アーカイブ · 2026年 · 2026年10月

2026-10-27 のダイジェスト

2026-10-27

本日は25件。メドケムは共有結合性キナーゼ阻害薬やKRAS G12C、Cyclin D1の分解誘導、薬理はPFASの毒性とChk1阻害による脊髄損傷、計算創薬はFGFR1耐性変異の動的挙動を取り上げます。業界ではESMOの結果(Rocheのdivarasib、BioNTech/DualityBio)と第3四半期のディール減速が注目です。

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メドケム

9件

Cyclin D1の折りたたみ中間体を標的に、新生タンパク質を除去

  • 査読前のプレプリント。Cyclin D1の折りたたみ過程を計算で再現し、低分子が結合できる一過性の中間体を見いだした。
  • 構造に基づいて設計した化合物がこの状態に結合し、合成されたばかりのCyclin D1を選択的に減少させた。
  • 細胞および動物モデルでCyclin D1シグナルの抑制、腫瘍増殖の抑制が示され、CDK4/6阻害薬に耐性を獲得したモデルでも効果が保たれた。
💡 ポイント

天然構造ではなく一過性のフォールディング中間体を狙うのは、Cyclin D1に典型的なポケットがないという問題を回避する巧妙な手で、デグレーダーに似た結果を別ルートで得ている点も面白い。気になるのは選択性で、他のサイクリンも中間体の特徴を共有している可能性があるし、寿命の短い状態ではSARでの検証も難しい。CDK4/6阻害剤耐性モデルでの活性は注目点だが、まず化合物構造と活性値を見たい。

Protein Folding Interference Enables Selective Cyclin D1 Degradation ↗

特許ハイライト:トリアゾロピリミジン骨格の脳移行性GCS阻害薬

  • 本稿は特許開示内容を紹介する解説記事であり、一次の実験データを報告するものではない。
  • 対象の特許は、トリアゾロピリミジン由来の類縁体をグルコシルセラミド合成酵素(GCS)阻害薬として開示し、GCS活性に関連する疾患への用途を請求している。
  • 一部の化合物は、GCS阻害において非常に高い活性を示すと記載されている。
  • 最適化された類縁体では、脳移行性、ミクロソーム安定性、良好な血漿タンパク結合が報告されている。
💡 ポイント

トリアゾロピリミジンは、見慣れたセラミド模倣型やアミン偏重のGCS阻害剤と比べてかなり珍しいケモタイプに見え、骨格の新規性は本物かもしれないし、平坦な芳香族コアは修飾もしやすい。ただ「高活性」とされるだけで数値がなく、選択性の情報もないので、エリグルスタット型やベングルスタット型の脳移行性化合物と並べて順位付けはできない。これは特許クレームであり、査読済みデータではない。

Novel Triazolopyrimidine Analogs as Glucosylceramide Synthase Inhibitors ↗

メフロキン類縁のアミノアルコールキノリン、MACに対し活性を示し既存薬と相加的に作用

  • 鳥型結核菌群(MAC)による肺感染症の治療は、自然耐性や獲得耐性のために限界があり、新たな薬剤が求められている。
  • メフロキンの類縁体としてアミノアルコールキノリン群が設計され、構造活性相関と細胞毒性の検討から、トリフルオロメチル基とピペラジン部位が重要であることが示された。
  • (R)-4cが最も高い選択性を示し、in vitroでクラリスロマイシン、リファンピシン、エタンブトールとの二剤併用では、いずれも相加的な効果が認められた。
💡 ポイント

メフロキンのアミノアルコールキノリンを作り替える発想は妥当だが、親油性のCF3と塩基性ピペラジンの組み合わせは、膜に作用するカチオン性両親媒性の細胞毒性を招きやすい典型である。選択性の幅がはっきりするまで、活性向上は割り引いて見る。(R)-4cというエナンチオマー選好は実際の標的相互作用を示唆するが、併用効果が相乗でなく相加どまりでは、レジメンに加える決め手にならない。

