計算・AI創薬 · 計算・AI創薬 アーカイブ

計算・AI創薬 — 2026年10月

2026-10-23 1件

溶媒込みのニューラルネットワークポテンシャルで、リガンド歪みをライブラリ規模で見積もる

  • 従来の歪みエネルギー推定は気相の単一極小構造を基準にするため、溶媒を無視し、真空中で分子内静電相互作用によりコンパクトに潰れる荷電リガンドを歪めて評価する。
  • AIMNet2-CPCMは、連続溶媒中のDFTレベルのエネルギーと力で学習したニューラルネットワークポテンシャルで、中性種と荷電種を同じ枠組みで扱う。
  • GPUのバッチ推論により、スクリーニングライブラリ全体で溶媒込みの大域的極小探索が現実的になる。
  • 約8,000件のPDBリガンドでは、溶媒込みの歪みは正味電荷とともに増加し、その傾向は電荷−2まで安定している。
💡 ポイント

歪みフィルターの精度は結合していない側の基準状態で決まる。双性イオンが真空中で塩橋を作って折りたたまれるのを見たことがあれば、気相の数値が誤解を招く理由は明らかだ。ライブラリのトリアージに使える速度の、溶媒・電荷対応ポテンシャルは、ドッキング後のフィルターに実際に組み込みたい。ただし負電荷が大きい領域では信頼性が下がり、これは酸やリン酸基を持つ分子で効いてくる。

Efficient and Accurate Ligand Strain Calculations in Solution with the AIMNet2 Neural Network Potential ↗

2026-10-22 1件

コフォールディングモデルはリガンド位置が合っていてもタンパク質構造を外すことがある

  • AlphaFold3、RoseTTAFold3、Boltz-2、Chai-1の4モデルを、立体配座状態が薬理を左右するキナーゼとClass A GPCRで評価した。
  • 前向き評価とするため、4モデル全ての学習カットオフ後に公開された複合体と、比較用の既存構造1つを用いた。
  • リガンドの位置が正しいことと、周囲のタンパク質構造が正確に予測されることは、系統的に別問題であることが示された。
💡 ポイント

コフォールディング構造にドッキングする人への警告ラベルがこれだ。リガンドの姿勢がもっともらしくても、DFG状態やGPCRの活性化状態が正しいとは限らない。配座こそが本質であるII型キナーゼ阻害剤やバイアス型GPCRリガンドで特に響く。SAR設計に使う前に、既知の配座マーカーで検証すべき仮説として扱うのが無難だ。

Benchmarking Protein–Ligand Cofolding Models: Correct Ligand Placement Is Decoupled From Accurate Protein Conformation ↗

2026-10-21 1件

フラグメント相乗効果を使う遺伝的アルゴリズムでP-gp基質を非基質へ設計し直す

  • P-gpによる排出はバイオアベイラビリティやCNS曝露を制限するが、機械学習の基質分類器は具体的な設計指針に結びつきにくい。
  • SF-GAは遺伝的アルゴリズムの変異段階にフラグメント相乗効果の解析を組み込み、非基質に共起する部分構造へ置換を誘導する。
  • 評価回数を固定した比較で、GAや強化学習のベースラインと同等の最適化性能を示しつつ、合成しやすさは最も高く、採用された変異ごとに除去・挿入されたフラグメントを報告する。
💡 ポイント

実用上いちばん使えるのは、変異ごとのフラグメント報告だ。マッチドペア提案のように読めて、化学者がモデルに求める語り口になっている。最適化性能が「優れている」ではなく「同等」なので、価値は効率ではなく解釈性と合成可能性にある。実際の排出アッセイでの前向き検証が次の課題だろう。

Synergy-Guided Molecular Redesign of Predicted P-Glycoprotein Substrates toward Synthetically Feasible Non-Substrates ↗

2026-10-20 1件

MCCE計算が示す、キナーゼ阻害薬は結合時にプロトン化・互変異性状態を変えうる

  • 9種のキナーゼドメインと承認済み阻害薬18種による37の共結晶構造に、多コンフォメーション連続体静電計算(MCCE)を適用した。
  • 結合してもタンパク質の正味電荷はほぼ安定だが、阻害薬の電荷状態は頻繁に増減した。
  • 溶液中でほぼ同程度に存在する2つの互変異性体が、結合により1つに絞られ、数kcal/mol規模のエネルギー差が生じうる。
💡 ポイント

多くのバーチャルスクリーニングは、固定した1つのプロトン化状態を暗黙の前提にしている。承認薬でさえそれがkcal/molの誤差になりうるという。互変異性を起こす複素環を持つ骨格がSARで外れた挙動を示したら、ポケットを疑う前に結合状態の互変異性体を確かめたい。

Kinase Inhibitors can Change Protonation or Tautomeric State upon Binding ↗

2026-10-19 1件

CHARMM-GUIに共有結合リガンドのドッキングを自動化するWebモジュール

  • CGUI-CLDはAutoDock4を基盤とするCHARMM-GUIの新モジュールで、共有結合リガンドの準備、修飾、ドッキング計算を自動化する。
  • 知識ベースのライブラリは66種のウォーヘッドと8種のアミノ酸に対応し、反応後のリガンド構造を手作業で作る必要がなくなる。
  • 結果はブラウザ上のインターフェースで確認できる。
💡 ポイント

