キナーゼ
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コフォールディングモデルはリガンド位置が合っていてもタンパク質構造を外すことがある
- AlphaFold3、RoseTTAFold3、Boltz-2、Chai-1の4モデルを、立体配座状態が薬理を左右するキナーゼとClass A GPCRで評価した。
- 前向き評価とするため、4モデル全ての学習カットオフ後に公開された複合体と、比較用の既存構造1つを用いた。
- リガンドの位置が正しいことと、周囲のタンパク質構造が正確に予測されることは、系統的に別問題であることが示された。
コフォールディング構造にドッキングする人への警告ラベルがこれだ。リガンドの姿勢がもっともらしくても、DFG状態やGPCRの活性化状態が正しいとは限らない。配座こそが本質であるII型キナーゼ阻害剤やバイアス型GPCRリガンドで特に響く。SAR設計に使う前に、既知の配座マーカーで検証すべき仮説として扱うのが無難だ。
キノーム全体で高選択的かつ経口投与可能なマクロ環CDK7阻害剤
- 17員環マクロ環のピラゾロトリアジン骨格を構造に基づいて最適化し、強力なCDK7阻害剤を得た。
- 400種超のキナーゼパネルで有意なオフターゲット活性はなく、既存CDK7阻害剤の選択性の低さを克服している。
- 細胞では細胞周期停止と転写抑制、c-Myc低下を示し、特にトリプルネガティブ乳がん細胞で顕著だった。経口バイオアベイラビリティも良好で、薬物動態は線形だった。
CDK7で400種超のキナーゼにわたりクリーンな結果が出るのは珍しい。この分野の共有結合阻害剤はTHZ型の弾頭に頼ってきたからだ。非共有結合のマクロ環で経口曝露も取れているなら、転写依存性の適応症で実際に手に取りたいプロファイルである。残る問いはオンターゲット毒性で、キナーゼ間の選択性だけではCDK7の正常な転写での役割に起因する毒性は避けられない。
総説:構造ガイド設計はいかにFGFR3選択的阻害剤を実現したか
- 第二世代のpan-FGFR阻害剤はコンセプトを実証したが、FGFR1・2・4の阻害に伴う毒性が制約となっていた。
- ファミリー内の構造相同性は高いにもかかわらず、構造ガイドの取り組みにより、臨床評価に入った初のFGFR3選択的阻害剤が生まれた。
- 本Perspectiveは、生物学的根拠、選択性を生む設計戦略、膀胱がんや軟骨無形成症など新たな適応を扱う。
高度に保存されたキナーゼファミリー内でのアイソフォーム選択性は、構造ベース設計の到達点を測る好例で、FGFR3には臨床段階の答えが出てきた。注目は軟骨無形成症だ。慢性かつ小児に近い適応では忍容性のハードルが腫瘍領域よりずっと高く、選択性の価値がまさに効いてくる。
MCCE計算が示す、キナーゼ阻害薬は結合時にプロトン化・互変異性状態を変えうる
- 9種のキナーゼドメインと承認済み阻害薬18種による37の共結晶構造に、多コンフォメーション連続体静電計算(MCCE)を適用した。
- 結合してもタンパク質の正味電荷はほぼ安定だが、阻害薬の電荷状態は頻繁に増減した。
- 溶液中でほぼ同程度に存在する2つの互変異性体が、結合により1つに絞られ、数kcal/mol規模のエネルギー差が生じうる。
多くのバーチャルスクリーニングは、固定した1つのプロトン化状態を暗黙の前提にしている。承認薬でさえそれがkcal/molの誤差になりうるという。互変異性を起こす複素環を持つ骨格がSARで外れた挙動を示したら、ポケットを疑う前に結合状態の互変異性体を確かめたい。
Kinase Inhibitors can Change Protonation or Tautomeric State upon Binding ↗
結晶構造で見る、脳移行性EGFR阻害薬が脳曝露だけでなく活性も高める理由
- 血液脳関門透過性を高める設計がなされたEGFR阻害薬について、X線結晶構造解析と活性測定を行った。
- BBB透過性を高める置換基はEGFRキナーゼドメインの多様な領域と相互作用し、生化学的・細胞活性は概ね向上した。
- 塩橋を形成する部分構造と特定のハロゲン置換の組み合わせが最も有効で、「一石二鳥」の設計指針を示す。
CNS曝露と活性はたいていトレードオフなので、同じ極性・塩基性ハンドルで両方を得られるという結晶学的根拠は有用だ。塩橋とハロゲンの組み合わせは、自分のキナーゼ系列にも試せる具体的な設計則になる。ただし排出や非結合型脳内濃度には触れておらず、実際の有効性はそこで決まる。