Synthesis, Characterization, and In Vitro Evaluation of New Amino‐Alcohol Quinolines as Promising Antimycobacterial Agents ↗

総説:KAT6A阻害薬、ツール化合物から第III相試験へ

  • 本稿は一次研究ではなく、がん治療を目指すリシンアセチルトランスフェラーゼ(KAT)阻害薬が、ツール化合物から多数の臨床候補へと進展した経緯をまとめた総説(パースペクティブ)である。
  • KAT6Aの構造生物学と、アシルスルホニルヒドラジド、[1,2,4]チアジアジン、ベンゾイソオキサゾールスルホンアミド系阻害薬の構造活性相関を概説している。
  • 最も開発が進んだKAT6A阻害薬プリフェトラスタット(PF-07248144)は2025年に第III相に入り、治験中の阻害薬の動向や臨床上の課題・機会にも触れている。
💡 ポイント

無関係な3つのケモタイプが同じMYSTファミリーのアセチルトランスフェラーゼに収束している点が面白い。アシルスルホニルヒドラジド、チアジアジン、ベンゾイソオキサゾールスルホンアミドはいずれもアセチルCoA結合部位に入っていると考えるのが自然で、SARの主戦場は活性ではなく他のMYSTメンバーに対する選択性だろう。プリフェトラスタットの第III相到達は、この極性でスルホンアミドに富む化学空間をドラッグライクに仕上げられることを示唆する。

A KATing Edge Perspective on KAT6A Inhibitors as Anticancer Agents ↗

リルゾール代謝物のヒドラジン置換でCK1δ阻害薬シリーズを構築

  • リルゾールの主要代謝物であるヒドロキシルアミン体はALSでTDP-43をリン酸化するCK1δへの阻害活性を保ったが、化学的に不安定で神経細胞毒性も示した。
  • ヒドロキシルアミンをヒドラジンに置き換えると活性が高まり扱いやすいベンゾ[d]チアゾール系列が得られ、分岐アルキル基とベンジル基が総合的に良好だった。
  • ドッキングと分子動力学計算から、ヒンジ領域のGly86との水素結合が1本増えることが活性向上の要因と示唆された。
  • 最良化合物はATP競合型で標的に直接結合し、受動的なBBB透過性とGSK3βに対する予備的な選択性を示したが、酸化ストレスモデルでは神経保護作用を示さなかった。
💡 ポイント

NHOHからNHNH2への置換は巧い一手だ。水素結合の供与・受容パターン(とGly86へのヒンジ追加接触)を保ちつつ、不安定で毒性のあるヒドロキシルアミンを回避できる。ただしヒドラジンにも反応性やMAO・アルデヒド付加体といった別のリスクがあるので、早めにキャップか環化を検討したい。標的結合を示しながら神経保護が出なかった点は、CK1δ阻害活性だけでは足りないことを示唆する。

Riluzole‐Derived Benzo[d]thiazoles as CK1δ Inhibitors for Amyotrophic Lateral Sclerosis‐Related Neurodegeneration ↗

RSV侵入阻害剤のスクリーニングヒット、再合成で偽陽性と判明

  • ハイスループットスクリーニングで得られたRSV侵入阻害剤の有望ヒットを再合成し、抗ウイルス活性を改めて評価した。
  • NMRとLC-MSの解析により、2つの化合物クラスでスクリーニング検体と再合成品の間に相違があり、不純物の関与が示唆された。
  • 著者らは、分析面・生物学面での厳密な検証の重要性を示し、他の研究者の無駄な労力を避けるため、これらの偽陽性ヒットを報告している。
💡 ポイント

