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神経・精神

42件

サルパリブのカルボキサミドを置換し、経口・脳移行性のPARP1選択的阻害薬を創出

  • 脳腫瘍を狙い、サルパリブのカルボキサミドを各種複素環に置き換え、血液毒性を抑えるためPARP2よりPARP1を選択的に阻害する化合物を探索した。
  • 通常のMDR1-MDCKではなくCaco-2排出を選別指標に用い、脳内の非結合型曝露が良好な化合物を選んだ。
  • 選ばれた化合物は経口バイオアベイラビリティを示し、低用量の異種移植モデルで腫瘍退縮を示した。臨床用量も低く見積もられている。
💡 ポイント

一次カルボキサミドの置換は大胆だ。この基はニコチンアミドポケットのアンカーなので、複素環で結合が保たれたのは見どころになる。もっと使えるのは選別法で、Caco-2排出のほうが脳内非結合型曝露をよく反映するなら、他のCNS創薬でも良い化合物を落としているかもしれない。

Discovery of Potent, Orally Bioavailable, and CNS-Penetrant 1,2,3-Triazolopyridinyl Piperazine-Based PARP1-Selective Inhibitors ↗

結晶構造で見る、脳移行性EGFR阻害薬が脳曝露だけでなく活性も高める理由

  • 血液脳関門透過性を高める設計がなされたEGFR阻害薬について、X線結晶構造解析と活性測定を行った。
  • BBB透過性を高める置換基はEGFRキナーゼドメインの多様な領域と相互作用し、生化学的・細胞活性は概ね向上した。
  • 塩橋を形成する部分構造と特定のハロゲン置換の組み合わせが最も有効で、「一石二鳥」の設計指針を示す。
💡 ポイント

CNS曝露と活性はたいていトレードオフなので、同じ極性・塩基性ハンドルで両方を得られるという結晶学的根拠は有用だ。塩橋とハロゲンの組み合わせは、自分のキナーゼ系列にも試せる具体的な設計則になる。ただし排出や非結合型脳内濃度には触れておらず、実際の有効性はそこで決まる。

Structural Insights into Brain-Penetrant EGFR Tyrosine Kinase Inhibitors with Enhanced Potency ↗

経口TREM2作動薬VG-3927、前臨床とヒト初回投与データで臨床へ

  • アルツハイマー病向け経口低分子TREM2作動薬VG-3927(SAR448851)の前臨床およびヒト初回投与評価を報告した論文。
  • 公開報道では、用量漸増での忍容性、中枢移行性、脳脊髄液中の可溶性TREM2マーカーの低下が伝えられている。
  • この要約は論文の掲載情報と二次報道に基づき、全文は確認できていない。
💡 ポイント

TREM2の取り組みは抗体が中心なので、脳移行性の経口作動薬がCSFの薬力学マーカーを動かしたことは、モダリティ面で注目に値する。問題は、可溶性TREM2の低下が実際の受容体活性化を反映するのかで、マーカーが動いてもミクログリア機能が変わるとは限らない。ヒト初回投与データが示すのは曝露と標的結合までで、有効性ではない。

Preclinical and first-in-human evaluation of VG-3927/SAR448851, an oral small-molecule TREM2 agonist for Alzheimer's disease ↗

静止状態と不活性化状態をほぼ同等に阻害するNaV1.7アミノピリミジンプローブ

  • 古典的な局所麻酔薬型のポア結合体を除外するよう設計した自動パッチクランプのスクリーニングで、アミノピリミジンのヒットを見出し、化合物6へ最適化した。
  • 化合物6は静止状態と不活性化状態の活性がバランスし、NaV1.5に対する選択性と、NaV1.1を含むテトロドトキシン様のアイソフォーム特性を併せ持つ。
  • SARから、アミノピリミジンコアとメチレン連結アニリンがこの特性の鍵を握ると示された。
💡 ポイント

NaV1.7計画が臨床で失敗し続ける理由として状態依存性は有力な容疑者で、静止・不活性化の両状態を等しく遮断するプローブはその仮説の検証に好適だ。NaV1.1への活性は痙攣関連の懸念材料になり得るので、プロファイルを深読みする前に結合部位の同定が欲しい。

A Nontoxin Aminopyrimidine Probe for Near State-Independent Na V 1.7 Inhibition ↗

EGFRキナーゼ阻害薬の骨格からキナーゼ活性を除き、BAX阻害薬へ転換

  • バーチャルスクリーニングで、ダコミチニブやゲフィチニブ類似骨格などのEGFR阻害薬がBAX結合候補として抽出された。
  • 系統的な構造修飾でBAX阻害のSARを構築し、EGFRキナーゼ活性を大きく低減した。
  • この系列は、試験管内・細胞・iPS由来脳オルガノイドでBAX阻害の改善を示し、薬物様性も良好だった。
💡 ポイント

