がん
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ピロロキノリン系の抗微小管薬、パクリタキセル・ダウノルビシン耐性細胞でも活性を維持
- 1H-ピロロ[3,2-c]キノリンのライブラリを合成してSARを整理し、ナノモルレベルの低い濃度で増殖を抑え、正常線維芽細胞に対する選択性が非常に高い化合物を得た。
- 最良の誘導体は、ダウノルビシン耐性株やパクリタキセル耐性株でも活性を保ち、排出比も低く、交差耐性が限定的であることを示唆した。
- リード化合物は吸収が速く、半減期は中程度で、脳移行性は限定的だったが、ゼブラフィッシュ胚への毒性は治療域の狭さを示した。
P-gp排出を回避する微小管作動薬はいつでも関心を集めるし、排出比の低さと耐性株での活性維持は最初のフィルターとして妥当だ。ゼブラフィッシュの結果は正直な落とし穴で、強力な抗有糸分裂薬は安全域が狭いことが多く、培養細胞で線維芽細胞に選択的でも安全性の答えにはならない。次は結合部位と、この骨格をどこまで治療域の広い方向に調整できるかを見たい。
BCL9/β-カテニン阻害の低分子をグリオブラストーマ細胞で検証
- β-カテニンの共活性化因子BCL9には低分子阻害剤がなく、グリオブラストーマでの治療的価値は薬理学的に検証されていなかった。
- 新規阻害剤ZD37-28Rはドッキングでβ-カテニンへの結合が予測され、in vitroでBCL9/β-カテニン相互作用を阻害した。
- β-カテニン依存的な転写を抑え、U87-MGとU251のグリオブラストーマ細胞の増殖と遊走を低下させた。
Wnt/β-カテニンは低分子創薬の墓場と言われてきた。β-カテニン全体を狙うより、BCL9選択的なPPI阻害のほうが現実的な切り口だ。残る課題はPPI創薬で定番のもので、ドッキングではなく直接的な物理化学的結合の証拠、他のβ-カテニン結合因子への選択性、グリオーマに必要な脳内曝露である。現時点ではリードではなく、標的バリデーションの仕事として読むべきだ。
キノーム全体で高選択的かつ経口投与可能なマクロ環CDK7阻害剤
- 17員環マクロ環のピラゾロトリアジン骨格を構造に基づいて最適化し、強力なCDK7阻害剤を得た。
- 400種超のキナーゼパネルで有意なオフターゲット活性はなく、既存CDK7阻害剤の選択性の低さを克服している。
- 細胞では細胞周期停止と転写抑制、c-Myc低下を示し、特にトリプルネガティブ乳がん細胞で顕著だった。経口バイオアベイラビリティも良好で、薬物動態は線形だった。
CDK7で400種超のキナーゼにわたりクリーンな結果が出るのは珍しい。この分野の共有結合阻害剤はTHZ型の弾頭に頼ってきたからだ。非共有結合のマクロ環で経口曝露も取れているなら、転写依存性の適応症で実際に手に取りたいプロファイルである。残る問いはオンターゲット毒性で、キナーゼ間の選択性だけではCDK7の正常な転写での役割に起因する毒性は避けられない。
DNAベースPROTACがTKI耐性肺がんモデルでCENPBを分解
- セントロメアの配列特異的DNA結合タンパク質CENPBは悪性度の高いがんで過剰発現するが、直接の阻害剤はない。
- CENPB OligoTACは、CENPB結合性オリゴデオキシヌクレオチドとE3リガーゼリガンドを連結した分子で、CENPBのユビキチン化とプロテアソーム分解、セントロメア破壊、アポトーシスを誘導する。
- 第1〜3世代のTKIに耐性のNSCLCモデルで有効で、正常細胞への毒性は小さく、血清中安定性も良好、in vivoでPKと忍容性も良好だった。
タンパク質自身のDNA認識配列をそのままウォーヘッドにするので、低分子が入るポケットが要らない。転写因子のような標的にとって魅力的なアプローチだ。気になるのはマウス以外での送達、オリゴ製造コスト、そしてCENPBはあらゆる細胞に発現するため、腫瘍選択性が本当に保たれるかという点である。