共有結合ドッキングは私の探索がよく止まる工程で、ウォーヘッドごとに結合付加体を作るのが面倒なため、つい勘で絞り込んでしまう。ブラウザ上で処理してくれるなら、システインポケットに対するウォーヘッド一式を午後のうちに順位付けできる。ただしスコアは反応性を捉えないので、速度論データと組み合わせたい。

CHARMM-GUI Covalent Ligand Docker as a Web-Based Molecular Docking Platform for Covalent Ligands ↗

2026-10-18 1件

ペアワイズ差分QSAR+分位点集約で、既知のポテンシーを超える予測を狙う

SAR・リード最適化AI・機械学習ケモインフォマティクス
  • 通常のQSARは訓練データより高活性な類縁体の予測が苦手で、これがまさにリード最適化の核心である。
  • 化合物ペア間の記述子の差から活性変化を学習するPD-QSARを提案し、予測を集約して用いる。
  • ChEMBL由来の約100標的で最高活性側を検証用に除外したところ、低分位点集約が平均・kNN集約、直接QSAR、Chempropを上回った。
💡 ポイント

モデルが系列内の順位付けはできても、本当に必要な高活性側で外す、というのは最適化チームの共通の悩みだ。最高活性の上位10%を除外する検証は筋が良い。ただ公開ChEMBLの分布と実際のプロジェクトのSARの崖は違うので、合成の優先順位づけに使う前に自分たちの系列で前向きに試したい。

Breaking the Potency Barrier: A Practical Recipe for QSAR Extrapolation ↗

2026-10-15 1件

構造ベース手法はDEL学習MLの分布外汎化を救えるか:ベンチマーク研究

  • 最近のNeurIPSコンペでは、DELデータで学習した上位MLモデルが分布外の化学空間に汎化できなかった。本研究は構造モデリングでそのギャップを埋められるかを検証する。
  • 生物学的に多様な3標的と複数の合成形式のDELを用い、ML、Glideドッキング、GALigandDock、Boltz-2コフォールディングを比較した。
  • MLは分布内では良好に機能し、論文の焦点は新規化学空間で各手法がどこまで持ちこたえるかにある。
💡 ポイント

ランダム分割では好成績なのに新規ケモタイプで崩れるDEL学習モデルは、DELキャンペーンから別シリーズを立ち上げようとする場面でまさに痛い目に遭う点だ。3標的は小規模なパネルだが、同一データで物理ベース手法と同条件で比較した点は有用。ライブラリが未サンプリングの骨格でMLトリアージをどこまで信頼するかの目安にしたい。

Assessing the Generalizability of Machine Learning and Physics-Based Methods with DNA-Encoded Libraries ↗

2026-10-12 1件

界面グラフニューラルネットが球状・天然変性タンパク質複合体の結合エネルギーを予測

  • FlexENNは、残基ごとに幾何情報・柔軟性記述子・配列情報を持たせた局所界面グラフ上で動くメッセージパッシング型GNN。
  • 折りたたみ型複合体用と天然変性パートナーを含む複合体用の2モデルを独立に学習し、新たにIDPデータセットを構築した。
  • ベンチマークには、微小管内のチューブリン–チューブリン界面や微小管とMAPの複合体が含まれる。
💡 ポイント

折りたたみ型複合体で学習した親和性予測器は天然変性パートナーでは崩れやすく、専用のIDPデータセットこそが実質的な貢献だ。低分子スコアリングではなくタンパク質間界面の話なので、変異やペプチドバリアントの順位付けを安定して行えるかを試したい。

FlexENN: A Graph Neural Network for Binding Energy Prediction of Globular and Intrinsically Disordered Protein Complexes ↗

2026-10-10 1件

FragDockRL:強化学習でドッキング済みコアから合成可能なリガンドを伸長

  • FragDockは、既知の反応で結合できる合成容易なビルディングブロックから分子を組み立て、あらかじめ定めたコアのポーズを拘束するテザードドッキングで評価する枠組みである。
  • FragDockRLはこれに強化学習を加え、rDockによるテザードドッキングとSMINAスコアから得た報酬で、改良型Deep Q-Networkが段階的な分子伸長を導く。
  • 受容体型チロシンキナーゼを含む、治療上重要な3つのタンパク質標的で評価された。
💡 ポイント

固定したコアから合成制約付きで伸ばしていくやり方は、実際のプロジェクトでのフラグメント展開そのもので、作れない構造を返す自由生成モデルより実用的だ。弱点はドッキング報酬が分子サイズを優遇しがちな点で、実際に合成できるか、前向き検証に耐えるかで評価したい。

FragDockRL: A Reinforcement Learning Method for Fragment-Based Ligand Design via Building-Block Assembly and Tethered Docking ↗