BAXのような実行因子を阻害するのは難しく、実績あるキナーゼ骨格から出発するのは現実的だ。ただ勝負はEGFR活性が十分に消えているかで、キナーゼにも効く細胞保護薬は神経保護薬として使いにくい。BAXへの直接結合を示す直交的な証拠と、より広いキナーゼパネルでの確認が欲しい。

Discovery of Anti-apoptotic BAX Inhibitors ↗

GTA182:MTAP欠失腫瘍向けの脳移行性MTA協調型PRMT5阻害薬

  • 構造ベース設計と多パラメータ最適化により、MTAP欠失細胞を野生型より強く選択的に抑える三環性アミドGTA182が得られた。
  • 低い排出と調整された物性により、有効域に入る非結合型脳内濃度が確保された。
  • 経口投与でMTAP欠失異種移植モデルと同所性膠芽腫モデルで腫瘍退縮を示し、第I相でも忍容性は良好で頭蓋内腫瘍の縮小が報告された。
💡 ポイント

MTA協調型PRMT5阻害薬は競合が多く、差別化の決め手は脳内曝露だ。膠芽腫ではMTAP欠失が多いのに、多くの競合薬は腫瘍に届かない。創薬化学の論文に臨床データまで載るのも珍しい。次に見たいのは、このクラス共通の弱点である血液毒性と、頭蓋内での効果がどこまで非結合型濃度で説明できるかだ。

Discovery of GTA182, a Novel CNS-Active Tricyclic Amide MTA-Cooperative PRMT5 Inhibitor for MTAP -Deleted Cancers ↗

HTS基盤でtauとLRP1受容体の結合を阻害する低分子を同定

  • 精製したLRP1リガンド結合ドメイン4を軸に、蛍光偏光、スプリットルシフェラーゼ、TR-FRETからなる定量的アッセイ群を構築した。
  • tau、RAP、ペプチドリガンドは重なる結合部位を競合し、いずれの形式でもナノモル域の親和性が観察された。
  • このプラットフォームのスクリーニングで相互作用を阻害する低分子が見つかり、tauの取り込みと伝播を抑える出発点となる。
💡 ポイント

受容体の細胞外ドメインとのタンパク質間相互作用は難標的で、3種の直交アッセイでアーティファクトを除くやり方は妥当だ。ヒットは、細胞でのtau取り込み阻害を示し、ApoEなどLRP1の他のリガンドへの広範な影響が無いと確認されるまで慎重に見たい。

High-Throughput Screening Identifies Small-Molecule Inhibitors of the Tau-LRP1 Interaction ↗

シンコナアルカロイド由来アンモニウム塩が長時間・感覚選択的な神経ブロックを実現

天然物神経・精神イオンチャネル
  • 天然物シンコナアルカロイドを母核とするアンモニウム塩を局所麻酔薬として検討し、二環性のキンコリジン骨格が非環状・単環状類縁体より優れていた。
  • リード化合物CLA-1-3はラット坐骨神経を50時間以上遮断し、電位依存性ナトリウムチャネルを強力に阻害した。
  • 別の化合物CLA-3-5は0.30〜0.60%の濃度で最大約3時間続く感覚選択的な遮断を示した。
💡 ポイント

見出しは作用時間だが、より興味深いのは常時荷電したアンモニウムという設計だ。投与部位からの洗い流しが遅くなり、長時間作用の理由になっていそうだ。ただ50時間を超える遮断なら、有効性より先に局所の神経毒性・筋毒性のデータを見たい。

Cinchona Alkaloids-Derived Ammonium Salts for Long-Acting and Sensory-Selective Nerve Blockades ↗

二環式アミンへの置換でインダゾール系LRRK2阻害薬のG2019S選択性が拡大

  • 構造ガイドのハイブリッド化でインダゾール系LRRK2シリーズを構築。初期のピペリジン体は高活性だが、野生型とG2019S変異体の差がほとんどなかった。
  • ピペリジンをオクタヒドロシクロペンタ[c]ピロールに置換すると、活性を保ったまま選択性の幅が拡大。化合物34がこの新規ケモタイプを代表する。
  • 著者らは、次世代のパーキンソン病向けLRRK2阻害薬に向けた新たな出発点と位置づけている。
💡 ポイント

柔軟なピペリジンを縮環二環に固定するのは選択性を磨く定石で、今回は成功したようだ。ただ炭素骨格が増えた分の脂溶性と脳移行性のコストは入れ込む前に確認したい。CNS標的はどちらにもシビアだ。変異体優先の選択性が酵素アッセイだけでなく細胞でも保たれるかも要確認。