典型的なHTSの落とし穴だ。2つの骨格クラスで再合成後に活性が消えたなら、本物のSARの崖ではなく、微量の反応性不純物や金属不純物を疑うのが筋だろう。侵入阻害剤の化学型は脂溶性が高く凝集しやすいことも多く、再合成品と直交アッセイの両方で一致するまで、新しい侵入阻害ヒットは疑ってかかる。

Validation of Small‐Molecule Entry Inhibitors Targeting the Respiratory Syncytial Virus ↗

共有結合性キナーゼ阻害薬の総説:EGFR、BTK、FGFR、JAK3を網羅

  • 本論文は一次研究ではなく総説であり、承認済みおよび開発中の共有結合性キナーゼ阻害薬35種を対象としている。
  • ATP結合部位近傍の非触媒性システインを標的とする4ファミリー、すなわちEGFR(Cys797)、BTK(Cys481)、FGFR(Cys488)、JAK3(Cys909)に焦点を当てている。
  • 各阻害薬について、発見の経緯、結合様式、構造活性相関、臨床適応、合成経路を整理し、オフターゲット毒性やEGFR C797Sなどの獲得耐性にも触れている。
💡 ポイント

システインは4つでも、リスクの性格はまったく違う。BTKのCys481とEGFRのCys797は検証済みのハンドルだが、C797S変異が弱点を露呈した。求核基を失えば弾頭戦略そのものが崩れるので、可逆型やアロステリックのバックアップが要る。JAK3のCys909は、ATP部位結合剤では得にくいアイソフォーム選択性をもたらしうる点で面白い。ただしアクリルアミドのキノーム全体への反応性は、依然として毒性面の懸念だ。

Small-molecule kinase-targeted covalent inhibitors till 2025: A comprehensive review of discovery, binding modes, clinical indications, and synthetic approaches ↗

キナゾリン-6-カルボニトリル系KRAS G12C阻害薬、異種移植モデルで部分的な抗腫瘍効果

  • KRAS G12C変異を持つ肺がんを対象に、キナゾリン-6-カルボニトリル骨格の共有結合型KRAS G12C阻害薬が設計・合成された。
  • 代表化合物8tは、生化学アッセイおよびH358 NSCLC細胞で高い活性を示し、ERKとAKTのリン酸化も抑制した。LCMS解析では速やかな共有結合が確認された。
  • ヒト肝ミクロソームでの代謝安定性とマウスでの経口バイオアベイラビリティはいずれも中程度で、H358異種移植モデルでは顕著な体重減少なく部分的な腫瘍抑制を示した。
💡 ポイント

また一つ、switch-IIポケット狙いのアクリルアミド系だ。アダグラシブのテトラヒドロピリドピリミジン以降、キナゾリン骨格は使い古されており、新規性は6位のカルボニトリルにかかっている。速い共有結合形成とpERK/pAKTの抑制は達成しやすい部分で、経口曝露がそれなりにあってもH358の腫瘍抑制が部分的にとどまるなら、in vivoの活性や滞留はソトラシブ級リードに及んでいないと読める。ミクロソーム安定性が中程度なのは改善可能だが、他のシステイン含有タンパク質に対する選択性は要旨からは分からない。

Design, synthesis and evaluation of quinazoline-6-carbonitrile derivatives as novel covalent KRAS G12C inhibitors for the treatment of NSCLC ↗

選択的HDAC11阻害薬PB151、脂質代謝の再編で肝細胞がんを抑制

  • 構造情報に基づく設計により、他のHDACアイソフォームに対して高い選択性を示す強力なHDAC11阻害薬PB151が得られた。
  • 肝がん細胞では標的に結合して基質SHMT2を蓄積させ、増殖を抑えアポトーシスを誘導した。
  • マウス同所性肝がんモデルへの非経口投与で、腫瘍量の減少と生存期間の延長がみられ、肝構造は保たれ明らかな毒性もなかった。
  • 作用機序として、LKB1-AMPK経路の活性化、FASNの低下、ACC1リン酸化の上昇を通じて脂質の蓄積を抑える。
💡 ポイント