Centromere-Targeting Chimeras for Combating Cancer Drug Resistance ↗
総説:構造ガイド設計はいかにFGFR3選択的阻害剤を実現したか
- 第二世代のpan-FGFR阻害剤はコンセプトを実証したが、FGFR1・2・4の阻害に伴う毒性が制約となっていた。
- ファミリー内の構造相同性は高いにもかかわらず、構造ガイドの取り組みにより、臨床評価に入った初のFGFR3選択的阻害剤が生まれた。
- 本Perspectiveは、生物学的根拠、選択性を生む設計戦略、膀胱がんや軟骨無形成症など新たな適応を扱う。
高度に保存されたキナーゼファミリー内でのアイソフォーム選択性は、構造ベース設計の到達点を測る好例で、FGFR3には臨床段階の答えが出てきた。注目は軟骨無形成症だ。慢性かつ小児に近い適応では忍容性のハードルが腫瘍領域よりずっと高く、選択性の価値がまさに効いてくる。
サルパリブのカルボキサミドを置換し、経口・脳移行性のPARP1選択的阻害薬を創出
- 脳腫瘍を狙い、サルパリブのカルボキサミドを各種複素環に置き換え、血液毒性を抑えるためPARP2よりPARP1を選択的に阻害する化合物を探索した。
- 通常のMDR1-MDCKではなくCaco-2排出を選別指標に用い、脳内の非結合型曝露が良好な化合物を選んだ。
- 選ばれた化合物は経口バイオアベイラビリティを示し、低用量の異種移植モデルで腫瘍退縮を示した。臨床用量も低く見積もられている。
一次カルボキサミドの置換は大胆だ。この基はニコチンアミドポケットのアンカーなので、複素環で結合が保たれたのは見どころになる。もっと使えるのは選別法で、Caco-2排出のほうが脳内非結合型曝露をよく反映するなら、他のCNS創薬でも良い化合物を落としているかもしれない。
アルブミン搭載Fe(III)錯体が三陰性乳がんでフェロトーシスと免疫活性化を誘導
- Fe(III)化合物群を最適化して得たFe4はTNBC細胞に強い毒性を示し、ヒト血清アルブミンのナノ粒子(HSA-Fe4)に製剤化された。
- 構造解析により、Fe4はHSAのIBサブドメインに結合し、His-146が鉄中心に配位することが示された。
- in vivoでFe4とHSA-Fe4は、フェントン型の化学動力学療法、フェロトーシス、免疫活性化を通じて腫瘍の増殖と転移を抑えた。
アルブミン結合部位を配位ヒスチジンまで特定している点が、単なるナノ粒子論文との違いで、配位子SARの足がかりになる。一方、レドックス活性な鉄がフェロトーシス、フェントン反応、免疫を同時に動かすため要因の切り分けは難しい。効果を評価する前に、正常組織への選択性を確認したい。
欧州当局、Revolution MedicinesのRasonqueを膵がん向けに承認勧告
- STAT+によれば、FDA承認に続き、欧州の規制当局がRevolution MedicinesのRasonque(ダラキソンラシブ)の膵がんでの承認を勧告した。
- この勧告により、RAS(ON)阻害薬は二つ目の主要市場へ近づく。
- この要約は記事の導入文に基づく。別途の検索ではEUの意見を確認できなかった。
確認されれば、致死性の高いがんで明確な生存利益を示す経口RAS(ON)阻害薬が、米国承認後に素早く欧州へ進む好例になる。アナリストの関心は、価格・償還、そして二次治療の膵がんを超えた適応拡大に移る。同じがん種でKRASを追う他社にとっては、三者複合体アプローチの裏づけにもなる。
STAT+: RevMed's pancreatic cancer drug nears European approval ↗
アダマンタンキャップのインドール系ヒドロキサム酸YP200、HDAC11選択性を肺がんPDXモデルで実証
- 既報リードPB94を出発点に、インドール系ヒドロキサム酸のコア・リンカー・キャップをHDAC11向けに多面的に最適化した。
- 最良化合物YP200は、二級アミンリンカーとアダマンタン表面認識キャップを併せ持つ。