Discovery of G2019S Mutant Selective LRRK2 Inhibitors Based on an Indazole Octahydrocyclopenta[c]pyrrole-Based Hybrid Chemotype ↗

NeurocrineのPrader-Willi症候群治療薬Vykat XR、患者団体が安全性への懸念を強める

  • STATは、NeurocrineのPrader-Willi症候群治療薬Vykat XR(ジアゾキシドコリン)のリスクをめぐり、患者支援団体や一部の専門家の懸念が強まっていると報じた。
  • 先行報道では、市販後報告での体液貯留や呼吸器・心臓イベントが論点だが、因果関係は確立していない。
  • Neurocrineはベネフィット・リスクは良好との見解を維持し、FDAや患者団体と連携しているとしている。
💡 ポイント

これは発売後の立ち上がりカーブの話だ。Neurocrineはブロックバスター候補としてVykat XRに大金を投じており、小さく脆弱な患者集団での処方医の慎重姿勢は、規制措置よりずっと早く浸透を鈍らせうる。鍵は添付文書の変更の有無と、2027年に計画されるリスクの高い患者での試験が安心材料になるかだ。

STAT+: Concerns grow on safety issues tied to Neurocrine Biosciences rare disease drug ↗

ドネペジル由来のBuChE/FAAHデュアル阻害薬をアルツハイマー病向けに設計

  • ドネペジルを基にした誘導体を設計・合成し、ヒトブチリルコリンエステラーゼとFAAHの二重阻害薬として評価した。
  • リード化合物G15は両酵素をバランスよく阻害し、活性はサブマイクロモルからマイクロモル域だった。
  • セリン加水分解酵素阻害薬で問題になりやすいカルボキシルエステラーゼCES1/2に対しても一定の選択性を示した。
💡 ポイント

二重標的ハイブリッドで両酵素にバランスよく効かせるのは難しく、G15は有用な出発点になる。ただしカルボキシルエステラーゼへの選択性は控えめで、多標的という狙いを信じるにはin vivoの曝露データが欲しい。

Design, Synthesis and Evaluation Donepezil-Based Dual BuChE/FAAH Inhibitors for Alzheimer's Disease Therapy ↗

インダゾールと二環式ピロリジンのハイブリッド骨格で変異体選択的LRRK2阻害薬を探索

  • インダゾールとオクタヒドロシクロペンタ[c]ピロールを構造指針で組み合わせ、パーキンソン病向けの新しいLRRK2阻害薬骨格を得た。
  • 初期のピペリジン含有アナログは高活性だったが、野生型とG2019S変異体の区別はほとんどつかなかった。
  • ピペリジンを縮環二環式アミンに置き換えることで、この選択性の幅を広げようとした。
💡 ポイント

野生型とG2019S変異体の差が小さいことはLRRK2リードが行き詰まる典型的な理由で、変異体への偏りを生む骨格変更は注目に値する。細胞内の生理的ATP濃度でもその偏りが保たれるか、二環式アミンが脳移行性とクリアランスにどう影響するかを見たい。

Discovery of G2019S Mutant Selective LRRK2 Inhibitors Based on an Indazole Octahydrocyclopenta[c]pyrrole-Based Hybrid Chemotype ↗

ViatrisがPacira BioSciencesを約16.5億ドルで買収、非オピオイド疼痛領域を強化

  • Viatrisは1株36.50ドルの全額現金でPacira BioSciencesを買収することで合意。直近終値に対するプレミアムは約45%。
  • 狙いは、術後疼痛用のEXPARELと膝OA疼痛用のZILRETTAという非オピオイド製品群、および膝OA向け遺伝子治療候補。
  • クローズは2026年末までの見込みで、資金は主に手元資金で賄う。
💡 ポイント

Viatrisが買うのは科学というより販売中の疼痛フランチャイズで、ジェネリックからブランド収益へ軸足を移す流れに沿っている。FDAの判断待ちの速効性メロキシカムと組み合わせれば非オピオイド疼痛向けの営業基盤が見えてくるが、EXPARELへのジェネリック型競合が長期のリスクだ。

Viatris to snap up Pacira's non-opioid pain pipeline for $1.65B ↗

結合速度論を活用してHDAC2選択的阻害薬KTT-1を発見

  • 酵素と阻害薬の結合について熱力学だけでなく速度論も評価することで、HDAC2選択的阻害薬KTT-1(化合物12)を見いだした。
  • HDAC2との複合体のX線結晶構造とモデル化合物の量子化学計算から、2-フラニル基が選択性に寄与すると考えられる。
  • 細胞では高度に相同なHDAC1よりHDAC2を優先的に阻害して神経突起伸長を促し、ストレス脆弱性マウスでは記憶とうつ様行動を改善した。
💡 ポイント

