アーカイブ · 2026年 · 2026年10月

2026-10-26 のダイジェスト

2026-10-26

本日は23件。メドケムはHDAC3選択的分解誘導剤やCA IX阻害薬の新規骨格、薬理はCas9ニッカーゼによるハンチントン病マウスでのCAG反復短縮、計算創薬はTP53-MDM2/MDMXの残基レベル解析を取り上げます。業界ではRocheのパイプライン整理とMerck・ModernaのESMO黒色腫ワクチン結果が注目です。

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メドケム

7件

プロピルヒドラジド亜鉛結合基を持つ非細胞毒性HDAC3選択的分解誘導剤

  • HDAC3選択性を示す阻害剤FL-007を出発点に、プロピルヒドラジド亜鉛結合基を用い、2種類のリンカー出口位置を検討してクラスI HDAC分解誘導剤を設計した。
  • 得られた化合物はHDAC1、HDAC2、HDAC3を程度の差はあれ阻害しつつ、免疫ブロットおよびHiBiT/LgBiTアッセイにより複数の細胞株でHDAC3を選択的に減少させた。
  • がん細胞・正常細胞のいずれでも細胞毒性は示さず、HDAC3の減少は耐性細胞でシスプラチン感受性をわずかに高めたが、細胞毒性のある阻害剤ほど強くなく、ヒストンH3アセチル化とp21発現の上昇と並行していた。
💡 ポイント

ここでは分解と阻害が切り離されている。HDAC1/2も阻害するのにHDAC3だけが減るため、アイソフォーム選択性を決めているのはZBGではなくリンカーの出口ベクトルだろう。三者複合体設計には有用な知見だ。ただ、細胞毒性がなくシスプラチン増感も弱い点は、HDAC3の足場機能の喪失だけでは表現型が穏やかなことを示唆する。分解薬の優位性を信じるには、触媒不活性変異体によるレスキュー実験が欲しい。

Discovery of Potent and Non-cytotoxic HDAC3-Selective Degraders Featuring a Propyl Hydrazide Zinc-Binding Group ↗

ピラノピラゾール骨格が選択的CA IX阻害薬として有望、併用抗がん効果も示唆

  • 近縁なカルボニックアンヒドラーゼ間のアイソフォーム選択性という課題に対し、ピラノ[2,3-c]ピラゾール誘導体が設計・合成された。
  • 複数の類縁体が腫瘍関連のhCA IXに対して強く選択的な活性を示し、化合物12が最も有望で、計算化学により結合様式が考察された。
  • 化合物12は膵がん細胞でGPX4阻害薬RSL3と相乗効果を示し、細胞遊走やオートファジー、代謝、EMT関連マーカーにも影響した。
💡 ポイント

ピラノピラゾールは修飾しやすい新規ケモタイプで、スルホンアミド系の亜鉛結合基に頼らない点が魅力だ。SLC-0111型のウレイドスルホンアミドがCA I/IIのオフターゲットに苦戦し続けているだけに、試す価値がある。次に見たいのはCA XIIに対する選択性と低酸素細胞での数値だ。RSL3との相乗効果は、細胞内でCA IXへの結合が示されるまでは表現型レベルの話に過ぎない。

Identification and Development of Pyrano[2,3-c]Pyrazole-Based Scaffold for Selective Human Carbonic Anhydrase IX Inhibition ↗

プロリンリンカーを導入した99mTc標識PSMAトレーサーで腎臓集積を低減

放射性医薬品SAR・リード最適化がん
  • 研究者らは、D-またはL-プロリンを剛直なリンカーとして用い、最適化した共配位子と組み合わせた99mTc標識PSMAリガンドを作製し、効率よく標識でき、in vitroで安定な親水性錯体を得た。
  • 主力トレーサーL-M1はPSMA発現細胞によく結合し、マウスで最も低い腎滞留を示した一方、PSMA高発現・低発現の両腫瘍モデルに集積し、良好なコントラストを示した。
  • SPECT/CTは体内分布の結果と一致し、探索的なヒト試験では小さな前立腺がん病変が明瞭に描出された。
💡 ポイント

