トピック

標的タンパク質分解

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BRD9 PROTACがマウスで効きにくい理由と、E3のヒト化による解決策

  • dBRD9やVZ185など広く使われるCRBN系・VHL系のBRD9分解薬は、BRD9自体の配列が高度に保存されているにもかかわらず、マウス細胞では活性が大きく低下する。
  • 原因はE3リガーゼの種差、特にCrbnのI391残基とVHLの構造差にあり、三者複合体の形成を妨げていると考えられる。
  • ヒトCRBNまたはVHLの発現、あるいはCrbnI391V変異の導入で、マウス細胞での活性が回復し、生体内のBRD9分解も向上した。
💡 ポイント

ヒト細胞株では見事に効くPROTACが、マウスの薬効試験では効かない。そんな経験のある人にはなじみのある話だ。げっ歯類での分解薬のPK/PDは、化合物ではなくE3の違いで失敗しうるので、CrbnI391Vやヒト化E3のモデルは早めに用意する価値がある。生体内で陰性でも、種をまたいだ三者複合体形成を調べるまでは、そのシリーズを打ち切るべきではない。

Improving PROTAC-Mediated Degradation in Mouse Models: BRD9 as a Case Study ↗

フマル酸エステルを付加したTTK阻害剤がRNF126経由の一価分解薬に

  • TTK阻害剤に求電子性のフマル酸モノメチルを付けるだけで、E3リガンドを持たない単一弾頭の分解薬が得られた。
  • 代表化合物はTTKを分解し、複数のがん細胞株で元の阻害剤より強い増殖抑制を示した。
  • 機構解析では、化合物がE3リガーゼRNF126とTTKの会合を安定化し、ユビキチン化とプロテアソーム分解を促すと示唆された。
💡 ポイント

一価分解薬の魅力は、阻害剤並みの分子量と膜透過性を保てることだ。ただしフマル酸ハンドルはシステイン反応性の基なので、RNF126だけで説明できるかはプロテオーム規模の反応性データを見てから判断したい。それでも他のキナーゼ骨格に使い回せるなら、手持ちの阻害剤シリーズで試す価値のある安上がりな手だ。

Discovery of Threonine Tyrosine Kinase (TTK) Degraders Utilizing an Electrophilic Monomethyl Fumarate Handle ↗

DNAベースPROTACがTKI耐性肺がんモデルでCENPBを分解

  • セントロメアの配列特異的DNA結合タンパク質CENPBは悪性度の高いがんで過剰発現するが、直接の阻害剤はない。
  • CENPB OligoTACは、CENPB結合性オリゴデオキシヌクレオチドとE3リガーゼリガンドを連結した分子で、CENPBのユビキチン化とプロテアソーム分解、セントロメア破壊、アポトーシスを誘導する。
  • 第1〜3世代のTKIに耐性のNSCLCモデルで有効で、正常細胞への毒性は小さく、血清中安定性も良好、in vivoでPKと忍容性も良好だった。
💡 ポイント

タンパク質自身のDNA認識配列をそのままウォーヘッドにするので、低分子が入るポケットが要らない。転写因子のような標的にとって魅力的なアプローチだ。気になるのはマウス以外での送達、オリゴ製造コスト、そしてCENPBはあらゆる細胞に発現するため、腫瘍選択性が本当に保たれるかという点である。

Centromere-Targeting Chimeras for Combating Cancer Drug Resistance ↗

PROTACの標的結合のばらつきは、E3認識よりも細胞内曝露の差が大きい

  • E3リガンド、リンカー、標的リガンドが異なる20種のPROTACを、セレブロンおよびVHLトレーサーに対する細胞内NanoBRET競合アッセイで評価した。
  • 添加濃度基準では見かけの活性が大きくばらつき、受動的なCaco-2透過性ではほとんど説明できなかった。
  • 実測した細胞内非結合型曝露で補正するとばらつきは大幅に縮小し、膜透過処理した細胞での値と一致した。
💡 ポイント

PROTACのSAR表をE3親和性の差として読む前に、細胞が実際に見た濃度を確かめたくなる。ばらつきの大半が非結合型曝露なら、活性向上に見えたリンカー修飾は透過性の改善にすぎないかもしれない。曝露を早期に測れば、見当違いの変数を追わずに済む。