HDAC1/2の活性部位はほぼ同一だが、IC50だけでなく滞留時間で選別すれば突破口になる。フラニル基の寄与が結晶構造とQMの両面から裏づけられているのも検証しやすい。細胞でHDAC2優先を示す例は珍しく、脳内曝露を伴うニューロンでの再現を見たい。

Discovery of an HDAC2-Selective Inhibitor via Enzyme−Inhibitor-Binding Thermodynamics/Kinetics as a Prospective Neurological Disorder Drug ↗

DELヒットから脳移行性の可逆的MAGL阻害薬MAGLi 432へ

  • DNAエンコード化合物ライブラリー(DEL)由来のビシクロピペラジン系ヒットを構造ベースで最適化し、可逆的MAGL阻害薬である化合物1.5(MAGLi 432)に到達した。
  • 高い活性、他のセリンヒドロラーゼに対する選択性、CNS創薬に適した性質を兼ね備え、ラットでの経口半減期も良好だった。
  • ヒト脳ホモジネートでMAGLを阻害し、マウス神経炎症モデルでも有効性を示した。最適化はトランスレーショナルな「Five-Star Matrix」の枠組みで進められた。
💡 ポイント

慢性投与でCB1の脱感作に悩まされた不可逆型MAGL薬を思えば、まず注目すべきは可逆性だ。非共有結合のDEL由来ケモタイプでヒト脳組織でも標的結合を確認できているのは良い雛形で、ヒト組織での評価を終盤でなく早期に回す習慣は真似したい。

Translational Application of the Five-Star Matrix for the Structure-Guided Optimization of a Bicyclopiperazine DEL Hit into Bcpz 1.5: A Potent Monoacylglycerol Lipase Inhibitor with Functional Inhibition in Human Brain Homogenate and Efficacy in Neuroinflammatory Models ↗

ラノステロール誘導体を最適化、BBBを透過しADマウスでAβ蓄積を抑制

天然物神経・精神
  • ラノステロールは凝集抑制作用を持つが物性とPKが乏しいため、3位水酸基と脂肪族側鎖まわりの親水・疎水バランスを調整した。
  • 系統的なスクリーニングで化合物10を見いだし、代謝安定性と物性が大きく改善した。
  • 化合物10の経口投与は、アルツハイマー病モデルマウスで記憶障害を回復させ、Aβ蓄積を減少させた。
💡 ポイント

天然物ステロールが最初のPK評価を越えるのは稀で、3位水酸基と側鎖の極性調整で経口のCNS曝露を得た点は参考にしたい。気になるのは作用機序で、単一マウスモデルの有効性は過大評価しやすく、標的への結合実証とステロール経路へのオフターゲット影響のデータが欲しい。

Discovery of a BBB-Penetrant Lanosterol Derivative as an Aβ Aggregation Inhibitor for Alzheimer’s Disease ↗

GenentechがAlectorに前払い1億ドル、脳移行型GCase療法AL050を導入

  • Alectorは、前臨床段階の脳移行型改変GCase酵素補充療法AL050(パーキンソン病向け)をGenentechにライセンスした。
  • 契約は前払い1億ドル、最大11.7億ドルのマイルストーンと段階的ロイヤルティで、開発・製造・商業化はGenentechが担う。
  • AlectorはBrain Carrierプラットフォームを保持し、資金は2029年まで持つ見通しとなった。
💡 ポイント

前臨床資産に前払い1億ドルというのは、GBA1関連パーキンソン病でRocheが実証済みの血液脳関門シャトルをいかに評価しているかを示す。Alectorにとってはアルツハイマー病やsiRNA計画を支える命綱だ。ただ本当の賭けは酵素より送達技術で、Genentechには他のシャトルという選択肢もある。

Genentech pays Alector $100M for preclinical Parkinson's prospect ↗

OGG1の触媒を切り替える「有機触媒スイッチ」がミトコンドリアを保護

  • OGG1ではこれまで阻害薬の研究が中心だったが、本研究はミトコンドリアに濃縮するORCAで酵素の触媒そのものを再プログラムする。
  • 生化学、変異解析、X線結晶構造により活性部位への結合が確認され、グリコシラーゼ活性よりβ脱離を優先的に促進した。
  • ORCAは酸化ストレス下のミトコンドリア機能を保護し、皮質ニューロンのNADを高め、網膜軸索切断モデルでも神経保護を示した。
💡 ポイント