99mTc-PSMA系トレーサーで最大の悩みは腎臓滞留だが、剛直なプロリンリンカーと共配位子の調整でそこを狙うのは筋が良い。立体配座の固定が薬理団提示を締めつつ腎トラップを減らしているのだろう。L-M1が腎集積最小という立体化学SARは追う価値あり。ただマウスの腎臓はヒトと違い、臨床データも少数の探索的段階にとどまる。

Evaluation and an Exploratory Human Study of 99mTc-Labeled PSMA-Targeting Agents with Reduced Renal Uptake via Proline Incorporation ↗

カスダチファンの代替合成経路:銅触媒によるシクロプロパンの立体特異的開環

  • キラルなジオールからエナンチオ富化された2-アリールシクロプロパンジエステルを調製し、HIF-2α阻害薬カスダチファンの形式合成の出発点とする。
  • 新規な工程は、官能基化アリールグリニャール試薬による銅(I)触媒の立体特異的開環で、到達が難しいとされる立体中心を構築する。
  • 終盤のフリーデル・クラフツ環化でテトラリン環を形成し、既存の製造ルートで用いられるジケトン中間体を得ることで、低コストな供給の選択肢となる。
💡 ポイント

キラルなジオールから安価にキラリティーを移し、シクロプロパンをCu/Grignardで立体特異的に開環してアリール置換の不斉中心を作るのは手堅く、別のアリールGrignardを使えば類縁体展開にも効くはず。既存のジオン中間体に合流させたので、下流工程の再検証が要らないのが巧い。ただ、官能基付きGrignardと終盤のFriedel–Craftsは、コスト面の利点を言う前にスケールでの実証が要る。

Formal Synthesis of HIF-2α Inhibitor Casdatifan (AB521): Stereospecific Copper(I)-Mediated Ring Opening of Chiral 2-Aryl-cyclopropane-1,1-dicarboxylate with Aryl Grignard Reagents ↗

ベンゾオキサゾール系リガンドがα-シヌクレイン凝集体PETトレーサー候補として浮上

  • パーキンソン病の中心的病理であるα-シヌクレイン凝集体への結合を狙い、表面プラズモン共鳴スクリーニングによりベンゾオキサゾール系リガンド群が見出された。
  • 主要化合物D15とD16は、in vitroで凝集体に強く結合し、SH-SY5Y細胞およびPFF注入マウスの脳組織でも活性を示した。
  • 両化合物はトランスジェニックマウス脳切片でタウやアミロイドβ凝集体との識別性が高く、良好な脳移行性と放射標識に適した構造から、PETトレーサー開発の出発点となる。
💡 ポイント

α-syn PET トレーサーで効いてくるのは、トランスジェニック切片でtauやAβと見分けられている点だ。実際の脳は混合病理で、そこでトレーサーは崩れやすい。ただ、組換え凝集体を使ったSPRとPFFマウス組織だけでは、レビー小体やMSA線維の多型への結合は見えない。骨格と呼ぶ前に、患者由来材料でのKdと、MAOやアミロイドへのオフターゲット結合を確認したい。

Discovery of benzoxazole derivatives as novel α-synuclein aggregate ligands with potential for PET tracer development ↗

capmatinibなどクラスIb c-MET阻害薬の結晶構造に基づく結合特性をレビュー

  • 本レビューは、capmatinib、savolitinib、glumetinib、vebreltinibを含むクラスIb c-MET阻害薬を、2008〜2026年に報告されたX線構造に基づいて検討している。
  • 窒素含有二環式コアと2つの周辺芳香族基が、c-MET活性部位での結合にどう寄与するかを整理している。
  • 結合はπ相互作用の保存されたネットワークが中心で、Met1211とTyr1230が主要な足場となり、Asp1222が関わる保存された水素結合が補強する。
💡 ポイント

Met1211/Tyr1230とのπ接触とAsp1222の水素結合が4剤すべてで本当に保存されているなら、二環コアは置換可能な足場にすぎず、活性は両側の芳香環が担っていることになる。スキャフォールドホッピングに使える設計則だ。次に知りたいのは、他キナーゼに対する選択性が同じ接触から来るのか、それとも周辺部から来るのかという点である。

