれまでツール化合物がなく、競合的でACER1/ACER3を避けるヒットは貴重だ。ドデカンスルホンアミドにヒドロキシフェニルプロピル基という構造はセラミド模倣そのものだが、Zn2+ヒスチジン近傍のドッキング姿勢はAlphaFold3由来の仮説にすぎない。ドキソルビシン保護を信じる前に、IC50値、SAR系列、細胞内でのターゲット結合を確認したい。

KPB82 potently and selectively inhibits ACER2 and protects tumor and primary cells from doxorubicin-induced cytotoxicity ↗

入口チャネル標的設計でNNRTIリードJK-4bの細胞毒性を低減

  • JK-4bは野生型および臨床HIV-1変異株に強力な活性を示すNNRTIだが、高い細胞毒性のため開発が中止されており、本研究ではこれをリードとして新規誘導体を設計した。
  • NNRTIの入口チャネルを狙う構造ベース設計により、細胞毒性が低く選択性の高いシリーズが得られた。
  • 主要化合物9nは、二重変異株を含む代表的な耐性変異株に対して強い活性を保ち、エトラビリンと同程度であった。
  • 9nはチトクロームP450阻害が小さく、ヒト肝ミクロソームでの代謝安定性も良好で、さらなる開発が期待される。
💡 ポイント

お蔵入りしたリードの救出は、ゼロから始めるより面白い。JK-4bには活性も耐性株カバーもすでにあったので、問われたのは入口チャネルとの相互作用で細胞毒性を切り離せるかどうかだ。9nのプロファイルが再現するなら、毒性はファーマコフォアに固有ではなく骨格の調整で動かせたことになる。二重変異株でエトラビリンに並び、P450阻害も微小、ミクロソーム安定性も良好という点は、さらに合成を進める前に確認したかった材料そのものだ。

Targeting the HIV-1 NNRTI Entrance Channel: Structure-Guided Optimization for Enhanced Safety and Selectivity ↗

鉄(II)活性化型コンジュゲートによるHDAC阻害剤パノビノスタットの腫瘍選択的放出

  • ヒドロキサム酸系HDAC阻害剤は、メタロ酵素に対する選択性が低く、イソシアネート代謝物に起因する遺伝毒性のリスクも抱えている。
  • 本研究では、既報の鉄(II)活性化型コンジュゲートプラットフォームを汎HDAC阻害剤パノビノスタットに適用し、腫瘍選択的なペイロード放出を目指した。
  • 多発性骨髄腫の細胞株モデルにおいて、コンジュゲート形態でHDAC活性のケージ化に成功し、バイオイソスター対照化合物では遊離ヒドロキサム酸体に比べ遺伝毒性が軽減された。
  • その後の解析で、カルボキシルエステラーゼCES1がパノビノスタット・コンジュゲートの予期せぬタンパク質分解的不安定性(in vitroおよびin vivo)の原因であることが同定された。
  • この知見は、ヒドロキサム酸に伴う毒性・変異原性を腫瘍選択的活性化によって軽減するという最終目標に向けた、今後の課題として位置づけられている。
💡 ポイント

パノビノスタットのヒドロキサム酸をFe(II)トリガーの陰に隠すのは、このケモタイプを悩ませてきたイソシアネート由来の遺伝毒性リスクに対する筋の通った対処法だ。バイオアイソスター対照体がフリー体より遺伝毒性を実際に下げているというデータは、HDAC阻害剤を「より安全」と謳う前に欲しかったものだ。 だが私が食いついたのはCES1の話——コンジュゲートがin vitroでもin vivoでもエステラーゼに分解されるというのは、きれいなMM細胞アッセイだけでは絶対に見えてこない破綻モードだ。これは脚注ではなく、次のイテレーションの設計課題そのもの——CES1認識モチーフを回避する分子設計にするか、直交的なマスキングを追加するかだ。 IND対応パッケージで発覚するより、今この段階で報告されている方がずっとありがたい。この一つのヒドロキサム酸に限らず、Fe(II)活性化ペイロードを作る誰にとっても有用な教訓的データだと思う。

Toward Tumor-Conditional Release of Histone Deacetylase Inhibitors from Nongenotoxic Drug Conjugates ↗

マルチモーダルAIフレームワーク、薬剤耐性菌を標的に毒性スクリーニングも同時実施

  • 抗菌薬耐性(AMR)により黄色ブドウ球菌(SA)や淋菌(NG)などの優先病原体に対する治療選択肢が狭まっており、新たな計算創薬ツールへの関心が高まっている。
  • MAPViSは、分子グラフ、フィンガープリント、記述子/3D幾何学的特徴をゲート付き融合機構で統合するマルチモーダル深層学習フレームワークであり、約1000万分子を用いた階層的疑似ラベル分類とマスク付きグラフ対照学習により事前学習される。
  • ファインチューニング後、SAおよびNGに対する抗菌活性と、3種のヒト細胞株(HepG2、HSkMC、IMR-90)における細胞毒性リスクを同時に予測する。
  • ベンチマークおよび外部検証データにおいて、MAPViSはSAタスクで強い初期エンリッチメント性能を示し、上位10候補すべてが実験的に活性であることが確認された一方、NGへの汎化性能はより控えめであった。
  • 著者らは、MAPViSを抗菌薬バーチャルスクリーニングを支援する、活性と毒性を統合的にモデル化するスケーラブルなツールと位置付けている。
💡 ポイント

リガンドベースで構造ベースではない――標的の立体構造情報はループに入っていないので、約1000万分子の事前学習ケモタイプを超えて未知の標的クラスに踏み込んだ途端、適用範囲が怪しくなると思う。活性と細胞毒性を同時に予測する仕組みは本当の差別化点だ。HepG2/HSkMC/IMR-90のフラグを同じランキングに組み込むことで、普段自分で回している毒性カウンタースクリーンの一手間が省ける――これは単なる便利機能ではなく、実際の時短だ。ただS. aureus(上位10件すべて実験で活性確認)とN. gonorrhoeae(「中程度」)の落差が本音を語っている。性能は病原体ごとの学習データ密度に引っ張られているだけで、本物の抗菌ケモタイプの直感ではない。未知の標的でこのランキングを信用する前に、病原体ごとのキャリブレーション曲線と確認済みの真陰性を見せてほしい。トップ10のヒット率だけでは足りない。安価なpre-HTSトリアージフィルタとしては使える。だが構造ベース設計や本物のカウンタースクリーンの代わりにはならない。

A Task-Adaptive Multimodal Pretrained Framework for Antibiotic Virtual Screening with Joint Activity and Cytotoxicity Prediction ↗