Exploring the Relationship between Cell Permeability, Intracellular Exposure, and Target Engagement for PROTACs ↗

セレブロンの潜在Cys287を狙う共有結合リガンドがE3リガーゼを開状態に固定し、IMiD駆動の分解を阻止

  • システイン指向のケモプロテオミクススクリーニングで、サリドマイド結合部位から離れたアロステリックポケットCys287に結合する共有結合リガンドを同定した。
  • リード化合物VVD-105917は、IMiDやCELMoDによるネオ基質の分解を広く阻害する。
  • クライオ電顕で、セレブロンを開いた不活性型に固定することが示され、リガンド添加順序にも依存する。同部位の既報リガンドは逆に閉鎖を促進するため、このポケットは作用が反転しうる。
💡 ポイント

これまでのCRBN薬は全て単一のオルソステリックポケットに結合するため、開閉スイッチを制御する共有結合ハンドルは本当に新しいつまみだ。パン阻害薬は分解薬の機序解析やオフターゲット分解のレスキューに優れたツールになる。どちらにも振れる部位ということは、分解を高めるリガンドが同じポケットに潜む可能性もある。プレプリントなので査読を待ちたい。

Allosteric covalent inhibition of cereblon through cryptic cysteine targeting ↗

分子グルーRPT04402、高悪性度子宮がんでPP2Aトリマー形成を回復

  • 高悪性度子宮がんでPP2A AαB56αCヘテロ三量体の形成を回復させる分子グルーRPT04402を報告した論文。
  • これらの腫瘍に多いPPP2R1Aスキャフォールド変異はホロ酵素の組み立てを損なっており、グルーはそれを救済する設計。
  • 企業側の発表ではPP2A変異モデルでの腫瘍退縮とSpringWorksへのライセンスが伝えられている。この要約はタイトルと二次情報に基づき、全文は未確認。
💡 ポイント

ホスファターゼは創薬が難しいことで有名だが、活性部位の阻害ではなく特定のヘテロ三量体を組み直すグルーは賢い迂回路だ。変異が患者層と機序の両方を規定する点もきれいに噛み合う。気になるのは多数あるPP2A Bサブユニット複合体の中での選択性で、誤った複合体の活性化は忍容性の明らかな懸念になる。

Restoration of PP2A AαB56αC trimer formation by RPT04402 molecular glue in high-grade uterine cancer ↗

スキャフォールドホッピングで得たBCL6 PROTAC、DLBCL細胞で標的を分解し経口でも異種移植腫瘍を抑制

  • BCL6リガンドBI-3802からのスキャフォールドホッピングにより、新規の三環性オキサジノキノリノン骨格が得られた。
  • リンカーとCRBN認識部位を最適化した化合物15は、CRBN・プロテアソーム依存的にBCL6を速やかかつ強力に分解した。
  • BCL6依存性DLBCL細胞の増殖を強く抑え、経口投与でOCI-LY1異種移植モデルの腫瘍増殖を、明らかな毒性なく抑制した。
💡 ポイント

BI-3802は重合を介する独特な機序で分解を起こすため、新しい三環性コアから従来型のCRBN型PROTACを組むのは、BCL6除去の別ルートとして価値がある。肝心なのは経口で効いた点で、分子サイズと膜透過性をどう折り合わせたのか、またOCI-LY1以外の細胞株でも分解の深さが腫瘍応答と相関するのかを確かめたい。

Discovery of Tricyclic Oxazinoquinolinone-Based BCL6 PROTAC Degraders with Potent Activity Against Diffuse Large B-Cell Lymphoma ↗

経口の非ペプチド型STAT6分解薬WW-210がマウスのアトピー性皮膚炎を改善

  • 先行のリン酸化ペプチド型STAT6 PROTACを、経口投与を意図した非ペプチド型分解薬に置き換えた。
  • WW-210は極めて低い濃度でSTAT6を分解し、他のSTATファミリーに対する選択性の幅も広い。
  • 測定可能な経口バイオアベイラビリティを示し、血液と脾臓でSTAT6を分解。アトピー性皮膚炎モデルマウスで皮膚病変の改善、血清IgEの低下、肥満細胞浸潤の減少が見られた。
💡 ポイント