- HDAC11に対し高活性で他のHDACアイソフォームへの選択性も高く、患者由来NSCLC異種移植モデルで腫瘍増殖を抑えた。
ヒドロキサム酸はアイソフォーム間で綺麗に分かれにくく、選択性の主役が嵩高いアダマンタンキャップだという点が気になる。HDAC11の狭いチャネルは、亜鉛結合基よりキャップのサイズを重視するのかもしれない。HDAC11プローブの妥当性をめぐる議論も最近あるので、動態込みのアイソフォームパネルと細胞内標的結合の確認がほしい。
MerckとModerna、mRNAがんワクチンの初期成功後も「探るべきことは多い」
- STAT SummitでModernaのStephen HogeとMerckのDean Liが、Keytrudaと個別化mRNAがんワクチンの併用戦略を語った。
- 両者とも、初期の良好な結果は出発点にすぎず、解明すべき点が多いと位置づけた。
- この要約は記事の導入文に基づくもので、全文は未確認。
個別化ワクチンとKeytrudaの併用は、PD-1の独占期間が終わりに近づく中でMerckの収益基盤を守る一手で、科学以外の戦略的動機がある。両幹部が次の一手に慎重なのも示唆的で、課題は対象がん種、投与設定、製造規模だろう。他のネオアンチゲン手法の競合にとっては、超えるべき基準になる。
Merck and Moderna have 'lot of exploring to do' after initial cancer vaccine success ↗
分子グルーRPT04402、高悪性度子宮がんでPP2Aトリマー形成を回復
- 高悪性度子宮がんでPP2A AαB56αCヘテロ三量体の形成を回復させる分子グルーRPT04402を報告した論文。
- これらの腫瘍に多いPPP2R1Aスキャフォールド変異はホロ酵素の組み立てを損なっており、グルーはそれを救済する設計。
- 企業側の発表ではPP2A変異モデルでの腫瘍退縮とSpringWorksへのライセンスが伝えられている。この要約はタイトルと二次情報に基づき、全文は未確認。
ホスファターゼは創薬が難しいことで有名だが、活性部位の阻害ではなく特定のヘテロ三量体を組み直すグルーは賢い迂回路だ。変異が患者層と機序の両方を規定する点もきれいに噛み合う。気になるのは多数あるPP2A Bサブユニット複合体の中での選択性で、誤った複合体の活性化は忍容性の明らかな懸念になる。
Verastem、経口KRAS G12D阻害薬の膵がん初期データで有望な結果を報告
- Verastemは、転移性膵がんなどの進行固形がん200人超を対象に検討中のKRAS G12D阻害薬の初期結果を発表した。
- 他の報道では、膵がん・大腸がん・肺がんにわたる抗腫瘍活性と管理可能な安全性が伝えられている。
- 本要約はSTATの有料記事の公開冒頭部分と二次報道に基づくため、詳細は限られる。
膵がんのKRAS G12Dは、G12Cに続く最大の未開拓領域で、肝安全性に問題のない初期の活性はまさに業界が待っていた材料だ。競争上の焦点は、大手を含む他のG12Dプログラムに対する持続性にある。登録を見据えた第2相試験とファストトラック指定で道筋は描けているが、単群の初期データは良く見えがちだ。
STAT+: Verastem’s KRAS inhibitor shows promise in pancreatic cancer ↗
Gilead、Virのデュアルマスク型T細胞エンゲージャー3本を最大約19億ドルで導入
- Virは、デュアルマスクのPRO-XTENプラットフォームで固形腫瘍抗原を狙う3つのT細胞エンゲージャーを探索・設計・最適化し、Gileadは候補指定の独占的権利を持ち、その後の開発と商業化を担う。
- Virは契約一時金9,000万ドル(現金6,500万ドルと2,500万ドルの株式出資)と、近い将来の前臨床マイルストン4,500万ドルを受け取る。
- さらに開発・薬事・販売のマイルストンで最大17.4億ドルと段階的ロイヤルティが見込まれる。