Structural Insights into Brain-Penetrant EGFR Tyrosine Kinase Inhibitors with Enhanced Potency ↗
マッチした陰性対照つきの5-アザインドール系TTBK1/2プローブ、繊毛形成を阻害
- 5-アザインドール系化合物13は、タウチューブリンキナーゼ1・2に強力かつ細胞活性を示す。
- 細胞内キノーム全域の解析でオフターゲットは限定的で、NanoBRETによる追試でCDK11A/B、CK1δ、PIKfyveに絞り込まれた。
- 構造の近い化合物5は細胞内でTTBKに結合せず陰性対照として機能し、化合物13はTTBK2の自己リン酸化とRPE-1細胞の一次繊毛形成を阻害した。
評価したいのは姿勢の良さだ。細胞内キノーム選択性マップ、CDK11やPIKfyveの弱点の率直な開示、構造が近い不活性対照が揃っている。繊毛形成の表現型に生物学的意味を読む前に、プローブはこうあるべきだ。まず試したいのはCDK11の重なりで、別骨格のプローブで検証したい。
Potent and Cell Active 5-Azaindole-based Tau Tubulin Kinase Inhibitors Disrupt Ciliogenesis ↗
EGFRキナーゼ阻害薬の骨格からキナーゼ活性を除き、BAX阻害薬へ転換
- バーチャルスクリーニングで、ダコミチニブやゲフィチニブ類似骨格などのEGFR阻害薬がBAX結合候補として抽出された。
- 系統的な構造修飾でBAX阻害のSARを構築し、EGFRキナーゼ活性を大きく低減した。
- この系列は、試験管内・細胞・iPS由来脳オルガノイドでBAX阻害の改善を示し、薬物様性も良好だった。
BAXのような実行因子を阻害するのは難しく、実績あるキナーゼ骨格から出発するのは現実的だ。ただ勝負はEGFR活性が十分に消えているかで、キナーゼにも効く細胞保護薬は神経保護薬として使いにくい。BAXへの直接結合を示す直交的な証拠と、より広いキナーゼパネルでの確認が欲しい。
二環式アミンへの置換でインダゾール系LRRK2阻害薬のG2019S選択性が拡大
- 構造ガイドのハイブリッド化でインダゾール系LRRK2シリーズを構築。初期のピペリジン体は高活性だが、野生型とG2019S変異体の差がほとんどなかった。
- ピペリジンをオクタヒドロシクロペンタ[c]ピロールに置換すると、活性を保ったまま選択性の幅が拡大。化合物34がこの新規ケモタイプを代表する。
- 著者らは、次世代のパーキンソン病向けLRRK2阻害薬に向けた新たな出発点と位置づけている。
柔軟なピペリジンを縮環二環に固定するのは選択性を磨く定石で、今回は成功したようだ。ただ炭素骨格が増えた分の脂溶性と脳移行性のコストは入れ込む前に確認したい。CNS標的はどちらにもシビアだ。変異体優先の選択性が酵素アッセイだけでなく細胞でも保たれるかも要確認。
ベンゾチオフェンの最適化で結核菌MprBヒスチジンキナーゼを阻害、病原性を抑制
- 先行ヒットBTP15はMprB阻害でファゴソーム脱出を防ぎ、結核菌による宿主細胞死を抑えるが、薬物動態が不良だった。
- 新規ベンゾチオフェン誘導体を、MprB阻害、ミクロソーム安定性、毒性、THP-1およびMRC-5細胞でのex vivo効果で評価した。
- 菌を直接殺さず病原性だけを阻むアプローチで、耐性圧力を下げられる可能性がある。
抗病原性戦略は紙の上では魅力的だが、殺菌性の指標なしで有効性を示すのが難所だ。BTP15の弱点はPKだったので、安定性の改善がin vivo曝露につながるか、そして感染細胞でMprBの標的結合がきれいに示されているかを最も注意して見たい。
STK33男性避妊薬インダゾールの溶解性とCLK4オフターゲットを改善
- CDD-2807の母核である3-(ビフェニルエチニル)-1H-インダゾールについて、構造活性・構造物性相関を調べ、低い速度論的溶解度の改善を図った。
- CDD-3094はナノモルの細胞活性を維持しつつ溶解性を高め、hERG阻害を低減し、広範なキナーゼパネルでもクリーンだった。
- 共結晶構造に基づき主要オフターゲットCLK4を回避する改変を行い、選択性の高い生化学ツールを得たが、細胞活性は低下した。
溶解性はCDD-3094で解決し、次に選択性を得た代わりに細胞活性を失うという、物性と活性のトレードオフの典型例だ。安全性の基準ががん領域よりはるかに高い避妊薬では、生の活性よりCLK4の識別が重要で、次の課題は膜透過性の回復になる。