STAT6は平坦で極性の高いSH2面をもつ転写因子で、阻害薬が苦戦しやすく、分解薬なら回避できる典型的な標的だ。ホスホペプチドから出発したPROTACで経口曝露を得た点が真の成果。分子量と極性をどう抑えたか、またSTATファミリー選択性が初代T細胞でも保たれるかを知りたい。

Discovery of a Potent, Selective, and Orally Efficacious STAT6 PROTAC for the Treatment of Atopic Dermatitis ↗

長く半剛直なリンカーがVHL型HDAC6分解薬を駆動、抗白血病活性を示す

  • 固相合成法により、ボリノスタット由来HDAC6 PROTACのVHLリガンド、出口ベクター、リンカーを系統的に変化させた。
  • 長く半剛直なリンカーで分解が最も効率的になり、主要化合物はMM.1SおよびMV4-11細胞でHDAC6を優先的に分解した。
  • HDAC阻害活性がほぼ同等の非分解性対照は増殖抑制が明らかに弱く、分解そのものが効いていることを示した。
💡 ポイント

酵素阻害を揃えた非分解性対照は、分解と単なる阻害を切り分ける実験で、結果はPROTACに有利だ。ただボリノスタット類似弾頭では選択性が排他的でなく優先的にとどまる点が弱みで、より高選択的なリガンドに替えれば改善しうる。

Solid-phase synthesis and structure-degradation relationships of VHL-recruiting PROTACs for preferential histone deacetylase 6 degradation ↗

フェルラ酸ベースのPROTACがTLR4を分解し血管内皮を保護

  • 活性の弱い天然物フェルラ酸を基にしたPROTAC 6種を作製し、HUVECでTLR4分解と細胞遊走を評価した。
  • 主要化合物FP-4はTLR4を分解し、TLR4/MyD88–NF-κBシグナルとTNF-α、ICAM-1、VCAM-1の発現を抑えた。
  • ゼブラフィッシュでも保護効果が確認され、PROTACの応用をがん以外へ広げた。
💡 ポイント

弱い天然物リガンドをPROTACで救う発想は巧みだが、TLR4は膜受容体であり、どのE3リガーゼが関与するか、三者複合体への依存性を示す証拠はまだ薄い。機構を信じる前に、リガーゼ阻害薬やプロテアソーム阻害薬によるレスキュー実験を見たい。

Enhancing Natural Product Therapy with PROTACs: Targeted Degradation of TLR4 Confers Potent Endothelial Protection ↗

DNMT1 PROTAC「B7」、肝線維症で触媒機能と非触媒機能を同時に遮断

標的タンパク質分解呼吸器・線維症
  • DNMT1は触媒作用と非触媒作用の両方で線維化を促すため、DC-517を出発点に、両機能を同時に抑えるPROTAC分解誘導薬を設計した。
  • リード化合物B7はDNMT1をユビキチン・プロテアソーム系で分解し、細胞実験でゲノム全体のDNAメチル化を低下させ、線維化促進反応を抑えた。
  • 動物実験でもB7はDNMT1の発現を下げ、コラーゲン沈着の減少と肝機能の改善という形で肝線維症を軽減した。
💡 ポイント

活性部位阻害薬では足場としての役割が残るため、DNMT1は阻害よりも分解が理にかなう典型例だ。気になるのは肝臓への選択性と、増殖組織で必須の維持型メチル基転移酵素を除いたときの影響で、線維症モデルはどちらにも甘い。

Discovery of Potent, Selective DNMT1 PROTAC Degraders: Simultaneous Blockade of Catalytic and Non-Catalytic Functions for Liver Fibrosis Therapy ↗

Roche、中国Defand Therapeuticsと分子糊薬の創薬提携

  • STATによると、Rocheは中国のバイオテクDefand Therapeuticsと、分子糊薬に焦点を当てた創薬契約を結んだ。
  • STAT+記事の公開部分のみ確認できたため、金額条件や標的は未検証。
💡 ポイント

Rocheは単一プラットフォームに賭けず分子糊薬のパートナーを増やし続けており、中国バイオテクからの調達は広いライセンス潮流とも合う。契約一時金やマイルストンが不明な現時点では、創薬初期のオプション取得と捉え、標的の数と中身が本当のシグナルになる。

STAT+: Roche inks drug discovery deal with Chinese biotech, focused on molecular glue medicines ↗