GileadはMerus、Ouroに続き、短期間でT細胞エンゲージャー関連の3件目となる。固形腫瘍向けのマスク型・条件付き活性化TCEにはっきり軸足を置いている。Virにとっては今年2件目のプラットフォーム契約で、希薄化を伴わない資金により自社パイプラインを進められる。株式出資のプレミアムはGileadの本気度を示すが、前臨床のリスクは大きい。
Vir CEO sees ‘opportunity to do more deals’ after striking $1.9B Gilead pact for dual-masked TCEs ↗
GTA182:MTAP欠失腫瘍向けの脳移行性MTA協調型PRMT5阻害薬
- 構造ベース設計と多パラメータ最適化により、MTAP欠失細胞を野生型より強く選択的に抑える三環性アミドGTA182が得られた。
- 低い排出と調整された物性により、有効域に入る非結合型脳内濃度が確保された。
- 経口投与でMTAP欠失異種移植モデルと同所性膠芽腫モデルで腫瘍退縮を示し、第I相でも忍容性は良好で頭蓋内腫瘍の縮小が報告された。
MTA協調型PRMT5阻害薬は競合が多く、差別化の決め手は脳内曝露だ。膠芽腫ではMTAP欠失が多いのに、多くの競合薬は腫瘍に届かない。創薬化学の論文に臨床データまで載るのも珍しい。次に見たいのは、このクラス共通の弱点である血液毒性と、頭蓋内での効果がどこまで非結合型濃度で説明できるかだ。
HTS由来の共有結合性阻害薬が活性型GTP結合KRAS G12Cを標的に
- 既存のKRAS G12C薬は主に不活性なGDP型を捕捉し、耐性も報告されている。本シリーズは活性型のGTP結合状態を狙う。
- HTSで得たケトインドリジン骨格とアニリン由来アクリルアミドが、switch-IIポケットのCys12に共有結合。結晶構造では、ワーヘッドがGTPアナログのγリン酸と相互作用していた。
- 最適化で得た化合物17は前臨床動物種で経口吸収性を示し、KRAS–cRAF結合とERKシグナルの阻害を持続させ、膵臓がん異種移植モデルで完全退縮を示した。
γリン酸を使ってワーヘッドを位置決めする発想が巧みで、GTP型への選択性がポケットだけでなくヌクレオチド自体に由来する。比べたいのはRAS(ON)三者複合体阻害薬で、あちらはシクロフィリンAを要するが本系は不要だ。アクリルアミドの反応性とプロテオーム全体でのシステイン選択性も、GDP型結合薬以上に重要になる。
L2ループに届くHDAC6阻害薬を共結晶構造で設計、肺がん細胞でオートファジーを誘導
- 先行化合物とゼブラフィッシュHDAC6触媒ドメインの結晶構造をもとに、第2世代のHDAC6阻害薬を設計した。
- 2つのリード化合物の共結晶構造でL2ループのS531との相互作用を確認。細胞ではヒストンのアセチル化に明確な変化なく、アセチル化チューブリンが増加した。
- 1化合物はオートファジー経路の活性化を介してA549細胞の2D・3D培養での生存率を低下させ、相分離にも影響した。
アイソフォーム選択性を狙うならL2ループが本命だ。CD2ポケットは保存されているがループは違う。ヒストンが動かずアセチル化チューブリンだけ上がるのは、選択性を信じる前に見たい読み出しだ。ただオートファジーの話に乗る前に、HDAC全体のパネルとPKは確認したい。
ミレパチン由来ハイブリッドがチューブリンとHDAC8を同時阻害、卵巣がんモデルで効果
- 天然物ミレパチンにHDAC阻害薬の主要ファーマコフォアを融合し、チューブリン/HDACデュアル阻害薬を構築した。
- リード化合物6は12種のがん細胞株に広く抗増殖活性を示し、チューブリン重合とHDAC8を阻害。HDAC1、4、6に対してHDAC8選択的だった。
- 卵巣がん異種移植モデルで、良好な安全性とともに腫瘍増殖を抑制した。