インダゾールと二環式ピロリジンのハイブリッド骨格で変異体選択的LRRK2阻害薬を探索
- インダゾールとオクタヒドロシクロペンタ[c]ピロールを構造指針で組み合わせ、パーキンソン病向けの新しいLRRK2阻害薬骨格を得た。
- 初期のピペリジン含有アナログは高活性だったが、野生型とG2019S変異体の区別はほとんどつかなかった。
- ピペリジンを縮環二環式アミンに置き換えることで、この選択性の幅を広げようとした。
野生型とG2019S変異体の差が小さいことはLRRK2リードが行き詰まる典型的な理由で、変異体への偏りを生む骨格変更は注目に値する。細胞内の生理的ATP濃度でもその偏りが保たれるか、二環式アミンが脳移行性とクリアランスにどう影響するかを見たい。
ArriVent、EGFRエクソン20挿入NSCLCの1次治療第3相で主要評価項目を達成できず
- Fierce Biotechによると、ArriVentのEGFR阻害薬firmonertinibの第3相FURVENT試験は、EGFRエクソン20挿入変異NSCLCの1次治療で、盲検下独立中央判定による無増悪生存期間の主要評価項目を達成できなかった。
- 高用量群は白金系化学療法に対し数値上わずかに上回るにとどまり、低用量群は数値上下回った。一方、試験担当医師の評価ではより良好な結果だった。
- 同社の株価はこの発表で急落した。
中央判定での化学療法に対する差は小さく、しかもJ&JのRybrevant+化学療法がすでに高い基準を示しているため、エクソン20領域でのfirmonertinibの位置づけは難しい。医師評価と中央判定の乖離は規制当局との対話材料にはなるが、商業面の物語としては弱い。PACC変異を対象とするALPACCA試験が、同社の価値を左右する本命になりそうだ。
親油性を管理した最適化でPERK阻害薬APL-11056に到達
- 文献由来で活性は中程度ながらキナーゼ選択性とPKに優れるPERK阻害薬を出発点に、log DとLLEを指標にリード最適化を進めた。
- その結果、強力かつ選択的で、生体内PKに優れるPERK阻害薬APL-11056(化合物49)が得られた。
- 高い膜透過性は、コアのベンズアミドのα位にあるフッ素と関連しており、排出トランスポーターによる認識を抑えていると考えられる。
活性を追うのでなくLLEでSAR全体を導いた姿勢が読み解きやすさを生んでいる。ベンズアミドα位のフッ素で排出を回避する手法は、自分のアミド系列にも使えそうだ。PERKのISR生物学は過去に阻害薬を苦しめた経緯があり、PK表よりも忍容性データが重要になる。
ULK1選択的PROTAC、阻害薬より長くオートファジーを抑制
- ATP競合型阻害薬ではULK1とほぼ同一のULK2を見分けにくいため、セレブロンを動員する分解誘導剤が設計された。
- 構造指導型の最適化でMR-9036が得られ、ULK2やIMiDのネオ基質に影響せずULK1のみを分解する。三者複合体形成とプロテアソーム依存性も確認された。
- 化合物除去後も、臨床段階のULK1/2阻害薬DCC-3116より長くオートファジー抑制が持続し、KRAS G12C変異NSCLCモデルで抗腫瘍効果を示した。
パラログ間の選択性は、占有率駆動の薬剤に対して分解誘導剤が優位に立てる領域で、これはその好例だ。次に見たいのは、生体内でULK2の代償が起きるか、そして実際の薬物曝露下でも洗い流し後の持続性が保たれるかである。
特許ハイライト:複製ストレス関連がん向けカルボキサミド系PKMYT1阻害薬
- PKMYT1はG2/M期チェックポイントでCDK1を抑える酵素で、阻害すると早期の分裂期突入とDNA損傷の蓄積を招き、がん細胞が死に至る。
- 本特許概説は、新規カルボキサミド系阻害薬シリーズの設計、合成、治療上の可能性をまとめている。
- ATR阻害薬、PARP阻害薬、化学療法、放射線療法の効果を高める可能性にも触れている。
データではなく特許の整理なので、競合動向の資料として読む。キナゾリン系が混み合うPKMYT1領域にカルボキサミド骨格が加わったことは、知財の陣取りが急速に進んでいることを示す。実施例でヒンジ結合部位を確認し、PARP/ATR併用をどこまで前面に出しているかを見たい。
Novel Carboxamide-Based PKMYT1 Inhibitors for Replication Stress-Associated Cancers ↗