ULK1選択的PROTAC、阻害薬より長くオートファジーを抑制

  • ATP競合型阻害薬ではULK1とほぼ同一のULK2を見分けにくいため、セレブロンを動員する分解誘導剤が設計された。
  • 構造指導型の最適化でMR-9036が得られ、ULK2やIMiDのネオ基質に影響せずULK1のみを分解する。三者複合体形成とプロテアソーム依存性も確認された。
  • 化合物除去後も、臨床段階のULK1/2阻害薬DCC-3116より長くオートファジー抑制が持続し、KRAS G12C変異NSCLCモデルで抗腫瘍効果を示した。
💡 ポイント

パラログ間の選択性は、占有率駆動の薬剤に対して分解誘導剤が優位に立てる領域で、これはその好例だ。次に見たいのは、生体内でULK2の代償が起きるか、そして実際の薬物曝露下でも洗い流し後の持続性が保たれるかである。

Discovery and Optimization of Isoform Selective ULK1 Degraders to Enhance Antitumor Activity in KRAS-Mutant Cancer ↗

Lyciaが最大1億ドルのIPOを申請、LYTAC分解薬をアレルギー領域へ

  • Lycia Therapeuticsは、7月の非公開申請を経て、Nasdaq(LYCA)での最大1億ドルのIPOを正式に申請した。
  • 同社のLYTACプラットフォームはCarolyn Bertozzi研究室の成果で、細胞外タンパク質をリソソームへ運んで分解する。
  • 主力のLCA-0061はIgEを分解する食物アレルギー向けでPhase 1、LCA-0321はバセドウ病の自己抗体を標的とする。
💡 ポイント

健常者での初期データでIgEが大きく低下したことが、この話に臨床の裏付けを与えている。IPOは、がん以外の分解薬に公開市場がどれだけ関心を持つかを測る試金石でもある。ただIgEにはオマリズマブとその後継薬という強敵がおり、持続性と差別化を示す必要がある。

Lycia seeks IPO for antibody degraders as TRexBio, Retension set terms ↗

BI-4020由来のマクロ環状PROTACがC797S耐性EGFRを分解

  • HQY1480は第4世代マクロ環状EGFR阻害薬BI-4020を母核とするPROTACで、リンカーとE3リガンドを系統的に最適化している。
  • 臨床的に重要な複数のEGFR変異体を低ナノモル濃度で分解し、プロテオミクスでもオフターゲット分解は検出されなかった。
  • 異種移植モデルでBI-4020を上回り、オシメルチニブ耐性モデルでも有効で、患者由来異種移植でもEGFRを分解した。
💡 ポイント

従来のTKIではなくマクロ環から出発した点が巧い。EGFR PROTACがウォーヘッドから引き継ぎがちな薬物動態と選択性の弱さを避けられるからだ。次に知りたいのは、新たな耐性変異に対して分解活性が保たれるか、そしてマウス以外でも良好なPKが再現されるかである。

Development of Potent and Selective EGFR-PROTACs Based on Macrocyclic Fourth-Generation EGFR Inhibitors ↗

原子1つの違いでCRBN分解薬がNSD2選択的からGSPT1選択的へ反転

  • NSD2分解薬LLC0424はGSPT1にも作用しますが、原子を1つ変えるだけで、NSD2選択的な424-NDとGSPT1選択的な424-GDという近縁の2化合物が得られました。
  • 424-NDは前立腺がん細胞でアンドロゲン受容体シグナルを抑え、424-GDは統合ストレス応答を誘導しました。
  • バイオレイヤー干渉法で標的ごとに異なる三者複合体の協同性が示され、シミュレーションでは安定な立体配座の違いが選択性の差を説明しうるとされています。
💡 ポイント

分解選択性を決めているのは二者結合の親和性ではなく三者複合体の協同性で、SARの表にまさに載せたいデータです。これほど近い一対の化合物は、NSD2とGSPT1のプローブセットとしてそのまま使えます。プロテオーム全体での選択性と、細胞内でも協同性の傾向が保たれるかを確認したいところです。

Single-Atom Modification Enables Reversal of Degradation Selectivity between NSD2 and GSPT1 ↗