HDAC11は、選択性を「主張する」のは簡単でも「勝ち取る」のは難しいアイソフォームだ。脂肪酸アシル脱アシル化酵素としてのポケットが、古典的な亜鉛加水分解型HDACとは異なるためである。PB151が本当に他のアイソフォームを避けているなら、多くのヒドロキサム酸系ツール化合物より優れている。ただ、標的結合の読み出しはSHMT2の上昇だけで、LKB1-AMPKの話は下流の現象であり、オフターゲットの可能性も残る。まずCETSAと不活性アナログが欲しい。非経口投与では経口曝露についてもほとんど分からない。

Discovery of a highly selective HDAC11 inhibitor that restrains hepatocellular carcinoma through metabolic and apoptotic reprogramming ↗

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薬理

8件

Chk1阻害がマウス脊髄損傷の運動機能回復を後押し

  • 脊髄損傷後のミクログリアM1極性化とパイロトーシスにChk1が関与するかを検討した。
  • マウス挫傷モデルとLPS処理BV2細胞を使用。Chk1のダウンレギュレーションで極性化の変化とパイロトーシスが抑えられ運動機能が改善し、過剰発現では両者が悪化した。
  • 細胞ではLPSによりDNA損傷(γ-H2AX)とChk1活性化が増加し、阻害薬SCH900776とDNA修復作動薬AV-153で関連を検証した。要旨は途中で切れている。
💡 ポイント

ノックダウンと過剰発現で結果が逆方向に動くのは標的バリデーションとして筋が良いが、薬剤での結果ではない。SCH900776はがん領域向けに作られた化合物なので、挫傷後の中枢への曝露をまず確認したい。BV2細胞は生体内ミクログリアの代役として弱く、Chk1遮断によるDNA損傷関連の副次毒性も懸念される。

Checkpoint kinase 1 (Chk1) inhibition promotes motor function recovery through suppressing pyroptosis signalling and attenuating microglial polarization shift to M1 phenotype in spinal cord injury mice ↗

第XI因子/XIa阻害、出血リスクの低い抗凝固療法として前進

  • 第XI因子とその活性型XIaはトロンビン産生を増幅し、病的血栓形成に寄与する一方、生理的止血への関与は小さいため、出血リスクの低い抗凝固薬の標的として注目されている。
  • 本レビューはFXI/XIaの構造、構造に基づく創薬、主な治療モダリティを整理し、さまざまな血栓症適応における臨床エビデンスを批判的に評価している。
  • 選択性の最適化、疾患による有効性の差、凝固以外のFXIの機能が課題であり、長期安全性や臨床での位置づけに影響する。
💡 ポイント

FXIの魅力は動物モデルよりヒト遺伝学(先天性欠損でも自然出血が少ない)に支えられており、そこは信頼できる。私が詰めたいのは曝露の上限だ。有効域が狭くトラフでの阻害が揺らぐなら、出血面の優位性は消える。FXa、トロンビン、カリクレインなどセリンプロテアーゼへの選択性が、安全域が本物かどうかを左右する。

Targeting coagulation factor XI/XIa for anticoagulation therapy: from mechanism to drug development ↗

PBPKモデルで示す、脳を標的とする抗ウイルス薬の血漿EC90倍率が一定でない理由

  • 抗ウイルス薬の用量設定では血漿トラフ値をin vitro EC90の一定倍以上に保つ手法が多用されるが、その倍率は経験的に決められ、脳など移行が制限される部位は考慮されていない。
  • ラットのニルマトレルビル血漿データから母集団PKモデルを作成し、LeiCNS PBPKプラットフォームに組み込んで、ラット脳脊髄液中濃度で検証した。
  • シミュレーションでは、血漿中非結合率と非結合型の脳・血漿分配係数が必要倍率を主に左右し、一律の基準ではCNS標的で曝露不足になり得ることが示された。
💡 ポイント