HDAC8は定番のHDAC6/クラスIよりも競合が少なく、チューブリン結合部位との組み合わせは機序として筋が通る。ただデュアルハイブリッド特有の懸念は残る。2つの活性が足並みをそろえて伸びることは稀なので、in vivo効果にチューブリン側だけでなくHDAC8阻害も寄与している証拠がほしい。
スキャフォールドホッピングで2-OG非競合型KDM6B阻害薬を発見、子宮頸がん異種移植で有効
- スキャフォールドホッピングに基づく仮想スクリーニングで、子宮頸がんで高発現するJmjC型脱メチル化酵素KDM6Bに対するジアリールピリミジン-グアニジン系列を見いだした。
- 最適化化合物は酵素阻害活性でGSK-J4に匹敵するが、2-オキソグルタル酸に対して非競合という点で、多くのJmjC阻害薬と作用様式が異なる。
- 酵素レベルではpan-KDM阻害を示したものの、C33A細胞ではH3K27me3を選択的に上昇させ、異種移植腫瘍の増殖を抑えた。
JmjC阻害薬は2-OG結合部位の化学と極性の重さに悩まされがちなので、非競合型の系列は別の出発点になる。酵素段階のpan-KDM活性が細胞でH3K27me3選択性に変わる理由と、グアニジンが膜透過性に与える影響を知りたい。
脳移行性のコルヒチン部位チューブリンリガンド、神経膠腫の臨床候補に
- 脳腫瘍で承認されている脳移行性の経口薬はテモゾロミドとボロシデニブのみで、新たな選択肢が求められている。
- SAR研究から脳移行性の高いチューブリンリガンドの新クラスが見つかり、共結晶構造でコルヒチン部位への結合と、コルヒチン結合状態に対してβT7・αT5ループが反転した構造が確認された。
- 置換基への感受性が高く不可欠な部分構造は少ないことがSARで示され、化合物40が臨床候補に選ばれた。
実際に血液脳関門を通過するチューブリン結合剤は、P-gpによる排出か神経毒性で脱落するのが常なので、脳曝露が高く構造活性相関が締まった系列は目を引く。βT7/αT5ループの反転は、手元のコルヒチン部位骨格をドッキングし直す価値がある手がかりだ。慢性投与での神経毒性は依然として問題として残る。
ボロン酸型ENPP1阻害薬、腫瘍環境のpH変動下でも活性を維持
- ENPP1は腫瘍微小環境でcGAMPを加水分解し、STING依存の抗腫瘍免疫を弱める。
- リン酸型阻害薬STF-1084を手がかりに、ボロン酸を亜鉛結合基とする非ヌクレオチド系阻害薬を設計し、pH変動に強い化合物36を得た。
- 化合物36は培養系でcGAMP介在のSTING活性化を高め、同系CT26腫瘍モデルでは単剤で腫瘍増殖を抑制し、オキサリプラチンとの併用で相乗効果を示した。毒性は認められなかった。
リン酸・ホスホン酸型のENPP1リガンドは膜透過性と曝露に苦しんできたので、ボロン酸の亜鉛結合基への置換は筋の良いルートだ。酵素が働く酸性環境での活性を狙った設計が巧い。ただ腹腔内投与での単剤効果は控えめで、次に知りたいのは経口曝露とボロン酸の安定性だ。
Development of pH-Resilient Boronic Acid ENPP1 Inhibitors for STING-Mediated Cancer Immunotherapy ↗
ArriVent、EGFRエクソン20挿入NSCLCの1次治療第3相で主要評価項目を達成できず
- Fierce Biotechによると、ArriVentのEGFR阻害薬firmonertinibの第3相FURVENT試験は、EGFRエクソン20挿入変異NSCLCの1次治療で、盲検下独立中央判定による無増悪生存期間の主要評価項目を達成できなかった。
- 高用量群は白金系化学療法に対し数値上わずかに上回るにとどまり、低用量群は数値上下回った。一方、試験担当医師の評価ではより良好な結果だった。
- 同社の株価はこの発表で急落した。
中央判定での化学療法に対する差は小さく、しかもJ&JのRybrevant+化学療法がすでに高い基準を示しているため、エクソン20領域でのfirmonertinibの位置づけは難しい。医師評価と中央判定の乖離は規制当局との対話材料にはなるが、商業面の物語としては弱い。PACC変異を対象とするALPACCA試験が、同社の価値を左右する本命になりそうだ。