BI-4020由来のマクロ環状PROTACがC797S耐性EGFRを分解
- HQY1480は第4世代マクロ環状EGFR阻害薬BI-4020を母核とするPROTACで、リンカーとE3リガンドを系統的に最適化している。
- 臨床的に重要な複数のEGFR変異体を低ナノモル濃度で分解し、プロテオミクスでもオフターゲット分解は検出されなかった。
- 異種移植モデルでBI-4020を上回り、オシメルチニブ耐性モデルでも有効で、患者由来異種移植でもEGFRを分解した。
従来のTKIではなくマクロ環から出発した点が巧い。EGFR PROTACがウォーヘッドから引き継ぎがちな薬物動態と選択性の弱さを避けられるからだ。次に知りたいのは、新たな耐性変異に対して分解活性が保たれるか、そしてマウス以外でも良好なPKが再現されるかである。
シアノキノリン系HIPK4阻害薬、非ホルモン性の男性避妊薬への道
- HIPK4は精子細胞に特異的で精子頭部の形成に必要なキナーゼであり、非ホルモン性避妊薬の標的候補である。
- シアノキノリン系の化合物群は、HIPKファミリー内でもキノーム全体でも選択的な強力HIPK4阻害薬となった。
- 一部の化合物は精子細胞でHIPK4の恒常性も変え、不溶性凝集体を形成させてオートファジー受容体TAX1BP1との相互作用を促した。
初期の化合物群でキノーム全体の選択性が出ているのはプローブとして理想的だ。予想外のタンパク質恒常性への作用は、調節可能な分解型に近い作用様式を示唆していて興味深い。ただ避妊薬としては、可逆性と長期安全性の証明という非常に高い壁が残る。
Small-Molecule Modulators of HIPK4 Activity and Proteostasis ↗
FDA、リリーのジャイプリカを未治療CLL・SLLの1次治療として承認
- FDAは、ジャイプリカ(ピルトブルチニブ)を未治療の慢性リンパ性白血病・小リンパ球性リンパ腫に対して承認しました。
- これにより、この非共有結合型BTK阻害薬の使用が後方ラインから1次治療へ広がります。
BTK市場の患者数が集中するのは1次治療であり、商業的に意味が大きいのはこの適応です。非共有結合型阻害薬が、共有結合型の既存薬と正面から競合することになり、勝負どころは忍容性と、Cys481との結合に依存しない点です。固定期間のベネトクラクス併用療法と比べて、保険者やガイドラインがどう位置づけるかに注目です。
アジド導入VEGFR2阻害薬、網膜に届く緑色光で活性が上昇
- アジド基を導入したVEGFR2阻害薬EYE1090とEYE1118は、暗所でも強い阻害活性を保ちつつ、光照射で受容体への結合が促進されます。
- 高齢者の網膜にも届く緑色光で、in vitroの血管新生抑制活性が高まりました。
- 経口投与で、ラットのVEGF誘発網膜漏出を抑え、マウスの脈絡膜新生血管モデルで病変を縮小し、急性肝毒性は見られませんでした。
光スイッチにアジドを使うのは、古典的なキナーゼ骨格への小さく巧みな修飾です。魅力は空間選択性で、全身曝露しつつ光が集まる眼内でだけ活性が高まります。暗所活性がどこまで残るか(眼以外でのVEGFR2オフターゲット作用に直結します)と、光反応生成物の行方を確かめたいところです。
Three Nitrogen Atoms Turn Old Kinase Inhibitors Into New Targetable Remedy ↗
構造ベース設計でクラスIII RTKのオフターゲットを回避した野生型KIT選択的阻害剤
- クラスIII受容体型チロシンキナーゼ間ではATP結合部位が高度に保存されており、KITのみを選択的に阻害するのは難しい。本研究は構造ガイドの最適化でこの課題に取り組んだ。
- トリアゾロピリジン型ヒンジ結合部位が選択的な出発点となり、中央リンカーの変更により、活性と薬物動態が向上した「逆」アリールアセトアミド系列へ展開した。
- ピラゾールリンカーとヒンジ結合部位の修飾でヒト血清存在下でも活性を維持し、末端アリール基の調整でCYP時間依存的阻害が軽減され、キノーム選択性も向上した。
- 結晶構造から、ゲートキーパー近傍のリンカーの立体電子効果が選択性を左右し得ることが示され、慢性疾患治療に適したリード化合物が得られた。