抗ウイルス薬にEC90の固定倍率を一律に当てはめるのは血漿中心の近道で、脳標的ではKp,uuの問題が隠れる。非結合型の脳・血漿分配が1を大きく下回れば(ニルマトレルビル類のペプチド模倣薬ではP-gp排出が有力な疑い先)、血漿トラフが基準を満たしてもCNSは曝露不足のままになり得る。ただ検証はラットCSFのみで、CSFは脳実質の代理指標として不完全。ヒトへの外挿は未確認だ。

Plasma EC90 multiples are drug, target site and species specific—A physiologically based pharmacokinetic modelling example of nirmatrelvir central nervous system distribution ↗

PFOSがヒト膵臓で検出、インスリン分泌を撹乱

  • 臓器提供者の膵臓ではほぼ全例でPFOSが検出され、PFHxSやPFOAよりはるかに高頻度だった。マウスでもPFOSの膵臓への分布が確認された。
  • 培養細胞と膵島では、高用量PFOSの長期曝露でインスリン分泌が抑制され、急性曝露ではマウス膵島と一部のヒト膵島で分泌が増えた。
  • 急性の過分泌はGLP-1受容体拮抗薬で部分的に抑えられ、マウスではグルコース併用時のみインスリンが上昇した。モデル選択が結果を左右する。
💡 ポイント

二相性のデータは積み上げにくい。急性のPFOSはインスリンを増やし、長期の高用量では抑制し、マウスではグルコースの併用も必要だった。これらの用量に対応する膵臓内濃度の実測がなく、in vitroの曝露がヒトに関連する水準かは未解決だ。GLP-1R拮抗薬による部分的な抑制は追う価値のある手がかりだが、機序の一部にとどまるだろう。

PFOS Is Detected in Human Pancreas and Dysregulates Glucose-Stimulated Insulin Secretion across Model Systems ↗

アルコール代謝を多臓器ネットワークとして捉え直す

  • 本レビューは、エタノール酸化とアセトアルデヒド解毒を肝臓だけの役割とみなす従来の見方に異議を唱え、複数臓器にまたがるネットワークとして捉える。
  • 肝臓の細胞種ごとの違いと代謝ゾネーションを検討し、さらに腸、肝腸軸、脳、その他の肝外臓器へと視点を広げている。
  • こうした分散した経路は代謝物のやり取りや飲酒行動、疾患の進行に関わり、アルコール関連疾患の新たな治療選択肢につながり得る。
💡 ポイント

新規データのないレビューなので、未検証の仮説をまとめた地図として読むのが妥当だ。腸や脳のADH/ALDH2が曝露に実際に影響するなら、ALDH2活性化薬やジスルフィラム型薬の背景にある肝中心のPKモデルは一部を取りこぼしている。肝外の寄与はAUCでは小さそうだが局所のアセトアルデヒドでは意味を持つ可能性があり、判断には組織レベルの実測が要る。

Ethanol metabolism and acetaldehyde clearance: A multi-organ symphony ↗

BPA・DBP・PFOA混合物、ERαを介して相加的に作用

  • バイオモニタリングに基づく比率のBPA・DBP・PFOA混合物を、環境エストロゲンの複合曝露モデルとして検討した。
  • 各物質と混合物はMCF-7細胞の増殖を促進し、混合物の用量反応は濃度相加とレスポンス相加の両モデルの許容範囲内で、やや濃度相加寄りだった。
  • ER転写活性およびセルフリーのバイオセンサー測定でもERαアゴニスト活性が確認され、濃度相加によりよく適合したことから、ERα活性化が相加効果の中心と示唆される。
💡 ポイント