Structural analysis and crystallography-guided pharmacophore elucidation of capmatinib analogues as selective c-MET targeting anticancer agents ↗

アバウシン誘導体が耐性アシネトバクターに対するリポタンパク質輸送阻害と生体内防御を強化

  • 深層学習で見出された抗菌薬アバウシンの誘導体30種を合成し、カルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニに対するSARを調べた。
  • スピロ環骨格、リンカー長、芳香族置換基が活性の主要な決定因子であった。
  • リード化合物28はLolF/Dリポタンパク質輸送複合体をより強く阻害し、速やかな殺菌作用を示し、自然耐性の出現も少なかった。膜透過促進剤との併用でマウス敗血症モデルにおいて完全な防御を示し、忍容性も良好であった。
💡 ポイント

LolCDEは数少ない現実的なグラム陰性菌標的で、スピロ環コアとリンカー長を振れる骨格は実際に回せるSARの足場になる。ただ、膜透過促進剤の併用が必要という点は、リード単独では生体内で外膜を越えきれていないことを示唆する。敗血症モデルの完全防御を信じる前に、促進剤なしのMICシフトとPKを確認したい。

Structure-activity relationship (SAR) studies of abaucin derivatives targeting the lipoprotein transport system in Acinetobacter baumannii ↗

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薬理

9件

ウマTASK1チャネル、心房選択的なAF治療標的の候補に

  • TASK1カリウムチャネルは心房選択的な抗不整脈の標的だが、心房細動が最も多い重要な不整脈であるウマでの役割は不明だった。
  • 卵母細胞では、ウマとヒトのTASK1は構造がよく保存され、バックグラウンド電流も似ていたが、薬剤の効力には種間でやや差があった。
  • ウマTASK1の発現は心房と結節組織に集中し、心室ではごくわずか。麻酔下のウマへのケトドキサプラム静脈内投与によるin vivo試験の結果は、原文が途切れている。
💡 ポイント

これを次に進めるべきか。チャネルが保存され、発現が心房に偏っているのは出発点としては悪くない。ただ、発現量は生理的な電流ではないし、ドキサプラム誘導体のケトドキサプラムはきれいなプローブとは言えない。リズムへの効果をTASK1に帰す前に、他のK2Pや心臓のチャネルへの選択性を確かめたい。in vivoの結果が途切れている以上、AFモデルとしてのウマの妥当性も未解決のままだ。

Investigating the TASK1 potassium channel in equine atrial myocardium as a potential treatment target for atrial fibrillation ↗

選択的CYP8B1阻害薬が脂肪肝マウスで胆汁酸組成を改善

  • 12位水酸化胆汁酸を合成する肝臓特異的な酵素CYP8B1を標的とした。他のCYPとの選択性の確保が難しく、これまで選択的な阻害薬は得られていなかった。
  • 高感度な酵素共役蛍光スクリーニングを構築し、結晶構造に基づく設計と構造活性相関解析を組み合わせて、選択的な低分子阻害薬を得た。
  • MASLDマウスモデルでは、リード化合物が胆汁酸組成を変え、腸内細菌叢を改善し、代謝異常を是正した。初の作用機序に基づく治療戦略を裏づける結果とされる。
💡 ポイント

胆汁酸組成の変化は、代謝改善に伴って起きていても、原因とは限らない。作用機序を信じるなら、ノックアウトとの比較は見ておきたい。マウスの胆汁酸プールはヒトと異なるので、このモデルはヒトでの見込みを甘く見せているかもしれない。有効性の裏にどんな選択性パネルと肝臓曝露があるかも、確認すべき点だ。