酵素を阻害でなく活性化する例はまれで難しく、作用機序を示す結晶構造があることが説得力を生んでいる。課題は長期安全性だ。修復酵素の触媒結果を変えれば想定外のDNA損傷を生む恐れがあり、神経保護のデータもまだ初期段階である。

Development of Organocatalytic Switches of OGG1 that Protect Mitochondria under Oxidative Stress ↗

MicroEDで絶対配置を確定したキナゾリン系Nav1.7阻害薬、げっ歯類で経口鎮痛効果

  • ライブラリー由来の弱いキナゾリンヒットから約20誘導体のSARを進め、Nav1.5に対する選択性を備えたサブマイクロモル活性のキラルリードを得た。
  • 絶対配置はMicroEDで決定され、大きな結晶なしに活性エナンチオマーが明確になった。
  • 経口曝露は許容範囲で、2種のげっ歯類疼痛モデルで効果を示し、44標的のオフターゲット試験もクリーン。Nav1.7ノックアウト神経細胞対照も標的特異性を支持する。
💡 ポイント

Nav1.7は選択性とトランスレーションで多くのプログラムが躓いてきた標的なので、まず見るのはオフターゲットの清潔さとノックアウト細胞での対照だ。ただ活性はまだ控えめで必要用量も高く、候補ではなく出発点の骨格と見るべきだろう。実務的な収穫はMicroEDで、初期リードのキラリティーをナノ結晶から決められればエナンチオマー探しの数週間を節約できる。

Discovery of a Quinazoline-Based Nav1.7 Inhibitor with MicroED-Confirmed Absolute Configuration and Oral Efficacy in Rodent Models of Neuropathic Pain ↗

加齢で亢進するトランスサイトーシスを利用、ROS応答型DAPK1分解薬を脳へ送るBmTAC

  • 神経変性疾患での分解薬は脳への送達が最大の壁であり、BmTACは加齢で亢進する脳血管内皮のカベオラ介在トランスサイトーシスを利用する大環状ペプチド・シャトルを搭載する。
  • VHLリガンドに付けた活性酸素種応答性のケージにより、ROSの高い組織に到達するまでPROTACは不活性に保たれる。
  • 活性型DAPK1を老化した脳で選択的に除去することを狙ったプラットフォームである。
💡 ポイント

侵入用のシャトルと活性化用のROSケージという二重のゲートは巧みな設計だが、課題は医薬化学からコンジュゲートのCMCやPKへ移る。末梢でケージが外れたPROTACの割合と、シャトルが老化した内皮の性質に依存する点(患者の適用範囲を狭めうる)は厳しく見たい。in vivoデータが堅ければ、CNS向け分解薬として確かな一歩だ。

Blood-Brain Barrier-Permeable Macrocyclic Chimeras (BmTACs) for Targeted Protein Degradation in the Aging Brain ↗

アッヴィの経口薬タバパドン(Juvmo)、パーキンソン病でFDA承認取得

  • FDAはアッヴィの1日1回服用の経口薬「Juvmo(タバパドン)」をパーキンソン病成人患者向けに承認した。早期病期では単独で、運動症状の変動がある患者ではレボドパとの併用で使用できる。
  • 同薬は選択的D1/D5ドーパミン受容体部分作動薬として承認された初の薬剤で、D2/D3受容体を標的とする従来のドーパミン作動薬とは異なる作用機序を持つ。運動症状を抑えつつ、衝動制御障害や突発的な眠気のリスクを抑えることを目指している。
  • アッヴィは2023年のセレベル・セラピューティクス買収によりタバパドンを獲得した。米国での発売は2026年10月を予定している。
💡 ポイント

AbbVieにとっては87億ドルのCerevel買収が初めて形になった成果であり、単なる寄せ集め買収ではなかったことの証明だ。とはいえ新規性だけではシェアは動かない。パーキンソン病の処方は固定化しやすく、ジェネリックが主流で、神経内科医は安定した患者の薬を変えたがらない。副作用プロファイルの優位性は現実的な突破口だが、フォーミュラリーの慣性を超えて主流になれるかは、今後の課題だ。

AbbVie wins FDA nod for Parkinson's pill ↗

複素環リンカーで設計した中性・脳脊髄液移行性TTR安定化剤

  • 複素環リンカーを持つ中性のトランスサイレチン(TTR)安定化剤群を報告し、脳および脳脊髄液(CSF)への移行性向上を狙って設計されている。
  • タファミジスなど既存の酸性安定化剤は脳内移行性が限られており、遺伝性ATTRアミロイドーシスの中枢神経系(CNS)・軟膜病変への対応を目指す。
  • 複素環リンカーの導入により従来の化学構造と比べて酸性度を低減しつつ、in vitroでのTTR四量体安定化活性と選択性を維持したと報告されている。
💡 ポイント