目を引いたのはヒンジ結合部ではなくリンカーだ。ゲートキーパー近傍の立体電子効果が、クラスIII RTK間のATP部位の類似性では本来得られないはずの選択性を生んでいるらしい。混み合った他のキナーゼファミリーにも使えそうな手がかりだ。さらに、CYPの時間依存的阻害とヒト血清下での活性という問題を同じキャンペーンで解決している点も好印象で、慢性投与を見据えたリードという印象を受ける。
マルホとBMS、TYK2阻害薬ソーティクツの国内販売で提携
- マルホとブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)は、BMSの経口TYK2阻害薬「ソーティクツ錠」(一般名:デュークラバシチニブ)について、2026年10月1日付で国内販売提携契約を締結した。
- マルホが国内の販売・流通を担い、皮膚科およびリウマチ領域で情報提供活動を行う。BMSはリウマチ領域で情報提供活動を継続する。
- ソーティクツは尋常性乾癬・膿疱性乾癬・乾癬性紅皮症を適応としており、2026年5月には乾癬性関節炎の適応も追加されている。
BMSが日本での販売主導権をマルホに委ねたのは、この市場ではグローバルな営業力より皮膚科医とのネットワークがものを言うという実質的な認識の表れだ——外資系新薬メーカーと国内専門特化企業の典型的な「アクセス確保」型提携である。6月の乾癖性関節病適応追加直後にリウマチ領域のプロモーションを重ねてきたタイミングは、経口JAK阻害薬など競合が固まる前にポジションを固めたいという焦りを示す。マルホにとっては、研究開発リスクを負わずに売上を積み増やせる低リスクな一手だ。
アミノピラゾール系リード化合物の最適化から選択的PLK4阻害剤EXEL-1855へ
- エクセリキシスの研究者らは、中心小体複製に必須なキナーゼPLK4を標的とするアミノピラゾール系ヒット化合物を最適化し、開発化合物EXEL-1855へと導いた。
- 構造基盤のSAR研究と選択性プロファイリングにより、センチリノンなど従来のアミノピラゾール系PLK4阻害剤で問題となっていたオフターゲットキナーゼへの作用を改善した。
- 前臨床腫瘍モデルにおいてEXEL-1855は強い抗腫瘍活性を示し、開発候補化合物としての選定を支持した。
選択性こそ、アミノピラゾール骨格の昔からの弱点だった――センチノンのオフターゲットキナーゼ活性(PLK1/2/3、Aurora)は優れたケミカルプローブには十分でも、薬剤候補としては力不足だった。EXEL-1855をクリーンなキノーム選択性プロファイルとともに「開発候補品」まで持ち込めたこと自体が今回の本当の成果であり、効力の数値そのものではない。PLK4の中心体重複という機序は、CDK/Aurora系で飽和状態の標的群と比べると意外なほど手つかずの領域でもある。
イミダゾール骨格への変換で実現した選択的経口CDK2阻害剤INCB127443
- 計算科学的アプローチにより、以前報告されたピラゾール系CDK2阻害剤の骨格がイミダゾール環へと置き換えられ、CDK1に対する選択性向上が図られた。
- 新たな化学骨格は、効力、CDK1/CDK2選択性、物理化学的特性を同時に最適化する多変量最適化戦略により改良された。
- この取り組みの結果、経口投与可能な候補化合物INCB127443が誕生し、良好なCDK1選択性と、持続的な体内標的カバレッジを可能にする平坦な薬物動態プロファイルを兼ね備えている。
ピラゾールをイミダゾールに置き換えてCDK1選択性を解決するのは、原子1個分の賭けだ―うまくいったということは、ほぼ同一のATPポケットの中で選択性を決めているのがサイズの違いではなく、微妙な水素結合ベクトルの差だということで、これは意図的に狙うのが格段に難しいタイプの話だ。イミダゾールは合成的に安く踏み慣れたSAR領域だし、フラットなPKこそ持続的な標的カバレッジを実現する本当のご褒美だ。
Discovery of INCB127443: A Potent and Orally Available Inhibitor of Cyclin-Dependent Kinase 2 ↗
アルツハイマー病の神経炎症に挑む、脳移行性を高めたDYRK1A阻害剤
- アザインドール-キナゾリン骨格を持つ先行リード化合物を出発点とし、その脳血液関門透過性の低さという課題に取り組んだ。
- P糖蛋白質による排出を受けやすいアミノ基の水素結合供与能を、分子内環化戦略によってマスクした。
- 得られた類縁体はDYRK1A阻害活性を維持しつつ、脳内移行性を大幅に改善した。
- 最適化化合物は、疾患関連モデルにおいてミクログリア由来の神経炎症マーカーを低減した。