Development of CYP8B1-specific inhibitors for metabolic diseases ↗

DNAコード化ライブラリーから、アルツハイマー病向けの経口脳移行性CHI3L1調節薬を取得

  • 超大規模なDNAコード化ライブラリーのスクリーニングから、脳に移行するDELC2が得られた。生物物理学的解析と結晶構造解析で、CHI3L1の糖鎖認識溝に結合しRAGEとの相互作用を妨げることが示された。
  • グリア細胞培養では炎症性シグナルを抑え、反応性ミクログリアのマーカーを減らし、アミロイドβの取り込みを回復させた。CHI3L1の除去と再導入の実験も標的特異性を支持した。
  • 5xFADマウスへの経口投与で、非結合型薬物の脳内曝露が持続し、認知機能が改善、アミロイドβが減り、グリアの炎症プログラムも鎮まった。
💡 ポイント

経口投与後に非結合型薬物の脳内曝露が続く点は、この研究でまず信頼できる部分だ。認知改善を、想定ではなく実際の標的占有と照らして読めるからである。残る問いは二つある。CHI3L1–RAGE軸の遮断が有益だと示すヒト遺伝学的な裏付けはあるのか。in vivoの効果はCHI3L1そのものへの結合と連動しているのか。急速にアミロイドが蓄積するマウスは結果が出やすいモデルで、しかも査読前のプレプリントである。

Discovery of a brain-penetrant CHI3L1 inhibitor as an oral modulator of neuroinflammation in Alzheimers disease ↗

Cas9ニッカーゼがCAG反復を短縮、ハンチントン病マウスの症状を改善

  • CAG/CTG反復を狙うCas9ニッカーゼで反復を縮め、ハンチントン病などの重症度を左右する反復長に働きかける戦略。
  • ハンチントン病と1型筋強直性ジストロフィー患者由来のニューロンとアストロサイトで有効で、伸長アレルを優先的に狙い、オフターゲット変異は検出されなかった。
  • R6/1マウスの線条体にAAVで導入すると、反復が短縮し、封入体が減って遺伝子発現と運動機能が改善した。改善は短縮だけで予想される以上で、非細胞自律的な作用が示唆される。
💡 ポイント

短縮から予想される以上の改善は面白いが、いちばん確かめにくい部分でもある。R6/1のように進行の速い断片トランスジェニックモデルでは、ニッカーゼやAAVの発現自体の影響でも説明がつきかねない。触媒不活性型のコントロールと全長ノックインでの検証が先に必要で、ニック関連毒性の長期データや線条体外への広がりも押さえておきたい。

Cas9 nickase–mediated contraction of CAG/CTG repeats is associated with phenotypic improvements in a Huntington’s disease mouse model ↗

蛍光ChoKα阻害薬、イヌ肺腫瘍の術中イメージングで腫瘍を可視化

  • JAS239は、多くの肺がんで過剰発現するコリンキナーゼαの阻害薬に近赤外蛍光色素を結合させたもので、切除術中に腫瘍とその切除縁を示すために設計された。
  • 肺がん細胞ではホスホコリン産生と生存率を低下させた。マウスでは転移病変の画像化に適した薬物動態を示した。
  • イヌの臨床試験では腫瘍と切除縁を明瞭に描出し、切除後に見逃されていた潜在病変も検出した。蛍光はChoKα発現量と相関し、ヒト組織への塗布でも腫瘍に選択的に集積した。
💡 ポイント

光っていることは、まだ標的結合の証明にはならない。発現量との一致は心強いが、シグナルがChoKαへの結合なのか、脂溶性色素の組織への滞留なのかは、競合阻害用量か色素単独の対照で切り分けられる。自然発生のイヌ腫瘍はマウスモデルよりはるかに良い試験系だが、ヒトでは投与タイミングと切除縁の偽陽性が未解決のままだ。

A fluorescent choline kinase alpha inhibitor for intraoperative molecular imaging during resection of canine NSCLC tumors ↗

GVHD予防薬の選択が移植後のT細胞再構築を左右する

  • 第3相移植試験の患者を対象に、移植後シクロホスファミドとタクロリムス/メトトレキサートの予防レジメンがT細胞の回復に与える影響を、経時的なT細胞受容体シーケンスで比較した。
  • シクロホスファミドはT細胞を広く除去するため、回復は少数の創始細胞から再開し、レパートリーが長期にわたり狭いままだった。
  • 多様性の低さは慢性GVHDの少なさと関連したが、早期に病原体特異的クローンも失われ、重症感染のリスク上昇と結びついていた。
💡 ポイント