オランダの裁判所、MerckのKeytruda皮下製剤の欧州複数国での製造・販売停止を命令
- STATによると、オランダの裁判所はMerckに対し、Keytruda皮下製剤の欧州複数国での製造と販売を停止するよう命じた。
- 公開部分のみ確認できたため、原告、根拠、適用範囲は未検証。
皮下Keytrudaは、ペムブロリズマブのバイオシミラー時代に向けたMerckの主要な防衛策であり、欧州での遅れはライフサイクル計画に直撃する。見出しより、命令の期間と控訴での覆りの有無が重要になる。皮下製剤特許をめぐる広い争いとも重なる案件だ。
STAT+: Merck suffers a setback in Europe over its new Keytruda formulation ↗
経口POLQポリメラーゼ阻害薬、オラパリブ併用でBRCA2欠損腫瘍を退縮
- POLQはマイクロホモロジー媒介末端結合を担い、相同組換え修復欠損がんで合成致死の標的となる。
- 弱い生化学的ヒットの最適化によりベンゾイミダゾール/プリン系阻害薬が得られ、化合物37は強力・選択的で経口活性を持つ。
- BRCA2欠損DLD-1細胞で増殖抑制とオラパリブの増強を示し、HR正常細胞では効果なし。オラパリブとの慢性経口投与で異種移植腫瘍が退縮した。
経口で、しかもHR欠損環境に選択的なポリメラーゼ阻害薬は、この標的に欠けていたものだ。HR正常細胞で効かないという対照が要となる。次は耐性と、ヘリカーゼ領域を狙うアプローチとの比較を見たい。
Caribou Biosciences、後期CAR-T試験の資金を確保できず事業停止へ
- STATによると、Doudna氏が共同創業した同社は、リンパ腫向け既製CAR-T療法の後期試験に必要な資金を調達できず、事業を停止する。
- 他の報道では、臨床段階の2つの細胞治療候補の開発を中止し、大幅な人員削減を行ったうえで合併または売却を探るとされている。
- STAT+の公開部分のみを確認でき、それ以上の詳細は未検証。
CRISPR時代を象徴するCAR-T企業が資金不足で倒れたことは、既製型細胞療法が自家CAR-Tや二重特異性抗体に対して資金を集めにくくなっている現実を示す。科学的な最終判断というより資金調達の失敗に近く、資産とデータの引き受け手が現れるかが注目点だ。
STAT+: Caribou Biosciences, biotech co-founded by Jennifer Doudna, is shutting down ↗
BI-4020由来のマクロ環状PROTACがC797S耐性EGFRを分解
- HQY1480は第4世代マクロ環状EGFR阻害薬BI-4020を母核とするPROTACで、リンカーとE3リガンドを系統的に最適化している。
- 臨床的に重要な複数のEGFR変異体を低ナノモル濃度で分解し、プロテオミクスでもオフターゲット分解は検出されなかった。
- 異種移植モデルでBI-4020を上回り、オシメルチニブ耐性モデルでも有効で、患者由来異種移植でもEGFRを分解した。
従来のTKIではなくマクロ環から出発した点が巧い。EGFR PROTACがウォーヘッドから引き継ぎがちな薬物動態と選択性の弱さを避けられるからだ。次に知りたいのは、新たな耐性変異に対して分解活性が保たれるか、そしてマウス以外でも良好なPKが再現されるかである。
水素結合ドナーを減らした4-アミノキナゾリン系PKMYT1阻害薬、CCNE1増幅がんへ
- 4-アミノキナゾリン系PKMYT1阻害薬で、水素結合ドナーをアクセプターへ置き換えてドナー数を減らし、薬物らしさを改善した。
- リード化合物12fは酵素阻害がナノモル域で、卵巣がん細胞OVCAR-3に強い増殖抑制を示し、PARP阻害薬との併用で相乗効果があった。
- 経口PKも許容範囲で、OVCAR-3異種移植で有効性を示し、忍容性も良好だった。