分子内環化で水素結合供与体をマスクしP糖蛋白質を回避するのは使い古された脳移行性の常套手段だが、アザインドール-キナゾリン骨格上でDYRK1A活性を落とさずにそれをやり遂げるのは、多くのエフラックス対策プログラムが失敗する部分だ。ミクログリア由来の神経炎症指標が別モデルでも再現されれば、他のP糖蛋白質律速キナーゼプログラムにも転用できる本当に有用なテンプレートになる。
CK1δを標的とする新規デグレーダー、NRAS変異型メラノーマの増殖を抑制
- CK1δが発癌性NRASの安定化に寄与する上流因子であるという知見に基づき、研究チームはCK1δのプロテアソーム分解を誘導する低分子デグレーダーを開発した。
- 化学最適化は、キナーゼドメインが酷似する近縁パラログCK1αおよびCK1εに対する選択性を獲得することに重点を置いた。
- 合成した化合物シリーズに対する反復的な構造活性相関(SAR)解析により、分解活性、アイソフォーム選択性、細胞内活性のバランスを図った。
- CK1δを分解することで発癌性NRASタンパク質の安定化への支援が失われ、メラノーマ細胞内でNRASレベルが低下し下流シグナルが減弱した。
- NRAS変異型メラノーマ細胞モデルにおいて、最適化されたデグレーダーは増殖を抑制し、これまで創薬が困難だった発癌ドライバーに対する新たな治療戦略としてCK1δ分解の可能性を示した。
CK1δ/α/εの選択性こそが本当の勝負どころだ。あれだけキナーゼドメインが似ていると、従来のATP競合型化合物では太刀打ちできないことが多い。それでも分解剤でこの選択性を実現しているなら、単純な結合親和性ではなく三者複合体(ターナリーコンプレックス)の形状が選択性を生んでいる可能性が高く、それこそが阻害剤ではなく二機能性分子を選ぶ理由そのものだ。真に創薬困難な標的に、イベント駆動型の薬理学でうまく切り込んでいる点も評価したい。NRASにはG12Cのような共有結合ハンドルがないので、上流の安定化因子を叩き落とすのは奇策ではなく正攻法の迂回策と言える。とはいえ実際のケミオタイプとE3リガンドが見えるまでは手放しには喜べない。「合成シリーズ、反復的SAR」というだけでは骨格の新規性も合成の難易度も分からないし、これほど基質の多いキナーゼを分解するとなると、CK1α以外の経路にも波及する毒性が気になる。選択性とPKがin vivoでも保たれるなら、他の「安定化因子」標的――創薬困難なオンコプロテインを支えているタイプの標的――にも応用できるテンプレートとして狙う価値がある。
GSKがHUTCHMEDの新規KRAS-EGFR抗体標的治療複合体「ATTC」HMPL-A830を導入、契約総額は最大約13億ドル
- HUTCHMEDとGSK子会社は、ファースト・イン・クラスのKRAS-EGFR抗体標的治療複合体(ATTC)であるHMPL-A830について、独占的な開発・ライセンス契約を締結した。
- HMPL-A830は、高い選択性と効力を持つ低分子KRAS阻害剤ペイロードを抗EGFR抗体に結合させたもので、EGFR発現腫瘍細胞に選択的に薬剤を送達しつつEGFRシグナルも阻害する。
- GSKは中国本土・香港・マカオ・台湾を除く全世界での開発・商業化権を取得し、当該地域の権利はHUTCHMEDが保持する。
- 契約条件は、契約一時金1億1000万ドル、開発・規制・商業化マイルストーン最大12億9500万ドル、および売上高に応じた段階的ロイヤリティ。
- HUTCHMEDが世界的な第1相開発プログラムを実施予定(2026年後半開始見込み)で、以降の臨床開発と商業化はGSKが担う。
- 初期の臨床開発対象は大腸がん、膵臓がん、肺がん。
自社創薬ではなく中国発資産のライセンスインでパイプラインを埋める——GSKもHUTCHMEDの資産を狙うADC/コンジュゲート案件ラッシュに加わった格好だ。契約条件が物語る通り、契約時一時金1.1億ドルは総額最大12.95億ドルの約8.5%に過ぎず、確信はあるものの慎重に保険をかけた、前臨床/フェーズ1資産としては典型的な条件設定。GSKが今払っているのはあくまで「オプション権」で、本命の支払いは臨床データ次第だ。EGFR抗体に低分子KRAS阻害ペイロードを載せたATTCという設計は、飽和気味のKRAS阻害剤競争の中で明確な差別化軸であり、従来型の細胞毒性ADCの毒性プロファイルを回避しつつ腫瘍選択的送達を実現する。そしてHUTCHMEDが大中華圏の権利を留保した点は、「域外はライセンスアウト、自国は自社で商業化」という同社お馴染みの戦略を改めて示している。