慢性GVHDを減らしているように見える除去が、初期の病原体カバーまで削っている。レパートリーの縮小は、成果というより取引に近い。これはヒトコホートの読み出しで、示せるのは関連であって機序ではない。予防レジメンの併用を設計するなら、狙いは同種反応性クローンだけを刈り込み防御クローンを残すことだが、その切り分けが可能かどうかは、この結果からは分からない。

Graft-versus-host disease prophylaxis shapes T cell biology and immune reconstitution after hematopoietic cell transplant ↗

アパチニブ、CRKII低下でTNBCの小胞性血管新生を抑制

  • トリプルネガティブ乳がん由来の小型細胞外小胞をラベルフリープロテオミクスで解析したところ、アパチニブにより低下するアダプター蛋白質CRKIIがハブとして浮かび上がった。
  • 小胞中のCRKIIが減ると、PXN/VEGFA経路を介した血管内皮細胞への血管新生シグナルが弱まった。CRKIIのノックダウンは薬剤の効果を再現し、過剰発現はそれを打ち消した。
  • 同系マウスモデルでは、アパチニブが腫瘍増殖を遅らせ微小血管密度を減らし、再発抑制を目的とした術後補助療法としての可能性が示唆された。
💡 ポイント

小胞中のCRKIIの低下は、アパチニブ自体の作用機序かもしれないし、VEGFR2阻害の下流で見えているだけかもしれない。ノックダウンと回復実験で細胞レベルの因果は説得力を増したが、臨床で到達できる曝露量でも成り立つ必要がある。また、同系モデルで増殖が遅れ血管が減ったことは、再発についてはまだ多くを語らない。術後補助療法は今のところ仮説だ。

Apatinib attenuates CRKII-Mediated angiogenesis: Possible implications for metastasis prevention from small extracellular vesicle proteomics ↗

Δ8-THCの活性代謝物11-OH体の生成はCYP2C9が主導

  • ヒト肝ミクロソームでΔ8-THCは複数のモノ水酸化体に代謝され、精神活性をもつ11-水酸化体が主だった。酵素・阻害剤・ドナー相関の解析から、その生成は主にCYP2C9が担うと示された。
  • 環水酸化体は主にCYP3Aで生成し、側鎖の酸化はCYP2D6、CYP1A2、CYP3A4の活性と関連した。
  • C11水酸化はΔ9-THCよりΔ8-THCで重要だが、CYP2C9の触媒効率はΔ8-THCのほうが低かった。機能低下型の遺伝子型では11-水酸化体の生成が大きく減り、代謝はCYP3A4とCYP2C19に移ると予測された。
💡 ポイント

どの酵素が精神活性代謝物を作るかはミクロソームで答えが出るが、ヒト個人で曝露がどう配分されるかまでは分からない。11-水酸化体の生体内曝露は見えず、遺伝子型の影響も観察ではなく予測にとどまる。リスク因子と呼ぶには、CYP2C9低代謝者での臨床PKと、2C9阻害薬との相互作用データが先に必要だ。

Characterization of Cytochrome P450-Mediated Metabolism of Δ8-tetrahydrocannabinol in vitro ↗

接着分子NEGR1がmGlu5シグナルとPAMの神経保護作用を左右する

  • 質量分析と共免疫沈降で、NEGR1がmGlu5の結合パートナーと同定された。mGlu5の正のアロステリックモジュレーター(PAM)はバイアスアゴニストとして働き、神経細胞の生存を促す。
  • NEGR1をノックダウンした初代神経細胞では、この相互作用がmGlu5のシナプス局在とHomerとの共役に必要だった。
  • NEGR1が失われるとERK1/2の活性化が弱まり、ARC/Arg3.1とBDNFの発現も低下した。PAM VU0409551の神経保護におけるNEGR1の役割は、アポトーシスと神経突起変性を指標に検討された。
💡 ポイント