MCF-7増殖で相加性が出たのは、ERαアゴニスト3種なら想定どおりで、驚きというより確認に近い。ただPFOAとDBPはER作用が弱いか間接的で、MCF-7はエストロゲン様応答を過大に拾いやすい。遊離の体内濃度の実測や子宮肥大試験などのin vivoデータがない現状では、バイオモニタリング水準の曝露が受容体に効く範囲に届くかは未解決のままだ。

Bisphenol A/Dibutyl Phthalate/Perfluorooctanoic Acid Ternary Mixture Exerted Additive Estrogenic Effects through ERα Activation ↗

共有結合性阻害薬の速度論を測定し、生体内の薬効へつなぐレビュー

  • リード選択は平衡論的なIC50に頼りがちだが、体内で薬物・標的の濃度が時間とともに変動する点を捉えられず、不可逆的な共有結合性薬剤で特に問題となる。
  • 本レビューはkinactとKIを測る手法を整理する。進行曲線解析、複数時点IC50フィッティングによるライブラリの絞り込み、質量分析による付加体・部位確認、SPR/NMR、洗い出し実験による可逆性と滞留時間の評価などである。
  • さらにこれらの速度定数を、タンパク質ターンオーバー、標的の脆弱性、薬物動態という観点から薬理へ結び付け、BTK、JAK3、KRAS G12C、EGFRの事例で示す。
💡 ポイント

共有結合性ヒットの単一時点IC50はほぼ意味を持たない。効力は反応時間とともに動くため、これで順位付けすると最良のkinact/KIを持つ化合物を取りこぼしかねない。難しいのは外挿のほうで、生体内の占有率は標的の再合成速度に左右されるため、ターンオーバーの速いタンパク質ではウォーヘッドを磨いても効果が鈍る。速度論を信じる前に、まずターンオーバーを測りたい。

Only time will tell: Modelling the kinetics of covalent inhibitors ↗

F-30、FGFR2/4を選択的に狙う共有結合阻害剤

  • F-30は、保存されたP-loopのシステインに共有結合し、FGFR2とFGFR4を優先的に阻害する化合物として報告された。
  • 速度論解析では、FGFR1に対するFGFR2選択性は不活性化速度ではなく、主に可逆的な結合段階で決まっていた。
  • FGFR2の複数の耐性変異には活性を保つが、ゲートキーパー変異では効力が低下する。細胞ではFGFR2/4依存性のがん細胞を優先的に抑えた。
💡 ポイント

FGFR1に対するFGFR2選択性がkinactではなく可逆的なKIに由来するなら、反応性を追わず親和性で調整できる、設計可能で頑健な足がかりになる。FGFR1阻害に伴う高リン血症リスクを考えると意義は大きい。ゲートキーパー変異での活性低下は明らかな弱点で、主張の真価は洗い出し試験とin vivoの標的占有率データで問われる。

Characterization of F-30 as an FGFR2/4-selective covalent inhibitor with activity against clinically relevant mutations ↗

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計算・AI創薬

1件

FGFR1耐性変異はエルダフィチニブの結合エネルギーでなく動的挙動を変える:MDシミュレーション

  • 手法:エルダフィチニブ結合型FGFR1キナーゼドメインについて、野生型、ゲートキーパー変異V561M、モレキュラーブレーキ変異N546Kを各3レプリケートの全原子MDで解析し、MM/GBSAおよびMM/PBSAで評価した。
  • いずれのエンドポイント法でも変異に伴う結合自由エネルギーの変化は検出されず、差は手法の不確かさの範囲内だった。
  • N546Kでは546位残基とGlu562の接触の占有率と持続時間が大きく低下したが、従来のCα–Cα距離基準では「正常」と判定された。V561Mはブレーキ接触を保つ一方、ゲートキーパー周囲の疎水性ネットワークを緩めた。
  • 検証はシミュレーションのみで、実験的裏付けはない。
💡 ポイント