GSK to license Hutchmed's KRAS-EGFR cancer drug for $110M upfront ↗
野生型を温存するPI3Kα H1047R選択的阻害剤、キナゾリノン系化合物から同定
- HR+/HER2−でPIK3CA変異陽性の乳がんに承認されているPI3Kα阻害薬は、野生型PI3Kαの阻害に伴う高血糖などの有害事象により、用量が制限される。
- 研究チームは、がん化変異体PI3Kα H1047Rを選択的に阻害することを目的としたテトラ置換キナゾリン-4(3H)-オン系化合物を設計した。
- 野生型に対する変異体選択性は、遅いon/offの結合速度論的機構によるものと提案されている。
- リード化合物34は、in vitroで強力かつ変異体選択的な活性を示し、良好なADMEプロファイルを併せ持つ。
- T47D異種移植マウスモデルにおいて、化合物34は承認済みPI3Kα阻害薬と異なり、血糖値や血清インスリン値に影響を与えることなく、有意な腫瘍増殖抑制を示した。
- 著者らは、有効用量の低減と忍容性の改善に向けて、化合物34のさらなる最適化が必要であると述べている。
アルペリシブの高血糖問題は、PI3Kα SARの議論では常に遭遇する問題だ——臨床での減量の主因であり、根本は正常組織のインスリンシグナルにおける野生型阻害にある。 今回の遅いon/off速度論的選択性は、静的なポケット形状論よりもむしろ魅力的だ。H1047Rのコンフォーメーション動態の変化によってこのキナゾリノンが変異型酵素上に滞留しつつ野生型からは洗い流されるのだとすれば、それは滞留時間(residence time)の話であり、kinITCや洗い流し速度論のデータで確認したい。 テトラ置換キナゾリノン骨格自体は合成難度の高いものではなく、あのポケット周辺で大量のアナログ展開が必要なプログラムには都合がいい。血糖・インスリンへの影響なくゼノグラフトで明確な有効性を示した点は重要なプルーフ・オブ・コンセプトだが、化合物34にはさらなる有効用量低減と忍容性改善が必要と著者自らが認めている点こそ本当の見どころ——有望なプローブではあるが、まだ候補化合物ではない。
VHLリクルート型PROTAC分解剤が変異型EGFRを分解、NSCLCモデルで効果を示す
- 研究チームは、非小細胞肺癌(NSCLC)における従来のEGFRキナーゼ阻害剤への獲得耐性を克服するため、EGFRを標的としたVHLリクルート型PROTAC分解剤を設計した。
- リード化合物C4およびD4は、EGFR Del19およびL858R耐性変異体に対して強力かつ選択的で持続的な分解を達成した。
- C4は細胞周期停止とアポトーシスを誘導し、サブナノモル濃度の抗増殖活性を示し、HCC827異種移植モデルにおいて低用量の静脈内投与かつ週2回への減量投与スケジュールで顕著な腫瘍退縮をもたらした。
- D4は経口バイオアベイラビリティを有し血液脳関門を透過し、経口投与によりin vivoで腫瘍増殖を完全に抑制した。
- これらの知見は、従来の阻害ではなく分解に基づく戦略が、中枢神経系への関連性も視野に入れた次世代EGFR標的治療への道筋となりうることを支持する。
D4が経口バイオアベイラビリティと血液脳関門透過性という二つの壁を同時に越えてきたことこそ、今回の本題だ——VHLリクルート型のEGFR分解剤という化学自体は目新しくない。多くのVHLディグレーダーは分子量800~1000のPEGリンカー付きの「レンガ」で、in vitroでは華々しくても経口・CNS薬としては使い物にならない。この開発可能性の壁こそ、このクラスがずっと突き当たってきたものだ。 C4のプロファイルはむしろ従来型の静注PROTACに近い印象で、サブナノモルの抗増殖活性と低用量・週2回投与での腫瘍退縮は良好な治療域を示すが、この投与スケジュールの絞り込みは、触媒的ターンオーバーとクリアランスをまだ完全には制御しきれていないことの裏返しでもある。 Del19/L858Rを阻害ではなく分解する戦略は、オシメルチニブの効果を削ぐ二次変異による耐性を回避できる点が強みだ。in vivoで野生型EGFRに対する選択性も維持されるなら、これは単なるメカニズム実証ではなく、NSCLC向けの本物の次世代ケモタイプと言える。
抗体誘導型PROTACコンジュゲート、細胞外小胞の分泌抑制で腫瘍-間質クロストークを遮断