このPAMの神経保護は、本当にNEGR1を要するのか。最初に走らせるべき実験はそこだ。足場分子に依存する機序なら、薬効はニューロンの種類や脳領域、さらには個人ごとのNEGR1量で変わりうる。培養初代神経細胞でのノックダウンは無傷の脳とも距離があり、頼るならレスキュー実験とin vivoでの裏付けが先になる。

Interaction with NEGR1 affects mGlu5 cell signalling and the neuroprotection induced by the positive allosteric modulator VU0409551 ↗

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計算・AI創薬

1件

TP53-MDM2/MDMX阻害剤の残基レベルのエネルギー解析:安定化ペプチドが優位

  • 制限なし分子動力学とQM/MM計算を用い、MDM2およびMDMXへの阻害剤結合を残基ごとの静電および分散(vdW)寄与に分解した。
  • 高分解能構造が得られている臨床段階の全阻害剤を対象とした計算研究であり、新たな実験は行っていない。
  • 結合は弱く分散力主体で水和の影響が大きく、安定化ペプチドは低分子有機化合物より良好な相互作用パターンを示した。
💡 ポイント

残基ごとの分解は、リガンドがどこで反発により損をしているかを見るには有用だ。ただ、固定された力場での少数のMD計算から親和性が得られるわけではなく、実験検証もないため、ステープルペプチドが有利という結論は解釈の域を出ない。ペプチドは単に接触数が多いだけとも言える。ペプチドが優れる証拠ではなく、低分子設計に向けたホットスポットと反発箇所のマップとして使うのが現実的だろう。

On Organic-Molecule and Peptide Non-Covalent Inhibitors of the TP53-MDM2/MDMX Interaction: An Inside View From the Interaction Energy at Residue-to-Residue Level ↗

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業界ニュース

6件

FDA、Biohavenのトロリルゾール再申請を受理 ― 運動失調症で諮問委員会開催へ

  • FDAは脊髄小脳変性症向けトロリルゾールの再申請を、2025年11月の審査完了通知(CRL)への回答として受理し、判断は2027年第1四半期となる。
  • 却下の中心は、自然歴データベースとの比較というリアルワールドエビデンスに潜むバイアスで、新たな申請では支持的な追加解析が加わった。
  • FDAは諮問委員会を開く方針で、日程は未定。株価は却下時の約45%下落に続き、今回は約30%上昇した。
💡 ポイント

受理は手続き上の一歩にすぎず、判断ではない。主要評価項目を外した外部対照比較というコアの課題は変わっておらず、追加解析でそのバイアスを補えるかは諮問委員会で問われる。アナリストも最大のリスク軽減イベントと見る。希少疾患の開発者にとって、自然歴データがどこまで通用するかを占う前例になる。

Biohaven shares pop as FDA accepts resubmission for ataxia drug with adcomm expected ↗

2026年のバイオテクIPOは31件、過去4年のどの年よりも多い

  • 2026年にこれまで上場したバイオ企業は31社で、2025年通年の8社を大きく上回る。第3四半期は9社、10月も4社が上場したが、2021年の約100社にはほど遠い。
  • Parabilis(6.7億ドル)とKailera(6.25億ドル)が史上最大級のバイオIPOとなり、ADARxも9月に約4.46億ドルを調達した。
  • Lycia(分解薬)、Aspen Neuroscience、Bambusa、NodThera(Rezera)が上場申請済みで列に加わる。
💡 ポイント

窓は開いているが、開いているのは規模のある企業と後期の物語に対してだ。記録的な調達は肥満やプラットフォーム企業に集中し、裾野には届いていない。待機組には分解薬、細胞療法、I&I二重特異性抗体と、臨床入りの道筋が明確なモダリティが並ぶが、M&Aやベンチャーの第3四半期の減速は、市場が選別的であることを示す。