経口GSPT1分解グルーLG-NE-29、イソインドリノン骨格でグリオブラストーマモデルに有効

  • 生存率を指標にした表現型スクリーニングで、テモゾロミドへの耐性が速やかに生じるグリオブラストーマ細胞において、GSPT1が弱点であることが見いだされました。
  • イソインドリノン骨格を代謝安定性の観点から最適化し、CRBN依存的なGSPT1のユビキチン化とプロテアソーム分解を誘導する分子糊LG-NE-29が得られました。
  • 初期世代の骨格が抱えていた代謝上の弱点を克服し、経口バイオアベイラビリティを備え、グリオブラストーマの異種移植モデルで有効性を示したと報告されています。
💡 ポイント

イソインドリノン系CRBNグルーは代謝で脱落しがちなので、その弱点を潰した点にまず注目です。ただ鵜呑みにはできず、GSPT1のDC50とDmax、プロテオーム全体での選択性(IKZF1/3など他のネオ基質)、脳移行を含む経口PKを確認したいところです。GSPT1分解は細胞傷害性が強いため、正常細胞に対する治療域も気になります。

Discovery of LG-NE-29: An Orally Bioavailable GSPT1 Molecular Glue Degrader Effective in Glioblastoma Xenograft Models ↗

バルナーゼ改変体を載せたDNAオリガミ、変異KRAS mRNAの切断を狙う

  • 変異KRASは構造的に多様で薬物結合ポケットにも乏しく、低分子阻害薬の開発を難しくしてきました。
  • 著者らは、タンパク質ではなくmRNAを標的とする分解システムを、6本ヘリックス束(6HB)のDNAオリガミ足場上に構築しています。
  • 一方のモジュールは改変バルナーゼとプログラム可能な認識鎖を組み合わせ、細胞内在の機構に頼らず直接RNAを切断します。もう一方は細胞内への取り込みを担う設計です。
💡 ポイント

KRASに狙うべきポケットがないなら、mRNAを狙うのは筋の通った回避策で、触媒的なバルナーゼは配列ガイド型切断というすっきりした機構を与えます。ただ、盛り上がる前にデータを見たいところです。バルナーゼの切断は触媒的で漏れに容赦がないので、認識鎖は一塩基変異体と野生型KRASをどこまで見分けられるのか。そして送達に耐え、細胞内で実際の活性を示し、siRNAやASOと妥当な比較ができているのか。

An Integrated DNA Origami-Based RNA Degrader for Targeted Degradation of Oncogenic Mutant KRAS mRNA ↗

PROTACの近縁リンカー類縁体をターナリー複合体スコアで順位づけできるか:マッチドポーズ検証

  • 標的タンパク質分解におけるリンカー最適化は、いまも経験則に頼る部分が大きい領域です。
  • このプレプリントは、合成前に近縁のリンカー類縁体を計算で順位づけできるかを、これまでで最も小さな化学的差異で検証します。
  • VHLを動員するSHP2分解薬でマッチドポーズ設計を採り、リンカーの影響だけを切り分けています。
  • 査読前のプレプリントであり、利用できた要旨が限られるため結果の詳細は割愛します。
💡 ポイント

PROTACの開発で合成に何か月も費やすのがリンカーの微調整なので、ほぼ同一の類縁体を計算で見分けられるかを正面から試す研究は、派手なベンチマークより役に立ちます。マッチドポーズにすれば、手法が単に構造を外しただけという言い訳も使えません。否定的な結果でも、ドッキングスコアに頼らず分解活性や協同性のアッセイを組み続けるべきだと示してくれるので価値があります。

Scoring close linker analogues in PROTAC ternary complexes: A matched-pose study of VHL-recruiting SHP2 degraders ↗

GPCRをリソソームへ送る二重特異性GTACで受容体を拮抗

  • GTACは、受容体結合部位とトランスフェリン受容体(TfR1)結合部位を組み合わせた二重特異性抗体です。
  • オルソステリック部位を塞ぐのではなく、GPCRのエンドサイトーシスとリソソーム分解を誘導します。
  • ウイルス由来のBILF1、がん関連のRXFP1、免疫系のCCR6など、創薬が難しい標的で実証されました。
  • 構成的活性も含めてシグナルを完全に抑え、従来の抗体拮抗薬を大きく上回る効力を示しました。
💡 ポイント