ここでMM/GBSAとMM/PBSAが差を示さなかったのは想定内で、エンドポイント法はノイズが大きく、変異体と野生型の小さな差を分解できない。親和性が同等だという証拠にはならない。実質的な知見は、Cα–Cα距離によるブレーキ判定がN546KのGlu562接触の喪失を見逃した点で、自プロジェクトのブレーキ指標も再点検すべきだ。ただしレプリカ3本、IC50や耐性の実験データなし、自由エネルギー摂動計算なしでは仮説提示の域を出ない。

Resistance without a detectable bindingenergy penalty: distinct dynamic defects of gatekeeper and molecular-brake mutations in FGFR1–erdafitinib recognition ↗

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業界ニュース

7件

ビオンテックとデュアリティバイオのHER2 ADC、HR陽性/HER2低発現乳がんの第3相で「限定的」な有効性

  • trastuzumab pamirtecanの国際第3相DYNASTY-Breast02試験が、医師選択化学療法に対する無増悪生存期間の主要評価項目を達成した。
  • 対象は、内分泌療法後に進行した化学療法未治療のHR陽性/HER2低発現転移乳がん患者である。
  • 両社自身が「統計学的に有意だが限定的」と評価しており、全生存期間のデータは未成熟で、今後の方針を検討中だ。
💡 ポイント

スポンサー自らが「限定的」と認めた以上、HER2低発現で基準となるEnhertuを有効性で置き換える道は描きにくい。現実的には対象を絞るか併用に活路を求める形になり、次の一手は、ビオンテックが二重特異性抗体への注力と並んでHER2 ADCをどこまで抱え続けるかを映す。

BioNTech, DualityBio ponder next steps for HER2 ADC after 'modest' breast cancer results ↗

アケソ、胆道がんでのivonescimab生存期間改善の詳細を発表 中国のみの試験

  • アケソはESMO 2026で、進行胆道がんの一次治療においてPD-1×VEGF二重特異性抗体ivonescimabと化学療法の併用をデュルバルマブと化学療法の併用と比較したHARMONi-GI1試験を発表した。
  • 682例の試験は中国のみで実施され、アケソが主導・解析した。主な成果は全生存期間の改善である。
  • 中国以外の権利はサミット・セラピューティクスが保有し、データはKeytrudaとの比較議論も呼んでいる。
💡 ポイント

抗PD-1/L1薬を土台とする対照群に全生存で勝つことは、PD-1×VEGF二重特異性抗体に求められる主張であり、胆道がんは患者数が少なくリスクの低い実証の場だ。ただ中国のみ・アケソ主導の試験は欧米当局の判断材料としては弱く、サミットの価値は本試験より肺がん領域などのグローバル試験にかかる。

#ESMO26: Akeso details ivonescimab's biliary cancer success, drawing Keytruda comparisons ↗

アストラゼネカのTagrissoとOrpathys併用、耐性後もTagrisso継続を狙う

  • アストラゼネカはESMO 2026で、Tagrisso(osimertinib)に耐性を示したEGFR変異非小細胞肺がんを対象に、TagrissoとOrpathys(savolitinib)の併用データを発表した。
  • 第3相SAFFRON試験はMET駆動の患者を対象とし、8月のトップラインでは白金系化学療法に対し無増悪生存期間と全生存期間の改善が示された。
  • 米国では申請済みで、中国では既に承認されている。
💡 ポイント

MET増幅はTagrisso耐性の主要な原因の一つで、土台薬を継続できる併用療法はアストラゼネカにとって最大の肺がん製品のライフサイクル戦略となる。ただ、市場はMET駆動の耐性を検査で見つける必要があるため限られ、EGFR-MET二重特異性抗体を持つ競合も同じ患者層を狙っている。

#ESMO26: AstraZeneca's Tagrisso-Orpathys combo may extend Tagrisso's life in lung cancer ↗