Biotech notches 31 IPOs already this year with 4 more joining queue ↗

Merck・ModernaのmRNA黒色腫ワクチン、ESMOで基準は超えたがModernaの株価は急落

  • 術後補助療法としてのintismeran+Keytrudaは、Keytruda単独と比べ、約2年の追跡で再発・死亡リスクを相対的に低下させ、遠隔転移リスクも同様に低下させた。
  • 副作用は両群で概ね同程度だったが、発熱と注射部位痛はワクチン併用で多く、有害事象による中止もやや多かった。
  • データ流出と発表を受けModernaの株価は大きく下落し、Merckはほぼ横ばい。肺・膀胱・腎がんでの試験が続く。
💡 ポイント

アナリストの期待値の下限あたりに着地し、第2相で見えた効果より小さく見える。承認自体は現実的だが、患者ごとの個別製造というモデルで、黒色腫以外の腫瘍にどこまで広げられるかが本当の論点だ。腎がんや肺がんの結果が、プラットフォームか単一適応の製品かを分ける。

Moderna, Merck shares fall on eagerly anticipated cancer vaccine results ↗

Rocheの第3四半期パイプライン整理、PoseidaのオフザシェルフCD19xCD20 CAR-Tを中止

  • RocheはPoseida買収で得た同種CD19xCD20 CAR-TのRG6540を中止し、ループス/MSの試験は取り下げ、B細胞腫瘍の試験は終了した。
  • アルツハイマー病のアンチセンス薬や網膜の地図状萎縮の低分子など初期プログラムのほか、afimkibartのアトピー性皮膚炎試験も整理された。
  • CEOはCD19xCD20 CAR-T自体は支持し、この分子をやめただけと説明。より良いPoseida由来候補があるとし、骨髄腫のRG6538は継続する。
💡 ポイント

Poseidaは最大15億ドルで、自己免疫疾患向けのオフザシェルフ細胞療法を得る狙いが大きかった。その先頭分子をたたむのは痛い。より優れた後継があるとの説明も、公開パイプラインではまだ確認できず、自己免疫CAR-Tの戦略は未公開の分子に託されている。次の更新でRG6540の後に何が来るかが注目点だ。

Roche’s pipeline trim claims Poseida’s off-the-shelf CAR T asset ↗

Roche第3四半期、売上はコンセンサス超えも通期見通しは据え置き ― 主力品に浸食リスク

  • グループ売上高は7%増の161億スイスフランでコンセンサスを上回ったが、新しい計画システムの寄与が大きく見かけ上の上振れとの指摘もある。通期見通しは据え置き。
  • Xolairは予想を下回り、今月米国で後続品が発売された。Ocrevus、Tecentriq、Hemlibraは2030年以降ジェネリックに直面する。
  • giredestrant(FDA判断は12月18日まで)と肥満領域を成長の柱に挙げ、過去2か月で中国企業と6件のライセンス契約を結んだ。
💡 ポイント

売上上位5品のうち4つが後発品の競争に向かっており、これが提携ペースの背景だ。2025年以降で中国発の11件は、成長の穴埋めを安く買う賭けと読める。giredestrantは混み合う内分泌療法の市場に入り、肥満は後発組なので、2027年の成長は単一製品でなく実行力にかかっている。

Roche 3Q 2026 earnings, sales and outlook ↗

Arcusのcasdatifan、R&D Dayのデータで腎がん一次治療への期待高まる

  • R&D Dayでの更新データを受けArcusの株価は約8%上昇。HIF-2α阻害薬casdatifanは後期試験中で、Merckの上市薬Welireg(ウェリレグ)と同様の作用機序をもつ。
  • アナリストは、早期ラインでの腫瘍進行・生存の所見を、Welireg比で効力が一段上がったと読む。
  • 淡明細胞型腎細胞がんで全ラインの基幹療法になりうるとの見方も出ている。
💡 ポイント

わかりやすい筋書きで、同クラス唯一の薬より強力な第二世代HIF-2α薬が、より早い治療ラインに進出する形だ。ただし試験間比較であり、データも未成熟で、先行するMerckがいる。casdatifanの価値は、この早期ラインの数字より一次治療の第3相デザインに左右される。

Arcus casdatifan R&D day update, TriGemX SPAC, Lilly–METiS (biotech news roundup) ↗