2026-10-08 1件

モデリング主導でデングウイルスNS4B阻害薬候補、全血清型を視野に

構造ベース設計(SBDD)ケモインフォマティクス感染症
  • 構造未解明のNS4Bについて、4血清型すべての比較モデルを作成し、耐性変異と整合する保存された膜貫通ポケットを見いだした。
  • JNJ系列阻害薬のドッキングから場ベース3D-QSARモデルを構築し、バイオアイソスターや社内化合物のスクリーニングに用いた。
  • 最有力のBNJ-495は血清型2に対し非常に強力で選択性指数も高く、保存された結合相互作用から広域スペクトルが期待される。
💡 ポイント

構造のない膜タンパク質に対し、ホモロジーモデルと3D-QSARで前向きに検証されたヒットを得た点が貴重だ。ただし「全血清型対応」を信じるには、残る3血清型での実測と、JNJ系列の課題が引き継がれていないかの確認が要る。

Structure-Guided Design of a Subnanomolar Dengue Virus NS4B Inhibitor ↗

2026-10-04 1件

DESPOT:方向性を取り入れた知識ベースのタンパク質–リガンド・スコアリング

  • 知識ベースポテンシャルは解釈しやすいスコアリング関数ですが、多くはタンパク質原子周囲の空間を等方的に扱います。
  • DESPOTは全原子の異方性ポテンシャルで、混成状態と結合環境に応じて原子を等方・軸対称・完全異方の三つに分類します。
  • 位置平均した参照状態と「空(void)」のリガンド原子型を用い、意図的に空けられた領域も表現できます。
  • 著者らは、方向性を考慮する既存手法の発展形と位置づけています。
💡 ポイント

水素結合、ハロゲン結合、π接触が必要とするのは方向性で、等方的ポテンシャルはそこをぼかしてしまいます。ドッキングポーズの選別で私が実感している弱点を、まさに突く手法です。リガンドが避ける領域を表すvoid原子型もうまい工夫です。信用する前に確かめたいのは、ベンチマークだけでなく自分の標的やデコイ集合での性能と、活性体とデコイの分離だけでなく同族系列の順位づけができるかどうかです。

DESPOT: Direction-Enhanced Scoring POTentials for Scoring of Protein–Ligand Interactions ↗

2026-10-03 1件

Scopeライブラリ:フラグメントと完成分子の間の化学空間で扱いやすいヒットを狙う

  • Scopeは、フラグメントと高度に修飾された低分子量ライブラリ化合物の中間に位置する化学空間を定義し、化合物の質、リガンド効率、選択した物性範囲を重視して、メディシナルケミストリー上扱いやすいヒットを得ることを狙う。
  • Scope環系(ring-X-ring)がこの空間を整理し、低〜中マイクロモル域の活性を目指した意図的な官能基化を導く。約1万化合物のセットは、SPR、ネイティブMS、DSF、生化学アッセイによる中程度スループットのスクリーニングに適する。
  • トリパノソーマCLK1、14-3-3/ERαの分子糊プロジェクト、SARS-CoV-2 Mproの事例では、一次ヒット率は多様性セットと同程度で、カウンタースクリーニング後のリガンド効率は優れていた。
💡 ポイント

正直、ここで惹かれるのは「すぐ手を動かせるヒット」という発想だ。フラグメントと完成度の高い化合物の間に置いたライブラリで、リガンド効率を軸に、ring-X-ring のコアが次にどこを修飾すべきかを示してくれる。1万化合物規模ならSPR、ネイティブMS、DSFで回せるので、小さなグループでも扱える。気になるのは、一次ヒット率は多様性セットと同程度でカウンタースクリーニング後のLEが良いという結果が、3標的を超えても再現するのか、そして環系の制約が新規性をどこまで狭めるのかという点だ。

The Scope Concept: Defined Chemical Space for Identifying Ligand-Efficient, Tractable Hits Applied to Drug Discovery Targets Trypanosomal CLK1, 14–3–3/Estrogen Receptor-α, and SARS-CoV-2 Mpro ↗

2026-10-02 1件

Boltz-2共折り畳みで867化合物を40に絞り込み、大半が活性を示した仮想スクリーニング

  • 共折り畳みモデルがドッキングに代わるトリアージ手段になるかを、がん関連酵素AKR1B10でBoltz-2を用いて検証した。
  • 化学的に多様な867化合物から、予測親和性と多様性フィルターで40化合物を選んだ。
  • 試験した化合物の約7割が低マイクロモル以下の阻害活性を示し、新規骨格を持つサブマイクロモル阻害薬も複数得られた。
💡 ポイント

40化合物で7割が活性というのは仮想スクリーニングとして目を引く数字だが、元のライブラリーが小さく、標的も疎水性で許容度の高いポケットを持つ酵素である点は割り引きたい。より難しい標的での再現と、同一化合物に対するドッキングのベースライン比較が見たい。それでも、評価数が現実的で新規ケモタイプも得られており、ヒット探索の手順として真似しやすい。

Efficient Discovery of Potent AKR1B10 Inhibitors Using Co-folding Model Boltz-2 ↗