やっと来たか——酸性ファーマコフォアとP-gp排出のトレードオフに正面から挑む話。タファミジスのCNS曝露の弱点をただ我慢するのではなく。カルボン酸を捨てて複素環リンカーに置き換えながら四量体安定化力を維持するのは、このSARで一番難しい部分だ。in vivoでCSF移行性が確認されれば、軟膜 ATTR患者にようやく本物の選択肢ができる。

Discovery of Neutral and Cerebrospinal Fluid Penetrant Transthyretin (TTR) Stabilizers with Heterocyclic Linkers ↗

脳移行性の共有結合型BChE阻害剤、アルツハイマー病モデルで認知機能改善効果

  • 研究チームは構造誘導型設計を用い、アルツハイマー病の進行に関与するとされるヒトブチリルコリンエステラーゼ(BChE)を標的とする共有結合型低分子阻害剤を開発した。
  • リード化合物は血液脳関門透過性を高めるよう設計されており、中枢作用型コリンエステラーゼ阻害剤における主要な課題に対応している。
  • in vivo試験では認知機能改善効果が示され、共有結合型BChE阻害がアルツハイマー病の治療戦略として有望であることが支持された。
💡 ポイント

病期が進むとBChEが上昇し、AChEが低下するという知見が、ついにAChE一辺倒の定説から研究を前進させている。ただ、AChEなど近縁パラログの多いセリン加水分解酵素ファミリーに共有結合ウォーヘッドを当てるなら、効力データだけでなく厳密な選択性データが必要だ。リバスチグミン系の可逆的阻害薬と実際に一線を画すのはCNS移行性——脳への到達は従来ずっと解決できていなかった課題だ。

Structure-Guided Design of a Brain-Penetrant Covalent Inhibitor of Human Butyrylcholinesterase with In Vivo Procognitive Efficacy ↗

フラグメント成長法による天然由来システインスルホキシド系BACE-1阻害剤の最適化

  • アリインは、BACE-1の触媒二残基をキレートする天然のシステインスルホキシドだが、薬物動態が乏しく、そのままでは医薬品候補としての利用が難しい。
  • 研究チームは、この骨格を出発点として、分子動力学シミュレーションに基づくフラグメント成長法を用い、親和性と薬物様特性の向上を目指した。
  • 現時点では初期段階の計算・フラグメントベースの最適化検討にとどまり、検証済みの臨床候補化合物ではない。
💡 ポイント

アリインのような食品由来フラグメントから出発するのは魅力的だ——毒性クリアランスは期待でき、キラリティーもタダで手に入る——が、BACE-1は生化学的にはきれいでも、臨床では有望な結合剤が次々潰れてきた墓場だ(verubecestat、lanabecestat、atabecestatはいずれも安全性・有効性で失敗している)。フラグメントを計算だけで伸長するのは簡単な部分にすぎない。SPRやITC、結晶構造でMDのポーズを裏付けるデータが出てこない限り、この親和性向上は仮説であって結果ではないと見ておきたい。

Optimizing Affinity and Pharmacokinetics of a Cysteine-sulfoxide Derivative as Potential Inhibitor of BACE-1 using Fragment Growing and Molecular Dynamics ↗

アルケルメスのオレキシン作動薬、ADHDに早期有望データ

  • アルケルメスは、オレキシン2受容体作動薬ALKS 7290の第1b相試験で、成人ADHD患者を対象とした良好なトップラインデータを報告した。高用量群では2週間後に症状スコアが大幅に改善し、忍容性も良好だった。
  • 認知機能検査やEEGベースのバイオマーカーでも、処理速度、作業記憶、持続的注意力の改善が確認された。
  • 第2相試験が現在進行中で、データは2027年に得られる見込み。
💡 ポイント

オレキシン作動薬はこれまでナルコレプシー治療薬(武田、Axsome)の文脈で語られてきたが、アルケルメスは同じ作用機序をADHD領域の覚醒・認知改善薬として転用してみせた。対象は刺激薬とQelbreeのような非刺激薬が支配する市場だ。第1b相の症例数は少なく2週間データに過ぎないが、EEGバイオマーカーの改善は症状スコア単独よりも説得力を持たせている。