HBDの削減は、キナーゼ系列で膜透過性と経口曝露を改善する明快で応用しやすい手だ。PARP阻害薬との相乗効果は事業面でも面白いが、PKMYT1は競合が多い。他のキナーゼへの選択性と、臨床先行品との比較を確認したい。
MerckがSciBrunchの前臨床KRAS G12D阻害薬に前払い4億ドル
- Merckは上海のSciBrunchから、経口の前臨床KRAS G12D(ON)阻害薬SPR2015の全世界での独占権を取得した。
- SciBrunchは前払い4億ドルを受け取り、マイルストーンを含む総額は最大21.3億ドルとなる。
- 契約はすでにクローズしている。
前臨床資産に前払い4億ドルは異例で、KRAS G12D競争の過熱ぶりと、中国発資産が臨床段階並みに値付けされている現状を映す。Merckにとっては出遅れ気味の領域で、ON状態阻害の差別化が必要になる。注目はヒト初回投与試験のデータだ。
GenmabのRina-S、白金製剤抵抗性卵巣がんの第2相で持続的な奏効
- GenmabはADCのrinatabart sesutecan(Rina-S)の第2相RAINFOL-01試験で、前治療を多く受けた109例における確定奏効率45.9%を報告しました。
- 無増悪生存期間の中央値は9.5カ月で、TD CowenのアナリストはAbbVieのエラヘアで引用される5.6カ月を明確に上回ると評価しました。
- エラヘア既治療例や、FRα発現が低い・ない患者でも活性が報告されています。
試験間比較は後発の試験に有利に働くので、「明確に優れる」という表現は割り引いて見るべきです。それでも、FRα低発現例やエラヘア既治療例での活性のほうが重要な主張で、エラヘアの高発現限定の適応より対象患者を広げられます。ProfoundBio買収の妥当性を裏づける材料でもあります。
Genmab's latest phase 2 data spur claim ADC is 'clearly superior' to AbbVie's Elahere ↗
AML向けFTO阻害薬の新規骨格、ピリダジン含有ニコチンアミド
- ピリダジンを含むニコチンアミド67化合物のSAR展開から、最も活性の高いFTO阻害薬E6が得られ、MST、CETSA、DARTSで結合が確認されました。
- E6はMOLM-13細胞に活性を示し、全体のm6Aを上昇させ、ASB2とRARAを増加、c-Mycを低下させました。
- CYPに対する安全性とPKは許容範囲で、MOLM-13異種移植腫瘍の増殖も抑えました。
FTO阻害薬としては新たな系列ですが、注目すべきは新規骨格そのものです。FTOのケモタイプはまだ少なく、既報の多くは似た構造モチーフに頼っています。活性は中程度なので、E6は出発点と捉え、細胞での表現型を重視する前にALKBH5など他のAlkBファミリーに対する選択性を確認したいところです。
経口GSPT1分解グルーLG-NE-29、イソインドリノン骨格でグリオブラストーマモデルに有効
- 生存率を指標にした表現型スクリーニングで、テモゾロミドへの耐性が速やかに生じるグリオブラストーマ細胞において、GSPT1が弱点であることが見いだされました。
- イソインドリノン骨格を代謝安定性の観点から最適化し、CRBN依存的なGSPT1のユビキチン化とプロテアソーム分解を誘導する分子糊LG-NE-29が得られました。
- 初期世代の骨格が抱えていた代謝上の弱点を克服し、経口バイオアベイラビリティを備え、グリオブラストーマの異種移植モデルで有効性を示したと報告されています。
イソインドリノン系CRBNグルーは代謝で脱落しがちなので、その弱点を潰した点にまず注目です。ただ鵜呑みにはできず、GSPT1のDC50とDmax、プロテオーム全体での選択性(IKZF1/3など他のネオ基質)、脳移行を含む経口PKを確認したいところです。GSPT1分解は細胞傷害性が強いため、正常細胞に対する治療域も気になります。