- 研究チームは、承認済みの抗EGFR抗体セツキシマブと改変PROTACペイロードを組み合わせた分解誘導抗体複合体「Ctx-ETAC」を開発した。両者はバイオオルソゴナル反応により、一定の制御された抗体あたりの結合比で連結されている。
- このPROTACペイロードは、インドメタシン由来のCOX-2リガンドとVHLリクルーティングペプチドを、カテプシンBで切断可能なリンカーで連結した構造を持ち、EGFR陽性の腫瘍細胞および活性化した線維芽細胞の内部で選択的に分解剤を放出する。
- 両細胞種でCOX-2を分解することにより、細胞外小胞の分泌を大幅に抑制し、腫瘍と間質をつなぐ重要なシグナル伝達経路を遮断するとともに、線維芽細胞を静止期の、腫瘍を支持しにくい状態へと誘導する。
- 肺がんの異種移植モデルでは、Ctx-ETACはセツキシマブ単剤よりも優れた腫瘍抑制効果を示し、全身毒性の増加も見られなかったことから、微小環境を標的とした分解戦略の治療的可能性が裏付けられた。
「ついに『かっこいい弾頭を積んだだけのADC』じゃないDACが来たか」——細胞毒の代わりにVHL-PROTACを積んでいるので、効果は取り込まれた抗体一本一本を力任せに毒で仕留めることに依存しない。触媒的でイベント駆動型の標的破壊が可能になる。 ターゲット選びが巧い。COX-2はがん化ドライバーではなく、間質側の「配管」だ。EGFR耐性変異を直接追いかける代わりに小胞(EV)分泌を断って腫瘍-線維芽細胞のクロストークを断つというのは、従来の「ドライバーを分解する」というSARロジックとは根本的に違う発想。 化学的には全く奇をてらっていない——インドメタシン由来COX-2リガンド、VHLペプチド、カテプシンB切断リンカー、DAR規定の生体直交結合。これがまさに狙いで、地味なまでにトラクタブルであることこそ、実際に橋渡しできるコンジュゲーション基盤の条件。 本当の勝負は、線維芽細胞リッチな耐性腫瘍でもCOX-2/EVサイレンシングが効くかどうかで、きれいなゼノグラフトだけでは分からない。とはいえ、微小環境を狙った分解戦略が「概念」から先へ成熟しつつある証拠としては説得力がある。
X線構造解析で見えた、キナーゼ阻害剤による保存触媒残基への結合様式
- 300を超えるキナーゼ阻害剤複合体のX線共結晶構造を解析し、繰り返し現れる非共有結合的な接触パターンを網羅的に整理した。
- ATPポケット近傍に存在する保存されたLys、Asp、Glu残基を「触媒クラスター残基(CCR)」と定義し、これらが触媒作用を担いつつ結合した阻害剤と頻繁に接触することを示した。
- ほとんどの阻害剤化学型において、これらの極性残基は共有結合ではなく非共有結合的相互作用を形成しており、リガンド設計における汎用的な足がかりとなり得る。
- CCRの側鎖配向はキナーゼの活性型・不活性型といったコンフォメーション状態と連動しており、結合の幾何構造が構造動態と結びついていることを示している。
- 著者らは、このコンフォメーション連動的な性質が、効力向上とキノーム全体にわたる選択性の調整を目指した合理的・構造基盤型の阻害剤設計に活用できると論じている。
「Catalytic Cluster Residues」という呼び方は目新しいが、根底にあるアイデア自体は、キナーゼ屋なら誰でも経験的に使っている手法だ――Lys-Gluのイオン対やDFG-Aspとの接触など。 今回の価値は、それを体系化した点にある。300以上の構造があれば、ヒンジ結合やバックポケットでの選択性稼ぎではなく、これら極性残基との相互作用を積極的に狙うべきタイミングを統計的に判断できる。 CCRの配座がactive/inactive状態と本当に連動しているなら、それは実用的な設計レバーになりうる――共有結合ウォーヘッドに頼らず、塩橋や水素結合でtype-I/type-IIの結合様式を作り分けられるかもしれない。システインの副反応リスクや共有結合の可逆性が気になる場面では魅力的だ。 ただ、この配座連動の主張がキノーム全体で本当に成り立つかは懐疑的だ。300構造も、サブファミリーごとに分けてみるとEGFR・ABL・CDKなど一部のスキャフォールドにPDB登録が偏っている可能性が高く、網羅性は決して十分とは言えない。
A Structural Perspective on Non-covalent Targeting of Conserved Polar Residues in Protein Kinases ↗