受容体そのものを分解するので、GPCRで毎度つまずく「きれいなオルソ/アロステリック低分子が見つからない」問題を迂回でき、逆アゴニストでも抑えきれない構成的シグナルも断てます。手元の創薬に引きつけると、抗体フォーマットゆえ経口投与や組織移行は期待できず、TfR1動員に伴う分布や安全性の課題も残ります。それでも、化学が行き詰まったGPCRに対する現実的な別メカニズムになり得ます。

GPCR antagonism via rewiring of receptor trafficking and degradation ↗

二機能性OGTACがOGTを標的タンパク質へ誘導しO-GlcNAcを付加

  • OGT/OGA阻害は数千の基質に影響するため、タンパク質ごとのO-GlcNAc機能の特定は難しく、OGTACは目的タンパク質へOGTを動員することでこれに対応する。
  • 各OGTACはOGT結合要素、リンカー、標的認識モチーフから成り、TPRドメインによる基質認識を部分的に迂回し得る。
  • 有効なO-GlcNAc付加には適切な三者複合体形成と非阻害的なOGT結合が必要で、標的認識モチーフが標的範囲と選択性を決める。
  • 局所的な付加は、タンパク質の分解、シグナル伝達、転写の変化と結び付けられている。
💡 ポイント

ここはOGT結合部位がすべてだと思う。OGTを阻害してしまえば、本来向け直したい活性そのものを失うので、非阻害的な結合剤の取得がSAR上の本当の壁になる。分解誘導剤のE3リガンド選びと似た構図だ。選択性をOGTのTPRドメインではなく標的認識モチーフが決める点もモジュール型で魅力的。ただしAccounts形式の総説なので、標的横断でどこまで通用するかを見てから評価したい。

Chemically Induced Proximity for Targeted Protein O-GlcNAcylation ↗

Scopeライブラリ:フラグメントと完成分子の間の化学空間で扱いやすいヒットを狙う

  • Scopeは、フラグメントと高度に修飾された低分子量ライブラリ化合物の中間に位置する化学空間を定義し、化合物の質、リガンド効率、選択した物性範囲を重視して、メディシナルケミストリー上扱いやすいヒットを得ることを狙う。
  • Scope環系(ring-X-ring)がこの空間を整理し、低〜中マイクロモル域の活性を目指した意図的な官能基化を導く。約1万化合物のセットは、SPR、ネイティブMS、DSF、生化学アッセイによる中程度スループットのスクリーニングに適する。
  • トリパノソーマCLK1、14-3-3/ERαの分子糊プロジェクト、SARS-CoV-2 Mproの事例では、一次ヒット率は多様性セットと同程度で、カウンタースクリーニング後のリガンド効率は優れていた。
💡 ポイント

正直、ここで惹かれるのは「すぐ手を動かせるヒット」という発想だ。フラグメントと完成度の高い化合物の間に置いたライブラリで、リガンド効率を軸に、ring-X-ring のコアが次にどこを修飾すべきかを示してくれる。1万化合物規模ならSPR、ネイティブMS、DSFで回せるので、小さなグループでも扱える。気になるのは、一次ヒット率は多様性セットと同程度でカウンタースクリーニング後のLEが良いという結果が、3標的を超えても再現するのか、そして環系の制約が新規性をどこまで狭めるのかという点だ。

The Scope Concept: Defined Chemical Space for Identifying Ligand-Efficient, Tractable Hits Applied to Drug Discovery Targets Trypanosomal CLK1, 14–3–3/Estrogen Receptor-α, and SARS-CoV-2 Mpro ↗

ネイティブMSで見えた、PROTACのリンカー長とウォーヘッドが三者複合体に及ぼす別々の影響

  • イオンモビリティー、表面誘起解離、可変温度ESIを組み合わせ、2種のBETリガンド(JQ1とI-BET726)と異なる長さのPEGリンカーで作ったBRD4–PROTAC–VCB複合体を調べた。
  • 短いリンカーでは複合体がより伸びた形に保たれ、長く柔軟なリンカーでは天然に近い緩んだ構造を取れる。
  • JQ1の複合体は衝突でPROTACが脱離しやすく、結合の強いI-BET726の複合体は保持しやすい。融解挙動も異なった。
💡 ポイント