Alkermes' orexin agonist shows potential to treat ADHD in early-stage trial ↗

テリックス、ノバルティスに挑む放射性医薬品企業ITMを16.5億ドルで買収

放射性医薬品がん神経・精神M&A
  • テリックス・ファーマシューティカルズは、ドイツのITMを買収することで合意した。契約総額は前払い16.5億ドルに加え、主力放射性医薬品候補の承認・売上目標達成に応じて最大7億ドルのマイルストーン支払いを含む。
  • この統合により、テリックスの診断事業とITMのルテチウム177供給網が結びつき、神経内分泌がん領域でノバルティスの「ルタテラ」と直接競合する体制が整う。
  • テリックスはITMの負債の一部も引き継ぐ見込みで、両社は2026年末までの取引完了を見込んでいる。
💡 ポイント

前払い16.5億ドルに加えマイルストーン最大7億ドル、負債引き継ぎを含めた総額は24億ドル近くに達する。テリックスは事実上、ノバルティスがAAAやエンドサイト買収で使った戦略――分子ではなく同位体供給網ごと買う――を後追いしている。ITMのルテチウム177製造網とテリックスの診断事業規模を組み合わせることこそ、ルタテラの神経内分泌がん市場寡占に挑む唯一の現実的な道だ。

Telix beams into Novartis' territory with $1.6B ITM acquisition ↗

アルツハイマー病の神経炎症に挑む、脳移行性を高めたDYRK1A阻害剤

  • アザインドール-キナゾリン骨格を持つ先行リード化合物を出発点とし、その脳血液関門透過性の低さという課題に取り組んだ。
  • P糖蛋白質による排出を受けやすいアミノ基の水素結合供与能を、分子内環化戦略によってマスクした。
  • 得られた類縁体はDYRK1A阻害活性を維持しつつ、脳内移行性を大幅に改善した。
  • 最適化化合物は、疾患関連モデルにおいてミクログリア由来の神経炎症マーカーを低減した。
💡 ポイント

分子内環化で水素結合供与体をマスクしP糖蛋白質を回避するのは使い古された脳移行性の常套手段だが、アザインドール-キナゾリン骨格上でDYRK1A活性を落とさずにそれをやり遂げるのは、多くのエフラックス対策プログラムが失敗する部分だ。ミクログリア由来の神経炎症指標が別モデルでも再現されれば、他のP糖蛋白質律速キナーゼプログラムにも転用できる本当に有用なテンプレートになる。

Brain Penetration Optimization and Anti-neuroinflammation Evaluation of Potent 6-Methyl-7-azaindol-3-yl-quinazoline DYRK1A Inhibitors for Alzheimer's Disease ↗

アルケルメス、オレキシン作動薬ALKS 7290の第1b相試験でADHDに対する良好な結果を報告

  • 第1b相試験では、健常人ボランティア88人とADHD成人50人を対象に、既存のADHD治療薬を2週間ウォッシュアウトした後、ALKS 7290 20mg、50mg、またはプラセボを14日間投与しランダム化した。
  • 参加者のベースラインAISRSスコアの中央値は約39点(中等度~重度)であったが、14日目までに報告された中央値の低下幅は20mg群で14.0点、50mg群で19.0点となり、高用量群のスコアは軽度の範囲まで改善した。
  • 改善は6日目という早期から認められ、不注意・多動衝動性の両サブスケールに及んだ。CGI-Sスコアの中央値低下幅は20mg群で1点、50mg群で2点だった。
  • 忍容性は全体的に良好だった。
  • オレキシン2受容体作動薬がADHD症状の改善を示した臨床的エビデンスとしては初めてであり、この薬剤クラスはこれまでナルコレプシーなど稀な睡眠障害向けに研究されてきた。
  • アルケルメスは今回の結果を検出力を確保した有効性評価ではなく探索的な概念実証と位置付けており、既に進行中の第2相試験の用量設定を裏付けるものだとしている。
💡 ポイント

ADHDの分野で本当に新しい作用機序が出てくることは稀であり、商業的価値は非常に大きい――これはオレキシン2受容体作動薬(もともとナルコレプシー向けに開発された経路)がADHDの中核症状を改善しうることを示す初めての臨床シグナルであり、市場は依然として何十年も前からある刺激薬の化学と、アトモキセチンやビロキサジンといった物足りない非刺激薬に支配されている。もしこの結果が再現されれば、これほどの効果量を持ち、かつ規制物質としての制約を伴わない非刺激薬は、刺激薬系の既存薬に対する真の切り込み材料になり得る。ただし注意点もある――対象はADHD患者わずか50例、検出力を持たないフェーズ1b試験であり、Alkermes自身も探索的なプルーフ・オブ・コンセプトと位置づけている。今回のような大幅なAISRSスコアの低下は、プラセボ対照で検出力を備えたフェーズ2の結果が出れば消えてしまうことも珍しくない。Alkermesにとっては、ナルコレプシー(ALKS 2680)にとどまらないオレキシン2フランチャイズの二の矢であり、プラットフォームリスクをより大きな適応症へと分散させる動きでもある。投資家は、フェーズ2データが出るまでこれをカタリストではなくコール・オプションとして扱うべきだろう。