ロシュのdivarasib、アムジェン・BMSのKRAS G12C阻害薬との直接比較試験で死亡リスク44%減

  • ロシュはESMO 2026で、次世代KRAS G12C阻害薬divarasibをsotorasibまたはadagrasibと比較した第3相Krascendo 1試験の詳細を発表した。対象は既治療のKRAS G12C変異非小細胞肺がんである。
  • Endpoints Newsによると、divarasibは既承認の2剤に対し死亡リスクを44%低下させた。
  • 先行するトップライン発表では、無増悪生存期間の改善と新たな安全性シグナルなしが報告されていた。
💡 ポイント

承認済みG12C阻害薬の双方に対し、ランダム化の直接比較で生存の優位を示した例は腫瘍領域では珍しく、通常は試験間比較に頼る。ロシュは二次治療の標準の座を強く主張できるようになり、アムジェンとBMSには圧力がかかる。ただ、競争の舞台は既にRevolution MedicinesのRAS薬が基準を引き上げた一次治療へ移りつつある。

#ESMO26: Roche details magnitude of its KRAS G12C inhibitor's win over rivals in lung cancer trial ↗

第3四半期のバイオ医薬ディールは減速、M&A・大型契約一時金・ベンチャー投資がそろって鈍化

  • Endpoints Newsは第3四半期を冷え込みと表現しており、上半期に活発だったM&Aのペースが落ち着いた。
  • 大型ライセンス契約の契約一時金は小さくなり、ベンチャー投資も減速した。
  • 同記事は、崩壊ではなく活発な上半期の後の一服として位置づけている。
💡 ポイント

四半期が鈍いからといって資金が去ったわけではない。今週のギリアドによるPepStarへの12.8億ドルの契約一時金や、年間31件に達したIPOは、資金が厳選された資産、主に臨床段階か中国発の案件に流れ続けていることを示す。買い手は選別を続け、データの薄い売り手は資金調達が難しくなるだろう。

Biotech takes a hit as dealmakers take a knee in Q3 ↗

ノバルティスのremibrutinib、多発性硬化症の2つの第3相試験でテリフルノミドより再発を抑制

  • 第3相REMODEL-1およびREMODEL-2試験で、経口BTK阻害薬remibrutinibを再発寛解型多発性硬化症でテリフルノミドと比較した。
  • 両試験とも年間再発率低下の主要評価項目を達成し、MRI病変の指標もremibrutinibが優れていた。
  • ノバルティスは肝臓の安全性シグナルは認められず、障害進行にも良好な傾向が見られたとして、承認申請を予定している。
💡 ポイント

BTK阻害薬は多発性硬化症領域で肝安全性の懸念に苦しんできたため、再発抑制と同じくらい肝臓への影響が小さいことが重要だ。ただテリフルノミドは比較対象として与しやすく、真の競争相手は高有効性の抗CD20抗体やサノフィのtolebrutinibなど他のBTK阻害薬であり、障害進行のデータが立ち位置を左右する。

STAT+: Novartis multiple sclerosis treatment cuts rates of relapse in pivotal trials ↗

ウォープ・サイエンシズ、元OpenAI科学責任者ケビン・ウェイルが創業 シリーズAで2.15億ドル

  • ウォープ・サイエンシズが、2.15億ドルのシリーズA調達とともにステルス状態から姿を現した。
  • 創業者は元OpenAI科学部門責任者のケビン・ウェイルで、技術分野の経験者が加わる。
  • AIを使い、製薬企業が新薬の構成要素(ビルディングブロック)をつくるのを支援することを目指す。
💡 ポイント

製品をまだ示していない会社に2.15億ドルの初回調達が集まったことは、AI化学に流れ込む資金の大きさを物語る。候補薬ではなくビルディングブロックに焦点を絞ることで、多くのAIバイオを苦しめる臨床リスクを避けられる。顧客とデータ面の優位性は未知数で、この数字はまずチームへの賭けと見るべきだ。

Warp Sciences emerges from stealth, founded by ex-OpenAI science chief and tech veterans ↗