リンカー最適化は依然として経験頼みなので、構造が複合体界面にどう効くかを別角度で測れるのはありがたい。気相データは溶液中の協同性そのものではなく、これだけで分解薬を順位付けはしないが、細胞での分解活性と並べれば2つのウォーヘッドの挙動の違いを説明する助けになりそうだ。プレプリントなので、査読までは暫定的な結論と見ておく。

Native Mass Spectrometry Reveals Distinct Effects of Linker Length and Targeting-Ligand Identity on PROTAC Ternary Complexes ↗

p300/CBP創薬:二機能性分解薬は従来型阻害薬を超えるのか

  • p300/CBPのブロモドメインと触媒(HAT)ドメインを標的とする低分子阻害薬を総覧し、臨床段階の化合物がどう最適化されたかに重点を置いたパースペクティブ。
  • 続いて、PROTACを含む二機能性の近接誘導分子へと研究が移っている流れをたどる。
  • この大型・多ドメインの転写コアクチベーターに対し、各モダリティが何をもたらすかを比較している。
💡 ポイント

p300/CBPは、分解薬が分子量に見合う価値を持つ場面かどうかを試す好例だ。阻害薬では残ってしまう足場機能こそ、分解薬が取り除ける部分である。HATドメインとブロモドメインの最適化の経緯は、扱いにくいクロマチン標的を抱える人に参考になる。ただp300とCBPはほぼ同一なので、分解薬の項はパラログ選択性の点を割り引いて読みたい。

Targeting Transcriptional Coactivators p300/CBP: Small-Molecule Inhibitors or Bifunctional Proximity-Inducing Modalities? ↗

「2-in-1」設計でセレブロンリガンドをHDAC8キャップ部に統合、分解薬を小型化

  • 二つのリガンドをリンカーで繋ぐ代わりに、セレブロン結合モチーフをHDAC8阻害薬のキャップ基に組み込み、一つの構造要素で両タンパク質に結合させた。
  • 同グループの第一世代分解薬と比べ、分子量が小さく選択性と薬物様性が向上した。
  • in vivoでもHDAC8を強く分解する。
💡 ポイント

PROTACの嵩高さは必要経費として受け入れられがちだが、E3リガンドをウォーヘッドのキャップ部に溶け込ませる発想はそこを正面から突いており、他の亜鉛酵素にも転用できる。気になるのは、共有モチーフがどちらの結合も損なわないか、セレブロンの新規基質選択性に影響しないかだ。in vivoの分解と物性が両立するなら、リンカーレス路線はもっと注目されていい。

A 2-in-1 Strategy for the Discovery of Compact HDAC8 Protac Degraders ↗

加齢で亢進するトランスサイトーシスを利用、ROS応答型DAPK1分解薬を脳へ送るBmTAC

  • 神経変性疾患での分解薬は脳への送達が最大の壁であり、BmTACは加齢で亢進する脳血管内皮のカベオラ介在トランスサイトーシスを利用する大環状ペプチド・シャトルを搭載する。
  • VHLリガンドに付けた活性酸素種応答性のケージにより、ROSの高い組織に到達するまでPROTACは不活性に保たれる。
  • 活性型DAPK1を老化した脳で選択的に除去することを狙ったプラットフォームである。
💡 ポイント

侵入用のシャトルと活性化用のROSケージという二重のゲートは巧みな設計だが、課題は医薬化学からコンジュゲートのCMCやPKへ移る。末梢でケージが外れたPROTACの割合と、シャトルが老化した内皮の性質に依存する点(患者の適用範囲を狭めうる)は厳しく見たい。in vivoデータが堅ければ、CNS向け分解薬として確かな一歩だ。

Blood-Brain Barrier-Permeable Macrocyclic Chimeras (BmTACs) for Targeted Protein Degradation in the Aging Brain ↗

3つの化学選択的ルートで、セレブロン系PROTACを切断型プロドラッグに変換

  • セレブロンをリクルートするPROTACはプロドラッグ化のための誘導体化が難しい。本研究は、トリアゾール四級化、三級アミンのアルキル化、ヒドロキシルリンカーの導入という3つの直交的な手法を示した。
  • これらにより、放出速度を調整できる切断型プロドラッグが得られ、PEG化構造やボトルブラシ型プロドラッグにも組み込める。
  • 代表例で、分解誘導薬の制御放出、in vitroでの抗がん活性、腫瘍集積、予備的なin vivo効果が確認された。
💡 ポイント