Alkermes' orexin agonist shows potential to treat ADHD in early-stage trial ↗

新規ベンゾイミダゾール-テトラヒドロフラン系、強力かつ選択的なNaV1.8阻害薬リードを創出

  • NaV1.8阻害は臨床で検証された非オピオイド鎮痛戦略であり、上市薬VX-548(Journavx)がベンチマークとなっている。同薬のヒトおよびラットでの代謝経路はよく特徴づけられている。
  • 研究チームは2-(2-ベンゾイミダゾール)置換テトラヒドロフランという新規化学構造を設計し、構造に基づく最適化によってVX-548の既知の代謝上の弱点を回避しつつ、ナノモルレベルのNaV1.8活性とサブタイプ選択性を維持した。
  • 得られたリード化合物31はラットで良好な経口バイオアベイラビリティを示し、血漿AUCはVX-548の10倍以上に達し、in vivoでの強い鎮痛効果も確認された。
  • 薬物動態プロファイルは種を超えて一貫しており、ビーグル犬およびカニクイザルでも良好な結果が得られた。
  • 化合物31は遺伝毒性なし、hERG阻害も弱いという良好な初期安全性プロファイルを示し、代謝面で最適化された前臨床リードとしてさらなる評価が期待される。
💡 ポイント

これは代謝最適化の勝負どころだ、と言った方が近い。VX-548のクリアランス上の弱点はヒトとラットですでに解明されており、2-ベンゾイミダゾール-テトラヒドロフラン骨格への転換は、やみくもなSAR探索ではなく既知の弱点を狙った定向型のスキャフォールドホッピングに見える。 これこそファストフォロワープログラムを効率的に進めるやり方だ——承認済み第一号薬のADMEデータを設計仕様書として使う。ここで重要なのはラットAUCが10倍以上向上したという数字——頻回投与でも暴露にギャップが生じる化合物と、余裕を持って薬効試験に進める化合物との差を意味する。 hERGがクリーンでこの段階で遺伝毒性シグナルがないことは、トックス予算を使う前に最大の脱落リスクを潰せているということだ。THF-ベンゾイミダゾールコアは奇抜な化学ではなくスケールアップも容易——論文上の化合物ではなく、本物のバックアップ・第二世代候補に見える。

Discovery of Novel 2-(2-Benzimidazole)-Substituted Tetrahydrofurans as Potent and Selective NaV1.8 Inhibitors for the Treatment of Pain ↗

ノバルティス、lifonebartのALSプログラムを中止 第2相で主要評価項目未達

  • ノバルティスは、TREM2安定化・活性化抗体であるlifonebart(VHB937)の筋萎縮性側索硬化症(ALS)における開発を中止した。
  • この決定は、主要評価項目・副次評価項目のいずれも達成できなかった第2相ASTRALS試験の結果を受けたもの。
  • 同試験には早期ALS患者251人が登録され、主要評価項目は40週時点での人工呼吸器非装着生存とALS機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R)スコア変化の複合指標であった。
  • 今回のALSプログラム中止は、ここ1か月ほどでノバルティスが被った約4件目のパイプライン上の挫折であり、一連の臨床試験での不調の一部となる。
  • lifonebart自体を完全に断念するわけではなく、ノバルティスは別途進行中の早期アルツハイマー病を対象とした第2相試験でVHB937の評価を継続する。
💡 ポイント

1か月で4件のパイプライン挫折は単なるノイズではない——これは一度の治験失敗の話ではなく、ノバルティスの神経科学領域におけるスクリーニング基準そのものを問う話だ。フェーズ2のgo/no-go基準が甘すぎたか、あるいは根底にある生物学的仮説がライセンス交渉時の説明ほどには強固ではなかったか、いずれかだろう。 TREM2について言えば、今回のALSでの失敗だけでこのターゲットクラス全体が終わるわけではない——ミクログリア活性化を狙うターゲットは各社で結果がまちまちだ——ただし物語は適応症選択の問題へと絞られる。 本当の見どころは、ノバルティスがアルツハイマー病のフェーズ2試験を継続させている点だ。これはTREM2の生物学が成立するかどうかに対する経営陣自身の実質的な投票であり、投資テーゼを動かすのはこのデータ読み出しだ。次四半期のさらなる神経領域の整理、アルツハイマー病データのタイミング、そして他のTREM2を追うバイオテク提携先がこのターゲットクラスを見直すかどうかに注目したい。

Novartis ends ALS program after phase 2 flop, adding to R&D woes ↗