PROTACの本当の課題は三者複合体の協同性より体内曝露で、マスクして放出するモジュール式の手法は待望だった。グルタルイミドをもつ分子で化学選択性を確保した点が実務的で、再最適化なしに既存の分解誘導薬へ使えるなら再利用性は高い。血漿と腫瘍での放出の差と、マスク体が早期にセレブロンと結合しないかを確認したい。

Generalizable Strategies for the Synthesis of Cereblon-Recruiting PROTAC Prodrugs ↗

メルク、中国発KRAS G12D阻害薬SPR2015を頭金4億ドルでライセンス導入

  • メルク・アンド・カンパニーは、上海を拠点とするSciBrunch Therapeuticsと、経口KRAS G12D分子糊(モレキュラーグルー)阻害剤SPR2015に関する独占的グローバルライセンス契約を締結した。
  • SciBrunchは契約一時金4億ドルを受け取り、マイルストーン支払いを含めた総額は最大21億3000万ドルに達する可能性がある。
  • 本契約は、米国製薬大手が中国発のオンコロジー資産を導入する近年の潮流を反映している。
💡 ポイント

これはメルクのKRAS戦略最大の稴を埋める一手だ。業界がG12Cに集中する中、膳臓がん・大腸がんでより頻度の高いG12Dは共有結合化学では手つかずのままだった。分子糊(モレキュラーグルー)というアプローチが機能すれば、この壁を根本から回避できる。契約総顉21傃21.3億ドルに対し頭金がわずか19%というのは、まだ初期段階のリスク低減にすぎないことを示唆しており、他の欧米大手が残る中国発 G12D候補を奔い合う展開が予想される。

Merck licenses a KRAS G12D inhibitor for $400M upfront ↗

脂質ナノ粒子のフッ素化チューニングでPROTAC送達効率を向上

  • 研究チームはフッ素化した脂質テールを持つイオン化脂質を設計し、PROTAC分解誘導剤を封入するナノ粒子を作製した。
  • フッ素化の程度を調整することでナノ粒子の物理化学的特性が変化し、細胞内輸送経路がシフトして、エンドソームからの脱出効率が向上した。
  • 最適化されたフッ素化製剤は、非フッ素化脂質の対照と比べて、より高い細胞質内PROTAC放出と標的タンパク質分解を達成した。
💡 ポイント

LNPで送達されるPROTACペイロードの大半は、エンドソームを脱出できずに捕捉され、リソソームで分解されてしまう。脂質テールのフッ素含量を調整して細胞質への放出を高めるのは、siRNA-LNPの手法をそのまま転用した賢い工夫だ。この足場が今回試験した分解剤を超えて汎用化できるなら、経口投与には大きすぎる、あるいは極性が高すぎる二官能性PROTACの多くを救えるかもしれない。

Fluorination-Tuned Ionizable Lipids Regulate Nano-PROTAC Trafficking for Enhanced Targeted Protein Degradation ↗

経口STAT6分解PROTAC、アトピー性皮膚炎治療に新たな可能性

  • 新規PROTAC分解薬がSTAT6を標的とする。STAT6はIL-4/IL-13シグナルを伝達し、Th2型アレルギー性炎症を引き起こす転写因子である。
  • STAT6を阻害するのではなく、この分子はSTAT6結合フラグメントと分解誘導ハンドルを連結し、関連するSTATタンパク質に対する高い効力と選択性を狙う。
  • 前臨床試験で経口投与時の有効性が報告されており、アトピー性皮膚炎における注射用生物学的製剤に代わる経口薬となる可能性を示している。
💡 ポイント

経口バイオアベイラビリティこそ、標的選択より難しい成果だ——PROTACはリピンスキー/bRo5の制限(分子量、極性表面積)を超えがちで、腸管で安定して経口有効性を示す分解薬を作る方がよほど珍しい合成的達成だ。STAT1/3/5との選択性がin vivoで保たれるなら、注射剤のデュピルマブを飛び越え、すでに臨床入りしている他の経口STAT6分解薬プログラムに圧力をかける。

Discovery of a Potent, Selective, and Orally Efficacious STAT6 PROTAC for the Treatment of Atopic Dermatitis ↗